我が国は失われた30年から脱却、好循環経済に転換したという見方が有力になってきた。ただそうは言っても生活関連物価が高騰しており、大企業従業員や公務員以外の中低所得層や年金生活者等の可処分所得が増えない多数派には何ら恩恵はない。人口とりわけ生産年齢人口が減少する国は基本的にデフレ体質となるのは免れられない。インフレが間違いなく幅広い好循環に繋がるならまだ良いが、国民生活を犠牲にしてまで物価を上げることにどんな意味があるのだろう? 成長を良しとする考えには昭和の良き時代へのノスタルジーを感じるが、我が国は現状維持が精一杯で身の丈以上の成長を目指せば、少子高齢化、所得の二極化等の問題の存在から相当の痛みを伴う。先進国で高い成長を維持しているのは移民受入に寛容な国々だが、我が国には残念ながら移民を受け入れる素地はかなり乏しい。失われた30年というがデフレの時代は株価こそ低迷したが、生活者目線ではさほど悪い時代でもなくむしろ今より暮らしやすかった。少子高齢化がますます進む中、我が国は成長より良質な成熟した社会を目指すのが正しい選択肢のように思える。
投資家の心理として今が株高だとまだ上が、株安だとまだ下があるとなる。これはポジションが株高の時は買い手、株安の時は売り手有利だからで心理的な面が強く、いろんな理由をくっつけても基本は屁理屈でどれだけ核心をついているか疑問だ。相場は虚像を巡る戦いでどちらにも大した根拠はない。さらにSNSの普及によるエコーチェンバー現象も無視できない。株高、株安時の予想はトレンドフォローのバイアスがかかっている。日本経済や企業の変革進展は円安という厚化粧からくるこじつけと見られ、新たな成長に入ると言う見方にはかなり無理がある。金融機関中心に持ち合い解消の動きも見られ中長期的な株式の需給も良くない。株式市場は楽観論が支配しているが、中長期で見れば株価の修正安は必至だろう。
昨年初から日経平均は15000円近く上昇、バブルかどうかは後で判断することだがそれに近い上昇だろう。生活関連物価高が中低所得者や年金生活者の暮らしを直撃しており景気は悪くなる一方だ。企業業績も絶好調なのは円安の恩恵を受ける輸出企業だけで、円安と値上げ効果の影響が大きく収益体質に顕著な改善は見られない。資本効率が改善され低PBR銘柄の減少が進んでいると言うが、分子の株価が上がった影響が殆どだ。もちろん株高の理由として一部肯定できるものもあるが、概ね株高が言わせた後付けの様相が強い。好循環は市場関係者、仕込んだ海外投資家、政策当局及び株高に部数が連動する日経新聞の都合の良いポジショントークだろう。海外運用会社で日本は新たな成長に入ったと言っているのも根拠に乏しい。過去を振り返れば、高値圏になると必ず出てくる「今度こそ違う」という見方は、結果的には今度もやはり同じだったという結末が待っているように思える。ムードに煽られてNISAで日本株を買った個人投資家には厳しい試練が待ち受けているかもしれない?
本日、実質新年度相場に入った。円相場が34年ぶりに安値を更新したが、このまま何も政策対応がないと152円台に入りそうだ。円安を止めたければ今すぐにでも日銀が保有ETFを売れば良い。海外投資家は投機で円安と株高を見込んでセットで運用しており日銀が株を売れば円安は止まるだろう。彼らは日銀の売りは全く想定していないから安心してやりたい放題だ。日経平均は日銀ETF買いで5000円上げたと試算されている。この上昇分程度株価下がってもリーズナブルな水準だから日本経済に何ら問題は生じない。円安を通じて我が国の購買力は大きく低下しており、適正為替レート110円から4割も安いのは国として大きな損失だ。円安は食料、燃料を海外に依存している我が国にとっては、輸出企業の業績伸長と輸出株高以外には何ももたらさず国民生活の困窮を招くだけだ。植田日銀総裁は円安と株高に相当の危機感を持っていると聞く。植田日銀総裁がここでETFの売却着手を決断できるほどの度量があるとも思えないが、円安阻止が日米金利差からみて期待できないなら、残された選択肢は日銀のETF売りというサプライズしか残っていない。
報道によれば金融機関の持ち合い解消の動きが本格化しそうだ。3メガだけでも10兆円、大手損保で6兆円が数年かけて持ち合い解消の対象となりそうだ。これは通常なら悪材料だが 株高の時だから肯定的に捉えられ、これにより企業の資本効率の改善が進み株高の牽引役となるという見方になっている。しかし冷静に考えればそれは市場の都合の良い解釈で需給的には全く逆だろう。戦後一貫して日本株高を下支えてきたのは持ち合いの存在だ。金融機関持ち株以外にも事業会社保有の持ち合い株、日銀保有の70兆円に膨らんだETF、郵政等の旧半官半民の政府放出株も控える。受け皿は海外投資家、個人あたりが想定されるが、これだけ莫大な金額を市場への悪影響なしで吸収できるのか甚だ疑問だ。日本株は上がれば常に売り手が控える状況が続くことになり、長期的な需給は厳しいと判断せざるを得ない。
株式市場は楽観が支配的になり年内45000円説が大勢になってきた。ここからの株価をざっくり予想すれば、米株と為替次第ではあるが41000円程度が今年前半の高値になる可能性が大きいとみられ、米株及び為替次第では年内の高値になるかもしれない? 相場は過去のPERからみてリーズナブルプライスと見られる33000円±5000が許容範囲で、年内30000円台の水準を中心に推移すると見るのが妥当だろう。株価は虚像を巡るマネーゲームで、究極の楽観で40000円を超えたが、実体からは明らかにスピード違反で上げすぎだろう。昨年末には年前半での40000円超の予想は皆無だった。いまの段階では30000円割れ予想もほぼ皆無でありえなさそうだが、予想は期待に過ぎない当たることも外れることもある勝馬予想とたいして変わらない程度のものだ。異次元緩和は円安、物価高、株高を通じて格差社会を生み出し、我が国はどこかおかしな社会への道をどんどん進んでいるように思える。大企業と中小企業、正規と非正規、都会と地方、株式保有者と非保有者、住宅保有者と非保有者等々の格差はかつてない拡大で許容範囲を超えてきている。円安という厚化粧が全てを覆い隠して、株高が恰も日本経済と企業の変革が進み新たなステージへ進んでいるような錯覚をもたらしているように思えてならない。
日銀の異次元緩和が終了した。事前の意図的なリークがかえって逆効果となり円安が止まらない。日銀や財務省の政策当局は円安と株高に焦っており頭痛の種と聞く。株高はまだ良いが、円安が進めば物価高から消費は低迷し、景気は停滞する。最近の食料、燃料等円安からくる生活必需品の値上がりは深刻で、この国は乏しくなる一方で、政策当局が意図せざるインフレ=スタグフレーションに陥る懸念が出てきた。CPIは数%しか上がっていないが、個人的に買い物で感じるのは生活関連物価については肌感覚では2割ぐらい上がった印象がある。これでは賃上げの効果は薄まるほか、かなりのウエイトを占める年金受給者の受給額が増えるわけでもないから、結果として消費低迷が続く。株価は堅調だが景気と株価の温度差にはどこか理解し難いチグハグさを感じる。市場で大勢になってきた日本経済が新しい好循環に入ったという見方は、円安と株高が言わせた見せかけのものでどこにも説得力がない。
日本株は調整入りしたと思えるが、取り敢えずは年初来7500円の半分下げがメドだろう。セルサイドは実現しそうにもない日本経済及び企業の変革期待を理由に押し目買いを勧めているが、先駆して買ってきた海外投資家は売りに転じたような気配もある。また日銀は金融正常化の一環としてETF買いを終了し、70兆円に積みあがった株式の売却を模索し始めたとも言われている。一方、米株は半導体中心に高値更新中だが、崩れそうな雰囲気もありそうなれば年初来の上げを全て消失することもあり得よう。昨年後半から日米とも実体は無視し夢物語を買ったからその反動は軽微にとどまらず、米株が崩れれば大荒れになるだろう。4月末からの業績発表を控え、相場にとっては年度末を跨ぐこれから数ヶ月が極めて重要な分水嶺となるだろう。
日経は一年前の今頃から15000円、今年年初来7500円上げた。本日久し振りに大幅安になったことで あきらかに調整入りしたと言えそうだ。大雑把に言えばここから、50%下がればバブルだったということになり、30%までなら通常の調整内だろう。バブル崩壊なら20000円だが、経験的には20%安の32000円、深め30%安の28000円はこれまでも普通にある。バブルだから下げるとか、バブルではないから上げるとか、そのような視点で判断するとおそらく間違う。バブル崩壊はその後の下落率をもって判断することだ。この先株価が40000円を回復するには、ここまでの買いの材料だった日本経済及び企業への変革期待が実現するかどうかにかかっている。期待が実現に向かって順調に推移するならまだ上はあるだろうが、頓挫すれば30000円割れがあっても普通の深めの調整だ。相場とは少数意見が多数意見に変わる過程だ。今はみな強気だが投資家の心はうつろぎやすい。
年初来日経平均は米株高の流れが追い風になるなか、日本経済及び企業の変革に期待した買いで7,500円ほど上昇40000円台に突入した。ファンダメンタルズが昨年末と何が変わったか?円安及び値上げによる企業収益の好転以外には顕変はないし、今後も市場筋が言うような日本経済、企業の変革は難しいだろう。株価見通しは激変したが、円安という厚化粧が全てを覆い隠して株高が更なる株高見通しを言わせたようにしか思えない。株価は高かろうと安かろうと理屈は後付けで何とでも言える虚像だ。大多数が強気だが予想は全て市場関係者発で、新聞、テレビも情報源は同じで、ポジショントークを流しているだけだから信じるに値しない。バブルかどうかは分からないが、株価、ビットコイン、金、マンション価格等の上昇率を見れば明らかにバブリーだ。市場は平常時には悪材料とみなされるものまでも変革の表れとしてこじつけて好材料にしてしまうのもどこか変だ。
日米とも半導体関連株の急騰には呆れるばかりだ。半導体に関連しているだけで選別なしに上がるのはどう見てもバブルだろう。AIが本格的に実用化し業績に寄与するのはずっと先の話であまりにも先食いし過ぎだ。株価上昇の背景である日本経済や企業の変革は、経済や企業の構造問題からみれば強気な市場関係者が言っていることはほぼ絵空事でそう簡単に進むわけがない。年初来の株高は円安という厚化粧が全てを覆い隠してつけたものと見られ、こじつけの反動は軽微ではすまないだろう。先駆した外人投資家は既に利益確定に動いているとも聞く。本日日経は大幅に下げたが、一時的とか健全な調整という見方が大勢だ。これは急落時に出てくる市場関係者の常套句だ。個人的には40000円超えが年内の高値となるかも?と思っている。夢物語を真に受けて最後にババを掴まされるのは、市場のムードに煽られて手を出した個人投資家といういつものパターンだ。
円安が進めば購買力低下から我が国は貧しくなる一方だ。日本経済は円安と物価高と株高で質の悪いインフレに入ろうとしている。円安の元凶はダラダラ続ける意味のない異次元緩和にある。生産労働人口の減少する国はデフレ体質という構造問題を抱えるが、政策で進行を遅らせることはできても根本的な解決策はない。国民生活に痛みを伴う円安が進んでも、恩恵があるのは輸出企業と株式市場だけで国民は物価高に苦しんでいる。株価上昇の背景が日本経済と企業の変革にあると見る向きがあるが、円安で収益が上乗せされただけで、実体は何も変わっておらず株高が言わせたこじつけだろう。さらに円安が進めば悪質のインフレが進み、数字上はデフレを脱却しても実体は購買力の低下で格差は拡大し、社会全体の活力低下に繋がる。その傾向はもうすでに始まっているが、我が国が生き残る道は安すぎる円をリーズナブルな水準に戻すことで時間を稼ぐしかない。円安が日本をダメにする。効果に乏しい意味のないダラダラの緩和策はいすぐに見直すべきだろう。
日銀は3,4月にも予想される金融政策正常化の一環としてマイナス金利の解除に加えて、保有ETF(時価70兆円、含み益32兆円、コスト20000円)の売却着手も検討していると一部で囁かれているようだ。真偽のほどは分からないが、日経が40000円にもなれば、正常化の千載一遇のチャンスだから、保有ETF売却もセットでやっても何ら不思議ではない。外人や買い遅れた投資家等の買いニーズが潤沢にあるうちに、過去どこの中央銀行もやったことのない禁じ手の後始末を進めればよいだろう。日銀買入で日経平均は5000円以上嵩上げされたと言われている。売却の影響で一時的にその分ぐらい下げても、日経が30000円台なら影響は限定的で問題はないだろう。今後、金利正常化で国債の含み損は増えるのは間違いないから、その穴埋めとしてETF売却益は日銀の財務健全性を保つためにも有効だ。またこのまま円安と株高を放置すれば、質の悪いインフレになる懸念すらあるから、ETF売却は健全な成長のためにも寧ろ好ましい選択肢だろう。普通にやれば日銀保有株式の売却に50-100年かかるといわれているが、数年かけて平準的に売り切るのも一策だろう。事情通の話を相互的に判断すれば、おそらく日銀は金融政策の正常化に向けて、水面下でETF売却に踏み切る可能性を模索し始めたように思われる?
相場格言に「強気相場は、悲観の中に生まれ、懐疑の中に育ち、楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えていく」というものがある。現状どの段階かの判断は個々に任せるとして、実体面では日本経済に言われているほど変化があるとも思えないが、年初から2か月もたたないのにもかかわらず、突然停滞ムードが払拭され株価見通しが豹変したのには呆れている。最近の見方では、日経平均は日本経済が34年の沈滞期を脱し成長路線に回帰することで相場は上昇トレンドに入り、年末45000円、来年には50000円が当たり前のように言われている。しかし株価は影で光の強さや角度で変わり必ずしも実像をそのまま表さないいわば虚像だ。日本経済は成熟下にあり高齢化、少子化が好転するのは難しく活力ある明るい未来を描くのは難しい。この環境下での実体と大幅に乖離した株式市場の狂乱ぶりには違和感を覚える。ブームのAIは現状では過大評価で、エヌビィデアに主導されたスクリーン、アドテスト、エレクトロン、レーザーテック等の半導体株の動きは異様で危うさを感じる。年初には懐疑的だった不透明要因でさえ株価上昇に都合の良いように解釈され始めた。いくつかの現象がITバブル当時によく似ているが、はじけないと気づかないのがバブルでもある。
日経平均が史上最高値を更新した。政府、実業界の要人は日本は長いデフレから脱却しここから成長が始まるという見方を当然の如くコメントしている。しかし株価と肌感覚の景気実体や年初の見通しとの乖離には呆れるばかりだ。史上最高値更新の理由は殆ど後付けで、今後の見通しも株価が言わせた期待にすぎない。日本経済は円安が続けば可処分所得は縮小し成長は難しいだろう。円安で潤うのはトヨタに代表される輸出企業と株式市場だけだ。一方、円安及び食料、資源高による物価高で国民生活は青息吐息だ。日本経済の構造からは円安による物価上昇及び税金、社会保険料増を上回る賃上げが実現しない限り消費が増えることはない。11年に及ぶ異次元緩和策はまさに異時限でこれといった成果は出していない。ここに来て政府や日銀は異次元緩和の効果でデフレ脱却が見えてきたと言っているが、それは金融政策の効果ではなく資源高と円安になったからだ。逆に言えば何年やっても成果が見られなかったのは、その間、資源安、円高だったからだ。金融政策は外部要因頼みで限界が見えておりだらだら続ける意味はない。景気回復のために政府がいまやるべきことは、GDPでのウエイトの高い消費を促すための国民負担の軽減だ。減税、社保引き下げ、円高策が必要かつ有効な政策だが、高齢化社会を考慮すれば社保料には手をつけづらく、減税にも政府は消極的で財務省を説得する気はさらさらなさそうだ。選択肢が限られる中で消費拡大を目指すなら、取り組むべきは円高回帰策しか残っていないと思われる。