久し振りの試乗で改めてハイドロシトロエンの成り立ちについて考える機会を得たが、私自身の理解を深めるために続けて少し考えてみたい。
まず、現行2車種についての疑問点。これはいくつかあるが、これまでの左右関連懸架たるハイドロニューマチック、およびその発展形であるハイドラクティブとの違いは何か。乗り味の違いはそこにポイントがあると思われる。
ダンピングレートはサスペンションスフィア内のオリフィスによって設定してきたのがハイドロ/ハイドラクティブである。これに対して、可変式のダンパーを備えているのが現行C5/C6である。C5/C6の違いはその可変幅(C6の方が段数が多い)である。ちなみにこの可変ダンピングシステムはカヤバ製である。
このシステムは走行状態に応じて、恐らくは4輪独立にダンピングレートをリアルタイムに可変させるものである。センサーとシステムの応答速度にもよるが、例えば右前輪が大きめのバンプを乗り越えた際、即座に右後輪のダンピングレートを下げて(軟らかくして)ショックをいなす、といった制御を行っている様子がC6デビュー当時の映像資料からは窺える。
このシステムについては先人の努力で解明が進んでいるハイドロニューマチック/ハイドラクティブの機構ほど明らかにされてはおらず、この可変ダンピングシステムが4輪独立で作用しているのか否か、あるいは前後輪の関連制御(上述のような)の他に左右の関連制御もなされているのか(これはシステムの反応速度からしても困難と思われるが)あるいは、ロール制御の目的が主なのか、車体のピッチングを抑えフラットに保つことが主なのか、その方向性も分からない。
ハイドロニューマチック/ハイドラクティブの機構との一番大きな違いは、この可変ダンピングシステムと、左右の関連懸架の有無であろう。
現行のC5/C6においては、既に左右の関連はないと考えられる。そして、ダンピングは4輪独立してアクティブな可変システムが対応し、バネレートについてはオリフィスが存在しないガス玉(敢えて表現すると)が担当していると思われる。状況に応じて、サスペンションシステムに接続するスフィアの数を変えている可能性はあり、これにより、バネのレートについては4輪独立で、あるいは前後輪セットで可変しているのかも知れない。
もしそうだとすると、可変ダンピングの制御と合わせて相当な数の組み合わせが存在することになり、
これを、リアルタイムに、かつアクティブにコントロール可能だとするとそれを統合するソフトウェアの重要性がますますクローズアップされてくるということになる。
前にこのブログの中で、ハイドロシトロエンの乗り味を形成している要因の一つに、左右関連懸架がある、という話をしたことがあるが、この点においては、現行C5/C6の採用しているシステムは、既に別物であると言えるのではないか。
油圧でコントロールしているのは、もはや車高だけかも知れない。
DS4,DS5においてはC6でデビューしたこの新しいサスペンションシステムの採用はなかった。旗艦C6の後継車の登場はもはや期待できそうにないし、現行C5に於いても金属バネ仕様が混在している状況を鑑みると次期C5においては、ハイドロサスは採用されたとしても、オプション扱いになるかも知れない。
ということで、長年培われてきたシトロエンのハイドロニューマチック車は、その最終進化形を現行C6/C5において完成させると同時に終焉を迎えつつある。もしくは、現行C6/C5のそれはハイドロニューマチックの系譜とは異なるものであり、それは短命に終わりつつある、という解釈が成り立つのではないか。
もしそうだとすると、私自身の車歴としても初代エグザンティアと同時に始まり、何台かのハイドロシトロエンを乗り継いできたが、ここでそれも終わりを迎えることになるのかと思う。
感慨深いことです。
(長くなってしまったので、DS4の話はまた・・)
| Trackback ( 0 )
|