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寸劇:女神たちのタコ部屋と遁走(とんそう):中編

2013-04-01 04:23:27 | カリキュラム改革

(承前) 

ゲルマニア嬢:ほかの外国法科目はどうなるの? 

 

マリアンヌ嬢:外国法、ねぇ…。

 

ゲルマニア嬢:大学基準協会の審査を受けたあと、法学部は報告書をまとめてたけれど。

 

マリアンヌ嬢:あぁ、ネットでも公開してるアレね。

 

ゲルマニア嬢:あそこでは〈外国法の拡充〉が明確に謳われていたはずよ。

 

マリアンヌ嬢:バカだねぇ。所詮(しょせん)ヨソ様向けのお体裁(ていさい)、

額面通り受け取ってちゃダメだよ。

 

ゲルマニア嬢:まあ、をついたのね。

 

マリアンヌ嬢:外国法カンケイで残るのは、

       「外国法(英米法)」と「外国法(アジア法)」、

       それにさっき言ったようにアタシらが同居させられる、

       「外国法(大陸法)」

       都合この3つダケ

 

ゲルマニア嬢:曲がりなりにも法科の看板を掲げていて、

       あまりに少なすぎるんじゃありません?

 

マリアンヌ嬢:ったく、これで〈外国法の拡充〉とは聞いてアキれるわぁ。

 

ゲルマニア嬢:英米法が残るのは、もっともな気がします。

       ジョン・ブル卿とアンクル・サム氏、どちらも押しがきくから…。

           (注:ョン・ブルとは、擬人化した架空の人物で、英国人一般を指す。

            アンクル・サムとは、同じくアメリカ〈合衆国〉人一般を指す)。

       でもその、アジア法って何ですの?

 

 

マリアンヌ嬢:ああ、アジア法ねぇ(苦笑)。

 

ゲルマニア嬢:ヤーパンの法を学ぶ上で必要不可欠な外国法体系を分けるならば、むしろ

       「外国法(英米法)」「外国法(ドイツ法)」「外国法(フランス法)の

       3本立てでいくべきでしょうに!

 

マリアンヌ嬢:ゲルちゃんは事情をよく知らないから、そう思うのも仕方ないねぇ。

ムッシュとあのコ、アジア法は腐れ縁なのよ。

 

ゲルマニア嬢:差し支えなければ、どんな娘さんなの?法学の世界では聞きなれないわね。

 

マリアンヌ嬢:まぁ、アタシらみたいに一本スジが通ったコじゃあないわね。

       アタシたちフランス法やドイツ法には、アンタ風に言えば、

       固有の法典・歴史・思想・方法論があるけど、

       アジア法、あのコには、ない(キッパリ)。

 

ゲルマニア嬢:それなのに?

 

マリアンヌ嬢:中身がないぶん、あのコはイロイロ取り繕ってアピールしてるんだ。

 

ゲルマニア嬢:お化粧がお上手なの?

 

マリアンヌ嬢:中国・台湾・韓国、マレーやらシンガポール、フィリピンなんかの憲制で

       ゴテゴテ厚塗りしちゃって、ひとかどのオンナを気取ってるんだ(苦笑)。

       独り立ちもできないのにねぇ。

 

ゲルマニア嬢:(サエギル様に)お待ちになって!中台韓の法体系はヤーパンの法を

継受したもの、サカノボッテ突き詰めれば、我がドイツ法の影響下にあると

見るべきでしょう?

 

マリアンヌ嬢:アンタがそう言うんなら、そうなんでしょ。

 

ゲルマニア嬢:それに旧英米植民地諸国の法は、敢えて言うなら英米法のお仲間かしら?

 

マリアンヌ嬢:たぶん。

 

ゲルマニア嬢:マリアンヌ、あなたの領分であるフランス法なら、そう、ヴェトナムね。

       ヴェトナムって、おフランスの植民地だったのでしょう。

 

マリアンヌ嬢:まあね。

 

ゲルマニア嬢:ともかくアジア法さんは統一した法体系や思想をお持ち合わせでない様ね。

 

マリアンヌ嬢:ソリャソーヨ。まぁ一種のゴッタ煮ね。

 

ゲルマニア嬢:講義は成り立つのかしら?

 

マリアンヌ嬢:あのコはイマも独立した科目「アジア法」として、一家を構えてるよ。

 

ゲルマニア嬢:で、ちゃんとなさっているの?

 

マリアンヌ嬢:大学では前・後期合わせて30回講義があるけど、あのコのトコでは

       各国にだいたい3回分割り当ててお茶を濁してるってさ。

       実際、それでも時間を持て余してるカンジだけど。

 

ゲルマニア嬢:ならば「外国法(アジア法)」という科目名は、〈羊頭狗肉〉ではなくて?

 

マリアンヌ嬢:ぶっちゃけ、そうだね。

 

ゲルマニア嬢:そうした実情に眼をつむって、「外国法」の下に「英米法」や「大陸法」と、

       その「アジア法」を並置するのは、バランスがとれないし、

       平仄(ひょうそく)が合わないじゃありませんか!

 

マリアンヌ嬢:ムッシュ・チューオーガクインは、法のナンタルカを知らない(笑)。

 

ゲルマニア嬢:笑い事でなくてよ。鼎(かなえ)の軽重が問われる、あるまじき所業だわ。

 

マリアンヌ嬢:それでいてムッシュは、ナントカの一つ覚えみたいに

       「アジアは大事だ!」っていうのよ。

 

ゲルマニア嬢:かつての大陸ローニンみたいね。

 

マリアンヌ嬢:イマならさしづめ、市民運動オバサンだね、ああした口ぶりで語るのは。

       ふだんはウンともスンとも言えずに黙りこくってるだけなのに、ねぇ。

 

ゲルマニア嬢:アジア法さんは、西アジアの〈イスラム法〉は扱わないの?

 

マリアンヌ嬢:そういや、むかし「イスラム法」ってコも居たねぇ。

 

ゲルマニア嬢:あらそうなの?チューオーガクイン〈大先生〉の守備範囲は広いのね。

 

マリアンヌ嬢:ムッシュは彼女にも、御同様に一軒家をあてがってたんだ。

けど、ここ暫くご無沙汰で(注:ずっと閉講扱い)、

今般とうとう引導を渡した(注:科目廃止決定)、と聞いたわ。

 

ゲルマニア嬢:多情なのか薄情なのか…。

 

マリアンヌ嬢:アンタが言ったように、節操がないんだ。トーゼン、知恵もないけど。

 

ゲルマニア嬢:彼はアジア法さんと今後もお付き合いするつもりなの?

 

マリアンヌ嬢:ムッシュは元来ケチなんだから、ホントならあのコともスッパリ縁切りゃ

       ヨカッタんだ。

 

ゲルマニア嬢:ふうん。

 

マリアンヌ嬢:近頃じゃ「スポーツなんたら」とかいう氏素性のアヤしいギャルたちにも

       オネツ上げて。

 

ゲルマニア嬢:なにそれ?

 

マリアンヌ嬢:3人も抱え込んじゃった挙句(あげく)、

       それぞれ一軒づつ家をこさえてやった、って。

(注:「キッズ・スポーツ論」「トップ・スポーツ論」「ライフ・スポーツ論」

 3科目の新規設置を指す)

       

ゲルマニア嬢:まあ、おさかんだこと。お体にさわらないのかしら。

それにしても、ずいぶん経済的に余裕があるのね。

 

マリアンヌ嬢:抱えるのには、金に糸目をつけないってコトね。

 

ゲルマニア嬢:〈大先生〉ご当人はナントカのひとつ覚えみたいに〈経費削減〉って

口を酸っぱくしてわめいてるのに、なんなの。

わたくし、訳が分かりませんわ。

 

マリアンヌ嬢:アジア法を切らずに残すのも、

       ゲルちゃんとアタシを「外国法(大陸法)」のタコ部屋に追いやって

       「ドイツ法」と「フランス法」を一緒クタにするのも、

       みんなタクラミがあるのよ。

 

ゲルマニア嬢:!?

(つづく)


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