ピークは過ぎたが、「NAVI」などいくつかのクルマ雑誌で今月もマイナーチェンジしたC5についてのレポートが紹介されている。これまで紹介された試乗記には的確なものもいくつか(ブックマーク参照)あるのだが、中には「??」なものもある。特に乗り心地について触れているもので気になる点がある。
「新C5の2Lは旧C5のソフトとハードの中間くらいの固さ」だとどこかで読んだが、このレポーターは旧C5に本当に乗ったことがあるのか疑問に思う。新旧の2L同士を比較すれば、明らかに新C5の方が劇的に柔らかく、「よく揺れる」。同乗者を酔わせないために、運転に気を使わなくては!と試乗した時思った位である。
私としては、新旧を通じてC5の乗り心地は概ね好ましいものだと思う。ただし、試乗などのチョイ乗りで分かりやすいのは新C5の2Lのほう。上述の通り旧来からのハイドロのタッチはこのクルマが一番明確に保持している。
旧C5も悪くない。時速60km以上の高速長距離の移動では、あらゆる状況で常に車体の揺れ幅が最小に押さえられ、このクルマのハイドラクティブが本当に「走り」を重視して設定されていることが良く分かる。
ただ、良く見るとユニークなのだが一見鈍重そうなスタイル、分かりやすい「揺れ方」をしないため実際の路面への当たりは実にうまく制御されているにも関わらず、高められた各部の剛性も相俟って「固く」感じられるサス設定、チープな内装、頭の悪いATなどが災いし、これまでのハイドロファンにはそっぽを向かれる一方、かといって新規の顧客にアピールすることも出来なかった不運なクルマといえるだろう。
素晴らしいのは新C5のV6車。このクルマのタッチはかつてのビッグシトロエンそのもので、かつ歴代のどのクルマより洗練されている。このクルマを走らせると、「うーん」と唸ってしまう。初代XM以来のハイドラクティブが、ここにきてようやく完成の域に達している。クルマとしては2Lの分かりやすさとは違う意味でかなりクセがある。低速で異様に軽いステアリング、直線での極めて長周期の揺れなど。しかしそうした個性への馴れが必要なところはビッグシトロエンのお約束である。
このクルマについても残念ながらあまり的確とは言えないレポートが散見された。評論家連中が箱根の芦ノ湖スカイラインなど(タイトなコーナー、アップダウンが多く、路面も荒れている)を走り回ってインプレを書いているが、そうした場所でスポーツカーまがいの走りをした上で、中には「リアから低級音がする」「ハードモードで走ったがバタバタした」などと見当外れなレポートを平気で書いている人がいる。
C5はあのような場所で、法定速度を大幅にオーバーした速度域で振り回すようなクルマではない。さらにあれだけ大柄な車体でハッチバックなのだから、そんなスピードで路面の悪いところを立て続けに飛ばせば「リアから低級音が」するのは当然だろう。自分のクルマでそんな走りをするか普通、と思ってしまった。それとハードモード云々はハイドラクティブを理解していないが故に出てくるコメントだろう。まったく。評論家ってものはもっと注意深く行動して欲しい。箱根で試乗、ってのは招待されたのか、彼らが希望したのかは分からないが、もっとそのクルマを評するのに適したシチュエーションで取材し、書くべきだと思う。
外車の試乗会って、伝統的に「接待」ぽいよね。フェラーリやポルシェのニューモデルを箱根で乗り回すのなら分かるけど。良識あるジャーナリストの仕事とは思えませんでした。
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