ホスピス、緩和ケア看護覚書*カナダ編

ホスピス看護をカナダから。2013年大学院を卒業しました。カナダ人の夫とは14年たっても熱愛中。

嬉しいよやっぱり 1

2012年07月10日 | ホスピス
4日連休の前、ローカルのGPから電話が入る。ホスピスに入れたい患者がいるんだけどと。ホスピスに入るためには緩和ケアコンサルテーションチームによるアセスメントが必要。いつもならGPからの紹介は緩和医が行くのだが彼女は午前中ミーティングなので私が行くことになった。ターミナルとわかれば早めに訪問看護部へ紹介になり、在宅緩和ケアが始まり、そこから緩和チームに依頼されるケースが普通なので今回のケースはまれだ。

連休中は緩和チームもホスピス入院も活動しない。なにもかもがストップするのでホスピス入院が必要ならその日の3時までにすべての書類を済ませなければならない。

しなければならないことは

1)ホスピス入院に適切かどうかのアセスメント。身体的、精神的に準備ができているかどうか。予後が適切かどうか(予後が3-4ヶ月以下であること)。急性期の治療が必要でないこと、もしくはそういう治療を希望しないこと。点滴による化学療法をしていない。身体的に適切であっても、精神的に準備できていないケースもある。延命につながるような治療(点滴による補液や抗生剤投与、輸血などだ)をもうしないと決意するのはほとんどの人にとって大きなハードルだ。

2) ホスピスへ行くと決める前に、すべての情報は伝達されなければならない。最近の在宅看護の発達により在宅死は可能な時代だ。しかしその資源やサポートを知らない人は多い。それを踏まえた上でホスピスへ入院を希望しているのか確認しなければならない。

情報の提供、アセスメント、意思決定の介助。することはたくさんある。焦って決断を迫ったりしてはならない。人生の大きな曲がり角。患者のペースにあわせて進めなければ信頼関係を失い失敗する。連休前というプレッシャーはあるが、患者が決心することができなければ、それはそれで良いとする姿勢が大切なのだ。あくまでもプレイヤーは患者と家族で私たちはプレイヤーを支える裏方であることをわすれてはならない。

訪問前にすることはアクセス可能なデータのすべてに目を通す。HAのデータベースで血液検査やレントゲン、他科のコンサルテーションの結果など。これをすると疾病のどの辺りにいるのかだいたい検討がつく。しかしこればかりに頼るとこれまた失敗する。私達が扱っているのは人間でナンバーや写真ではない。

訪問するとアイリーンはベッドに横たわっている。夫のトーマスが玄関で迎えてくれた。昨夜アイリーンがトイレから立ち上がれなくなって怖くなってGPに朝一に電話をいれたとか。

アイリーンはあんなに頑張って治療をしたのにこんなに早く癌が進んで、毎日自分でできることが少なくなって、トーマスに頼ると事が多くなって情けないと泣きじゃくる。アイリーンの最後の化学療法は4月。骨転移した場所に痛み緩和のためにした放射線療法は5月。

続く

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