Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

11/12(日)日生オペラ『ルサルカ』/珍しいドヴォルザークのメルヘン・オペラをチェコ語で上演

2017年11月12日 23時00分00秒 | 劇場でオペラ鑑賞
NISSEI OPERA 2017
『ルサルカ』ドヴォルザーク作曲/全3幕(原語チェコ語上演・日本語字幕付)


2017年11月12日(日)16:30〜 日生劇場 A席 2階 A列 50番 7,000円
指 揮:山田和樹
管弦楽:読売日本交響楽団
合 唱:東京混声合唱団
演 出:宮城 聡
【出演】
ルサルカ:田崎尚美(ソプラノ)
王子:樋口達哉(テノール)
ヴォドニク(水の精):清水那由太(バス)
イェジババ(魔法使い):清水華澄(メゾ・ソプラノ)
外国の公女:腰越満美(ソプラノ)
料理人の少年:小泉詠子(メゾ・ソプラノ)
森番:デニス・ビシュニャ(バス)
森の精1:盛田麻央 (ソプラノ)
森の精2:郷家暁子 (メゾ・ソプラノ)
森の精3:金子美香(メゾ・ソプラノ)
狩人:新海康仁(テノール)

 ドヴォルザークは11作のオペラを残したが、そのほとんどは歴史の中に埋没されてしまい、現在上演されることは稀だが、その中で唯一、現在でも世界中の歌劇場のレパートリーになっているのが『ルサルカ』である。それでも台本がチェコ語で書かれているため、本国以外ではやはり原語的なハンデがあるようで、上演機会は多いとはいえない。本作は1901年の作でプラハで初演されているが、日本での初演は1959年だという。日本でも、有名ではあるが上演されることは稀な作品のひとつである。私は、2011年11月/12月に新国立劇場で上演されたのを鑑賞したことがある

 日生劇場ではこの珍しい演目に挑戦するにあたり、事前に積極的な宣伝活動を行った。中でも劇場の施設を使用して、「ピロティ・コンサート」、「ドラマトゥルク・レクチャー」と「音楽レクチャー」の講座など、無料のイベントを開催して、『ルサルカ』の話題作りに努めた。私も「音楽レクチャー」(2017年9月16日/日生劇場 7階 大会議室)に参加して、作品への理解をいささかでも深めようとしたものである

 この作品の上演に関する最大のポイントは、チェコ語による上演ということだろう。私はチェコ語をまったく知らない、1単語も知らないのである。おそらくは、大多数の日本人が同様であろう。オペラは、言葉を音楽に乗せて歌わせる芸術であり、その音楽自体も極めて言語的に書かれているものが多い。言葉の持つ抑揚やリズムが音楽の中に埋め込まれているのだ。母音の多いイタリア語のオペラは旋律が伸びやかになるし、子音の多いドイツ語のオペラは歌いやすいリズム感で書かれている。
 ではチェコ語は?? 言葉の持つ意味を理解した上で発音があり、音楽に乗せる際の抑揚やリズムが生まれるわけで、それは歌手だけではなく、実は指揮者が完全に知っていなければ、オペラは振れないはず。もちろん、スコアを読み込んで音楽的な解釈を組み立てることは指揮者の仕事だから、オーケストラを普通にドライブすることはできる。しかし言語は急には身に付かない。言葉を音楽に乗せるときに、オペラの本当の難しさが現れるのだと思う。

 今回の上演では、山田和樹さんがピットに入った。彼の指揮者としての音楽的な才能は疑うべきもないことだが、ことオペラに関しては、そう簡単にできることではない。しかも、チェコ語の『ルサルカ』・・・・。普通に指揮をして、読売日本交響楽団も普通にうまく演奏して、歌手の皆さんも(多分)うまく歌っていた。・・・・実際に聴いていても、こちらも良いか悪いかさえ分からない、というのが実情なので、何も言うべき立場ではないと思うが・・・・実際はどうだったのだろうか。

 ストーリーは比較的単純なメルヘンチックな物語なので、字幕を追っていれば内容は理解できる。読響は豊潤な音を出して良い演奏だったと思う。歌手の皆さんに関しては、チェコ語に神経を使いすぎてしまい、あまり豊かに歌っていたようには感じられなかったが、楽曲自体もよく知らないので、その実情は分からないというのが正しい評価だろう。唯一有名なアリア「月に寄せる歌」は第1幕の半ばに登場する。このアリアだけはソプラノ歌手のリサイタルの定番曲だけに知りすぎるくらいによく知っているが、ルサルカ役の田崎尚美さんの歌唱はたっぷりと抒情的に、最後はドラマティックに歌っていた。

 最近は音楽に内包されている言語的な要素に注目しているため、オペラの鑑賞の仕方も、ある意味でシビアになっているかもしれない。日生劇場は毎回レベルの高い上演を試み、素晴らしい活動をしていると思うが、今回はいつもよりは全体の仕上がりが良くなかったような気がする。それもやはりチェコ語へのアプローチの問題のようで、これは別に二期会や藤原歌劇団が上演しようと、日本人が行う以上はついて回る問題だ。歌手の皆さんはともかく、指揮者だけはチェコから招聘しても良かったのではないかと思うが、それも長い期間にわたるリハーサルに付き合わせるわけにもいかないから、難しいのかもしれない。いずれにしても、試みについては高く評価すべきであり、実際に『ルサルカ』を鑑賞して、美しい音楽を堪能することができているので、本来ならばこれで満足すべきなのだろう。

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