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ゆふぐれの茅の輪をくぐるいつしゆんを一言主神(ひとことぬし)の風の吹きたり
いろづきし鬼灯に触れわれに触れ風はときどき夫よりやさし
ことばこそ人間の知恵「大丈夫」「それでいいよ」は日向のにほひ
多すぎるひとの言葉に疲れたり一本の茎に笹百合ひとつ
食の字は人に良きなりはつなつのなづきに浄く食の字ひびく
酒粕にしろうり、きうり漬けこめば琥珀色なる 時間のうふふ
二上のふたみね見ゆる御所駅よりとんぼとともに電車に乗りぬ
喫茶店の隅にすわりて安心す杣(そま)棲みわれは尻尾かくして
振るたびに頭上でわづか静止して空に礼(ゐや)せり耕す鍬は
川になり、梯子になりてあやとりは騙されやすきわたしを騙す
(米田靖子 泥つき地蔵 本阿弥書店)
***************************************
コスモス短歌会の米田靖子の第三歌集『泥つき地蔵』を読む。
米田(こめだ)さんは、その名の通り農業に携わっていて、農業を中心とした暮らしに歌の題材を選んでいる。町育ちで実家もないわたしにとっては別世界だ。自然と向き合う生活には、厳しさも喜びもあり、近隣の人たちとの温かい触れあいもある。歌は平明で読みやすく、わかりやすい。わたしが一番好きなのは、九首目。耕す鍬の動きをしっかり描写している。「わづか静止して」の的確な表現。四句目の「空に礼せり」から自然への感謝が読みとれる。六首目の結句、「時間のうふふ」のユーモアにも拍手を送りたい。
いろづきし鬼灯に触れわれに触れ風はときどき夫よりやさし
ことばこそ人間の知恵「大丈夫」「それでいいよ」は日向のにほひ
多すぎるひとの言葉に疲れたり一本の茎に笹百合ひとつ
食の字は人に良きなりはつなつのなづきに浄く食の字ひびく
酒粕にしろうり、きうり漬けこめば琥珀色なる 時間のうふふ
二上のふたみね見ゆる御所駅よりとんぼとともに電車に乗りぬ
喫茶店の隅にすわりて安心す杣(そま)棲みわれは尻尾かくして
振るたびに頭上でわづか静止して空に礼(ゐや)せり耕す鍬は
川になり、梯子になりてあやとりは騙されやすきわたしを騙す
(米田靖子 泥つき地蔵 本阿弥書店)
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コスモス短歌会の米田靖子の第三歌集『泥つき地蔵』を読む。
米田(こめだ)さんは、その名の通り農業に携わっていて、農業を中心とした暮らしに歌の題材を選んでいる。町育ちで実家もないわたしにとっては別世界だ。自然と向き合う生活には、厳しさも喜びもあり、近隣の人たちとの温かい触れあいもある。歌は平明で読みやすく、わかりやすい。わたしが一番好きなのは、九首目。耕す鍬の動きをしっかり描写している。「わづか静止して」の的確な表現。四句目の「空に礼せり」から自然への感謝が読みとれる。六首目の結句、「時間のうふふ」のユーモアにも拍手を送りたい。
振るたびに頭上でわづか静止して空に礼(ゐや)せり耕す鍬は
(米田靖子 泥つき地蔵 本阿弥書店)
「うふふ」には脱帽。
作品とコメントないしは解説をひとつの作品として読ませてもらっています。
みなさんも、おそらくそうでしょう。