横山幸雄「ベートーヴェン:ピアノ協奏曲全集」(SACD3枚組 SICC 10024-6 4,600円)
ピアノ:横山幸雄
管弦楽:ジャパン・チェンバー・オーケストラ
先日、横山幸雄さんのコンサートを聴く機会があり、大変感銘を受けた。会場でこのCDを購入しご本人にサインしていただいたものである。
さて、ベートーヴェンのピアノ協奏曲といえば、全5曲のうち、1番・2番は古典的な要素が強く、3番以降がベートーヴェンらしさ発揮しているとされ、人気も高く、コンサートでもよく取り上げられる。特に、5番の「皇帝」は名曲中の名曲だ。
全5曲のこの全集を通して聴く。何といってもその特徴は、横山さんのピアノの音色だ。表題に「珠玉」としたのは、まさに音のカタチが丸い玉を感じさせるからだ。全く同じカタチをした音の玉がコロコロと転がっていく感じ。軽快でリズミカルがだ、軽いわけではない。力強さと堅牢な構造感をもち、しかも溌剌として輝かしい響きでもある。過度に感情移入することなく、むしろ客観性を保ちながら、冷静に正確に弾きつつ、エネルギーに満ちている。すばらしい表現力である。
一方、ジャパン・チェンバー・オーケストラのアンサンブルも見事である。横山さんとの息もぴったり。若々しいエネルギーに満ちていることや正確さ等も、同じ方向を目指していることが伺える好演である。
最近、ご多分にもれず、ベートーヴェンの協奏曲も、作曲された時代の演奏方法への回帰が流行っているようだが、このような小規模な室内オーケストラだとピアノとのバランスは確かに良い。この演奏を聴くと、最近の潮流の意味がよく理解できるような気がした。3番・4番がとくに良い。早めのテンポで、小気味よい、キレ味のするどい演奏だ。また、5番「皇帝」は、かつてのような大編成のオーケストラと派手な技巧のピアノが競い合うような演奏スタイルから見ると、まるで違う曲のように感じられるが、なるほど、こういう解釈もあるのかというほどに、室内楽的な透明な響きを持っている。
リリースが2005年だから、ごく最近の演奏というわけではないが、新鮮な魅力に満ちている、「珠玉」の全集である。
ピアノ:横山幸雄
管弦楽:ジャパン・チェンバー・オーケストラ
先日、横山幸雄さんのコンサートを聴く機会があり、大変感銘を受けた。会場でこのCDを購入しご本人にサインしていただいたものである。
さて、ベートーヴェンのピアノ協奏曲といえば、全5曲のうち、1番・2番は古典的な要素が強く、3番以降がベートーヴェンらしさ発揮しているとされ、人気も高く、コンサートでもよく取り上げられる。特に、5番の「皇帝」は名曲中の名曲だ。
全5曲のこの全集を通して聴く。何といってもその特徴は、横山さんのピアノの音色だ。表題に「珠玉」としたのは、まさに音のカタチが丸い玉を感じさせるからだ。全く同じカタチをした音の玉がコロコロと転がっていく感じ。軽快でリズミカルがだ、軽いわけではない。力強さと堅牢な構造感をもち、しかも溌剌として輝かしい響きでもある。過度に感情移入することなく、むしろ客観性を保ちながら、冷静に正確に弾きつつ、エネルギーに満ちている。すばらしい表現力である。
一方、ジャパン・チェンバー・オーケストラのアンサンブルも見事である。横山さんとの息もぴったり。若々しいエネルギーに満ちていることや正確さ等も、同じ方向を目指していることが伺える好演である。
最近、ご多分にもれず、ベートーヴェンの協奏曲も、作曲された時代の演奏方法への回帰が流行っているようだが、このような小規模な室内オーケストラだとピアノとのバランスは確かに良い。この演奏を聴くと、最近の潮流の意味がよく理解できるような気がした。3番・4番がとくに良い。早めのテンポで、小気味よい、キレ味のするどい演奏だ。また、5番「皇帝」は、かつてのような大編成のオーケストラと派手な技巧のピアノが競い合うような演奏スタイルから見ると、まるで違う曲のように感じられるが、なるほど、こういう解釈もあるのかというほどに、室内楽的な透明な響きを持っている。
リリースが2005年だから、ごく最近の演奏というわけではないが、新鮮な魅力に満ちている、「珠玉」の全集である。