気まぐれ徒然かすみ草ex

京都に生きて短歌と遊ぶ  近藤かすみの短歌日記
あけぼのの鮭缶ひとつある家に帰らむ鮭の顔ひだり向く 

磐梯 本田一弘 

2015-04-24 17:31:22 | 歌集
みちのくの体ぶつとく貫いてあをき脈打つ阿武隈川は

ひゃくねんの闇蔵(しま)ひつつ若夏のみどり綾なす会津盆地は

磐梯は磐のかけはし 澄みとほる秋の空気を吸ひにのぼらむ

みちのくの死者死ぬなかれひとりづつわれがあなたの死をうたふまで

「お墓にひなんします」と書きてみまかりしをうなのいのち、たゆたふいのち

死者たちの文なり雪はゆつくりとわれとことばの間(あひ)に降るべし

この花は誰(たれ)のあなうら亡き子らの白く小さなあなうらひらく

みなづきは水の月なり濃みどりの雨を着たまふ磐梯のやま

ふくしまのゆふべのそらがかき抱(むだ)くかなかなのこゑ死者たちのこゑ

死者の息貼り付く空の青白し時間が解決するといふ嘘

(本田一弘 磐梯 青磁社)

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心の花所属の本田一弘の第三歌集『磐梯』を読む。

本田一弘さんのことは、前の歌集『眉月集』を読んでから注目していた。会津若松市にお住まいである。『磐梯』は、平成22年から26年夏までの作品を収めてある。当然、東日本大震災の歌が多く収録されている。
歌集のはじめの方(一首目、二首目)は、まだ震災に遭っていないが、郷土愛にあふれるこころを叙情的に詠い魅力的。この愛する地が震災に襲われ、傍から見ているだけではわからない様々なことを体験され、それが歌になった。いちいち説明の必要がない。


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