Fireside Chats

ファイアーサイド・チャット=焚き火を囲んだとりとめない会話のかたちで、広報やPRの問題を考えて見たいと思います。

中国・PRビジネスの成長と 取り残される日本

2005年08月11日 11時39分39秒 | PR業界
前回のエントリーから3週間更新をサボってしまった。
愛・地球博で6(土)7(日)と実施したシンポジウムの準備に忙殺されていたためだ。

おかげさまでシンポジウムには、6(土)115人、7(日)142人の聴講者を迎えて盛況であった。
その中には中国のPRビジネスをリードする中国国際公共関係協会と上海市公共関係協会から合計19人のミッション、北京を中心とした中国のジャーナリスト6名も含まれている。
また、日本のマスコミ取材は、NHK、日経、毎日、電通報、PRIRが入った。
特に毎日新聞からは、ガ島通信の藤代さん(彼もしばらく更新が途絶えていましたね)つながりで何度かメールでやり取りさせていただいた「上昇気流なごや」の磯野彰彦さんが自ら顔を出してくださった。

今回のシンポジウムに中国から招聘した講師のひとりは、中国国際公共関係協会常任副会長兼秘書長の鄭硯農氏。
PRのことを中国ではパブリックリレーションズを直訳し「公共関係」というので、中国国際PR協会と訳せるが、外交部管轄下で、全国各地のPR協会を統括する組織である。
もうひとりは、ウェーバーシャンドウィック北京(中国名:万博宣伟国际公关顾问有限公司)総経理のデビッド劉氏。
ウェーバーシャンドウィックは昨年度のランキングで世界最大のPRエージェンシーで、その中国オフィスは北京オリンピックや上海万博の招致活動で大きな力を発揮している。
デビッド劉氏本人は台湾出身で、台湾のPR業界での活躍の後、北京に進出した。
ともに、内容の充実したすばらしいプレゼンテーションだった。

鄭氏の報告によると、04年の中国の広報業界の規模は、日本円で約600億円に達している。前年比136%、00年度と比較するとなんと3倍という急成長振りだ。
日本の業界規模が300~500億円であることを考えると、既にして中国の業界規模は日本のそれを凌駕していることになる。
この驚くべき急成長を支えるのは、外資系および国内系のエージェンシーの増加。北京・上海など主要5都市だけで2000を超える広報エージェンシーが活躍しているという。
もちろんその背後には、中国経済の大きなポテンシャルとそれへの期待が存在する。
北京・上海・広州が牽引し続けてきた経済成長が、やがて東北マーケット(旧満州)や内陸部の西部大開発マーケットなどの経済ブロック波及していくことを考えれば、この成長トレンドは、若干の紆余曲折はあるにせよ、持続していくと考えるべきだろう。
日本企業に取っても、中国での事業展開に当たっての広報戦略の展開は不可欠の要件だ。

しかしながら、一部の企業を除き、この認識は希薄だと思わざるを得ない。
まず何より広報活動への正確な認識が欠如している。
全国メディアが発達し、記者クラブという国際的にはいびつな独占的情報流通システムの存在する日本では、広報イコール記者クラブへのリリース配布という誤解が存在し、多様な広報活動を展開する発想が乏しい。
さらに高度成長時代の広告の発達が、広告への依存度を高め、広報努力をなおざりにする風潮を育んだ。

その結果、欧米企業は中国進出の最初から広報スタッフを現地に派遣するのに、多くの日本企業は広報スタッフを現地に送り込まず、予算も権限も東京に残し、現地への権限委譲を行わない。
必然的に現地の状況もわからないまま、日本的な思考の枠組みでディシジョンし、しかも意思決定スピードが遅れるという構造的な欠陥に直面しているのではないだろうか。

今年4・5月の反日行動に象徴されるように、今中国では日本に対するアゲインストの風が吹いている。
日本ほどではないにせよ、外資系企業一般に対する中国国民の視線もシビアになり、経済的ナショナリズムの萌芽も見え始めた。
このまま推移するなら、何らかの突発的状況が直ちに致命的局面につながりかねない。

今年、北京嘉利智源公关顾问有限责任公司という中国資本のPRエージェンシーが、ヨーロッパ、アメリカ、東南アジアに続き、本格的な日本進出を果たすという。
欧米系の大手PRエージェンシーはほとんど全て中国進出を果たしている。
ところが、本格的に中国での事業展開を行っている日本のPRエージェンシーは片手に満たない。

広報の重要性を理解せず、戦略展開を怠る日本企業。
中国進出に及び腰の日本の広報エージェンシー。
昇竜中国の発展の勢いをしっかりグリップするためは、広報戦略の本格的取り組みが今こそ求められていると強調したい。


3 コメント

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シンポお疲れ様でした (ガ島通信)
2005-08-13 01:44:31
TBありがとうございます。シンポジウム、成功したようですね。お疲れ様でした。内容に興味があったのですが、スケジュールの都合で参加できませんでした。残念…
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ご苦労様でした。 (kumakita)
2005-08-13 10:29:49
シンポジウム、ご成功おめでとうございます。

ご多忙とは存じますが、お疲れ、ゆっくり癒せるお時間が持てますように、お祈りいたします。

「広報イコール記者クラブへのリリース配布という誤解が存在し、多様な広報活動を展開する発想が乏しい。さらに高度成長時代の広告の発達が、広告への依存度を高め、広報努力をなおざりにする風潮を育んだ。」

このことは、当事者感覚を持って、取り組んでいかなければならないことと、胆に銘じています。
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「評判づくり研究会 (井上 優介)
2005-09-09 17:37:28
ピーアールコンビナートの井上優介と申します。



弊社では、隔月で主に会員企業様を対象としまして「評判づくり研究会」を企画・運営しております。



「評判づくり研究会」とは、「評判づくりの仕掛け人」=「レピュテーションプロデューサー」をコンセプトに掲げる弊社が4年前から開いている実践的な研究会です。



さて、31回目の今回は、日本広報学会理事の濱田 逸郎氏を講師に迎え、

「最新中国PR事情と日本企業の課題」と題して開催します。



2004年、中国のPR業界規模は年間600億円に達しました。

日本のそれが300~500億円規模であることを考えると、中国は既にして日本の規模を凌駕しました。

一方、4・5月の反日デモに見られるごとく、中国では日本に対するアゲインストの風が吹き募っています。

にもかかわらず、中国での日本企業の広報努力は欧米企業に比べ、一歩も二歩も立ち遅れているようです。

先日、愛・地球博で行われた、日本広報学会主催の中国での広報をテーマとした国際シンポジウムをプロデュースした講師が、

中国のPRはどのような状況なのか、日本企業に求められる戦略は何か等につき、シンポジウムの成果を踏まえつつ報告します。



●日    時 :2005年9月14日(水)開場17:30 講義18:00~19:00

●会    場 :ホテルニューオータニ別館 ザ・フォーラム4F 清水谷

●参 加 費 :セミナー及びサロン参加 1名様につき8,000円(セミナーのみ参加は1名様6,000円、サロンのみ参加は1名様3,000円です)

●定   員 :30名 (お申込順、会場の都合上、定員になり次第締め切らせて頂きます)



興味がお有りの方、また参加されたい方は、

inoue@prk.co.jpまでご連絡下さい。



なお、「評判づくり研究会」の詳細は↓

http://www.prk.co.jp/hyoban/index.html

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