Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

「珠玉」~横山幸雄「ベートーヴェン:ピアノ協奏曲全集」(CD)

2009年09月27日 22時40分25秒 | DVD・CDで観る・聴く
横山幸雄「ベートーヴェン:ピアノ協奏曲全集」(SACD3枚組 SICC 10024-6 4,600円)
ピアノ:横山幸雄
管弦楽:ジャパン・チェンバー・オーケストラ

 先日、横山幸雄さんのコンサートを聴く機会があり、大変感銘を受けた。会場でこのCDを購入しご本人にサインしていただいたものである。
 さて、ベートーヴェンのピアノ協奏曲といえば、全5曲のうち、1番・2番は古典的な要素が強く、3番以降がベートーヴェンらしさ発揮しているとされ、人気も高く、コンサートでもよく取り上げられる。特に、5番の「皇帝」は名曲中の名曲だ。
 全5曲のこの全集を通して聴く。何といってもその特徴は、横山さんのピアノの音色だ。表題に「珠玉」としたのは、まさに音のカタチが丸い玉を感じさせるからだ。全く同じカタチをした音の玉がコロコロと転がっていく感じ。軽快でリズミカルがだ、軽いわけではない。力強さと堅牢な構造感をもち、しかも溌剌として輝かしい響きでもある。過度に感情移入することなく、むしろ客観性を保ちながら、冷静に正確に弾きつつ、エネルギーに満ちている。すばらしい表現力である。
 一方、ジャパン・チェンバー・オーケストラのアンサンブルも見事である。横山さんとの息もぴったり。若々しいエネルギーに満ちていることや正確さ等も、同じ方向を目指していることが伺える好演である。
 最近、ご多分にもれず、ベートーヴェンの協奏曲も、作曲された時代の演奏方法への回帰が流行っているようだが、このような小規模な室内オーケストラだとピアノとのバランスは確かに良い。この演奏を聴くと、最近の潮流の意味がよく理解できるような気がした。3番・4番がとくに良い。早めのテンポで、小気味よい、キレ味のするどい演奏だ。また、5番「皇帝」は、かつてのような大編成のオーケストラと派手な技巧のピアノが競い合うような演奏スタイルから見ると、まるで違う曲のように感じられるが、なるほど、こういう解釈もあるのかというほどに、室内楽的な透明な響きを持っている。
 リリースが2005年だから、ごく最近の演奏というわけではないが、新鮮な魅力に満ちている、「珠玉」の全集である。
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音響の良いコンサートホールで音楽を聴きたい

2009年09月24日 00時37分46秒 | 音楽に関するエッセイ
 オペラやクラシック音楽の鑑賞においては、劇場やコンサートホールの音響が重要視されることはいうまでもない。音楽鑑賞は音を聴くという行為であるから、その音の質によって聴いたときの印象がかなり異なってくるからだ。では、そこでいう音響とはそもそもいったい何だろうか。
 オペラやクラシック音楽はほとんどの場合、ナマ演奏である。つまり、拡声装置を介さない、楽器や声のナマの音を聴くということだ。したがって、基本的には音の良し悪しは演奏者の技量の問題となる。良い音が出ていれば、良い音が聞こえるはずなのだ。だから、ホールによって音が変わるということは、ホールの「残響音」が変わるということになる。
 では残響音とはどのようなものだろうか。
 音響効果を設備していない、体育館などのようにある程度広くて四角い空間で、一方の壁側で、たとえばティンパニをダンっと鳴らすと、音が対向の壁に反射して返ってくることがある。音は空気の振動する波であるから、波の物理的性質通りに、壁にぶつかると反射する。入射角と反射角は等しいから、音源の正面に平行な壁があると、音は返ってくるのだ。同時に、もうひとつの波の性質に、二つ以上の波が重なると、波が混ざって干渉をおこす、というのがある。場合によっては、反響音同士が混ざってエコーのようなワウワウワウと響いたりもする。このような音の干渉がおこる空間で音楽を演奏すると、離れたところで聴いている人にとっては、実はナマの音とは違う音を聴かされることになるのだ。
 音楽専用のコンサートホールは、このような音の干渉が起こらないように設計されていて、音源から出た音は、響きながら音質を変えずに自然にすうっと消えていく。これが残響音である。一般的には、残響音は長い方が良い響きとされていて、2秒を超えるホールもある。
 さて、ここからは私見であるが。
 たとえば、サントリーホールは音が良いとされている。2秒以上の残響音を持っている。だが、ステージから最も遠い左右の奥の方の席にいると、残響音がいっぱい残って音全体がモヤモヤしてしまう。曲の途中では、新しい音が次々と間断なく流れてくるのに、本来のナマの音と空間を漂っている一瞬前の残響音が混ざって、音が曖昧になってしまうと考えられる。これは、どこのホールでも同じ。大きいホールではその印象は必ずつきまとい、小さなホールでは感じられない。
 結局、良い音で音楽を聴きたければ、ナマの音源に近いところで聴くしかないということになる。一般的に、ステージから10列目の中央あたりがベストポジションといわれている。私はもう少し前の方が良いと感じている。演奏者の音が演奏と同時に聞こえ、残響音が後方へ広がっていくイメージだ(つまりサラウンドのよう?)。オーケストラの場合は、ひとつひとつの楽器の音色がはっきりと聞き分けられる方が、音楽の構造をとらえやすい。10列目より後方にいると、だんだんそれができなくなり、20列目を過ぎると、各楽器の音がひとかたまりになってしまう。一方、室内楽やリサイタルの場合は、できるだけ前の方、できれば1列目で聴きたい。私の好きなヴァイオリン協奏曲を聴く時も、できるだけ1列目で聴くようにしている。もうひとつのメリットとして、音響の悪いホールでも演奏者に近ければ、問題にはならないということもある。
 さて実際のコンサートホールはどうだろうか。これももちろん私見、というようは感想だが、サントリーホールが残響2秒、東京文化会館が1秒、東京オペラシティコンサートホールが間の1.5秒、NHKホールは●秒(よくわからないけど、論外かも)。オーチャードホールはあまり行かないので不明。東京芸術劇場大ホールも1秒くらいのイメージ。
 実際のコンサートを後ろの方の席で聴いて、オーケストラの音が濁って聞こえたり、ヴァイオリンのソリストの音程が狂って聞こえたことがある。なんだかすごくヘタなんじゃない? と思っていたら、そのコンサートのテレビ放送では極めてクリアな演奏で音程もしっかりしていた。それぞれの楽器の前で音を拾い、それをミキシングしているからだ。つまり前の方で聴いているのと同じことになる。残響音というのも聴く場所によってはかえって音を悪くすることもあるのではないだろうか。
 音響というのは、結局は好みの問題なのだろうが、私はとにかくナマの音をまじりっけなしに聴きたいので、ホールでは、前へ前へと席を求める。結果、値段が高くなる。ところが実際には、資金の都合もあり、理想通りにはいかないのが現実ではある。そして、後ろの方の席で聴いてまたまた後悔することになる。「次はもっと良い席で聴こう…」そんなことの繰り返しである。
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9/20(日)「豊麗」バルバラ・フリットリ ソプラノ・リサイタル

2009年09月20日 23時18分37秒 | クラシックコンサート
「バルバラ・フリットリ ソプラノ・リサイタル」都民劇場音楽サークル

9月20日(日)15:00~ 東京文化会館・大ホール S席 1階 11列 36番 10,000円(会員券)
ソプラノ:バルバラ・フリットリ
指揮:ジュリアン・レイノルズ
管弦楽:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
曲目:モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」より序曲
   モーツァルト:レチタティーヴォ「私は予感していた」とアリア「私の前から消え去っておくれ」K.272
   モーツァルト:レチタティーヴォ「哀れな者よ、おお夢よ目覚めよ」とアリア「まわりにそよぐ微風」K.431
   モーツァルト:歌劇「イドメネオ」へのバレエ音楽K.367より「パ・スール」
   モーツァルト:歌劇「イドメネオ」より「オレステとアイアスの苦しみを」
   ヴェルディ:歌劇「アイーダ」より前奏曲
   ヴェルディ:歌劇「アイーダ」より「勝ちて帰れ」
   ヴェルディ:歌劇「椿姫」より第1幕への前奏曲
   ヴェルディ:歌劇「オテロ」より「アヴェ・マリア」
   ヴェルディ:歌劇「ドン・カルロ」より「世の虚しさを知る神よ」
   ヴェルディ:歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より間奏曲
   ヴェルディ:歌劇「道化師」より「矢のように大空に放たれて飛ぶ」
  《アンコール》プッチーニ:歌劇「トスカ」より「歌に生き、恋に生き」
         チレア:歌劇「アドリアーナ・ルクヴルール」より「私は創造の神の卑しい下僕」
   ※当初発表されていたプログラムとは、一部の曲目と曲順が演奏者の希望により変更になった。

 都民劇場・音楽サークルの2009年前期の会員になっているので、本コンサートの鑑賞となった。
 バルバラ・フリットリさんは現在のオペラ界を代表するソプラノさん。まあ、オペラを多少かじっている人なら知らない人はいないという大スターだ。2005年以来、世界の一流歌劇場とともにたびたび来日している。昨年(2008年)秋のウィーン国立歌劇場の来日公演での「コジ・ファン・トゥッテ」のフィオルディリージ役、今年(2009年)9月のミラノ・スカラ座の来日公演での「ドン・カルロ」のエリザベッタ役が記憶に新しい。いずれもBravo!! の嵐だった。日本でのリサイタルは今回が初めてである。さすがにこのクラスになると、ピアノ伴奏のリサイタルでなく、オーケストラ伴奏のコンサートとなった。

 バルバラ・フリットリさんは、リリコ・スピントと呼ばれるソプラノで、軽快で超絶技巧のコロラトゥーラとドラマティックの中間的なところ、要するに本格派である。得意としているモーツァルトとヴェルディを中心としたイタリアオペラに絞り込んで、あまりレパートリーを広げないのだそうだ。それだけに出演するオペラでの完成度が高いとか。
 今回は、リサイタルということで、集中したとてもすばらしい歌唱をたっぷりと披露してくれた。一言で表現すれば「豊麗」。豊かさと華麗さを併せ持ち、ドラマティックに会場を盛り上げ、聴衆の心つかみ方を知っている。ステージ上の立ち振る舞いも貫禄十分。大スターの風格だ。
 前半はモーツァルト・プログラム。実際にはあまり聴く機会の多くないコンサート用のレチタティーヴォとアリアを2曲。イタリア語の曲であり、フリットリさんにはぴったりの曲だろう。「イドメネオ」の「オレステとアイアスの苦しみを」はちょっとテンポが早めなような気がしたが、軽くもなく重くもない声質で十分に力強く、迫力満点だった。
 後半はヴェルディを中心としたプログラム。「アイーダ」と「ドン・カルロ」は、ミラノ・スカラ座の今回の来日公演のプログラムだ。もっとも彼女は「ドン・カルロ」のみに出演している。「世の虚しさを知る神よ」はオペラでも聴いたが、さすがにリサイタルの方が正確に歌えている。もちろんBravo!!である。「オテロ」の「アヴェ・マリア」は十八番というだけあってまったくもってすばらしい。「柳の歌」から続けてプログラムにしてくれなかったのが、いかにも残念だ。
 「カヴァレリア・ルスティカーナ」の間奏曲をはさんで、いったんヒートアップした聴衆の心を冷ます。なかなか粋なプログラム構成だ。「道化師」の「矢のように大空に放たれて飛ぶ」で大いに盛り上がってプログラムは終了。当然Bravo!!の拍手が続き、アンコールとなる。「トスカ」の「歌に生き、恋に生き」と「アドリアーナ・ルクヴルール」の「私は創造の神の卑しい下僕」。厚く強い声質と豊かな声量で、圧倒的な存在感、そして迫力。大スターの実力をまざまざと見せつけ、魂をわしづかみにするような、アンコールだった。もちろん、今日のリサイタルはBravo!!

 フリットリさんは、2010年7月にトリノ王立歌劇場の引っ越し公演での来日がすでに決定している。今度はプッチーニ。「ラ・ボエーム」のミミだ。ロドルフォはマルセロ・アルヴァレス、ムゼッタに森麻季、指揮がジャナンドレア・ノセダとなれば、行かないわけにはいかない。S席39,000円とは
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9/19(土)「流麗」川久保賜紀&横山幸雄デュオ・リサイタル

2009年09月19日 22時35分32秒 | クラシックコンサート
「川久保賜紀×横山幸雄 デュオ・リサイタル」

9月19日(土)15:00~ 千葉県文化会館・大ホール  指定席 1階 1列 24番 3,500円
ヴァイオリン:川久保賜紀
ピアノ:横山幸雄
曲目:ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第3番ニ長調 作品108
   ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第17番ニ短調作品31-2「テンペスト」
   ショパン:バラード第1版ト短調作品23
   ショパン:ポロネーズ第6番変イ長調作品53「英雄」
   横山幸雄:ヴァイオリン・ソナタ
  《アンコール》モンティ:チャルダッシュ

 千葉県が主催するクラシック・プレミアム・シリーズのコンサート。今シーズンの第2回は川久保賜紀さんと横山幸雄さんのデュオ・リサイタル。川久保さんもボクの大好きなヴァイオリニストのひとりで、地元でのコンサートということもあり、とても楽しみにしていたものだ。しかし、チャイコフスキー・コンクールの最高位受賞(1位なしの2位)の川久保さんと、ショパン・コンクール最年少入賞の横山さんのデュオ・リサイタルが、千葉で3,500円で聴けるのは、幸せなことだ。ふたりとも世界的な音楽家なんだから…。今回は、横山さんは全曲を、川久保さんが2曲のソナタをという構成である。

 1曲目はブラームスのヴァイオリン・ソナタ第3番。哀愁を帯びつつも重厚な構成という、ブラームスの世界。川久保さんは、水色のドレスで登場。横山さんはチャコールグレイのスーツにピンクのネクタイという、ちょっとオシャレなサラリーマン風のスタイル。川久保さんの音色は、一言で言えば「流麗」。アメリカ育ちの大陸的なスケール感と日本人的な繊細さを併せ持ち、流れるように歌う。美しい響きだ。一方、横山さんの伴奏は正確なリズム感と緻密なタッチでブラームスっぽさを描き出している。ヴァイオリンを十分に歌わせその魅力を引き出す、とてもすばらしい伴奏だった。
 2曲目は横山さんのソロで、「テンペスト」。横山さんのピアノは、リズム感と構成がガッチリしていて、とくにこの時期のベートーヴェンにはピッタリだと思う。よけいな感情に流されることなく、冷徹かつ緻密、それでいて力強い。
 休憩をはさんで、3曲目と4曲目はショパン。感情に溺れることなく、硬質ないい演奏だ。Bravo!!

 さて、5曲目。横山幸雄作曲「ヴァイオリン・ソナタ」。配布されたプログラムに、作曲者ご自身の曲目解説があり、そこにも書かれていたが、この曲を聴いたことがある人はあまりいないはずだ。ヴァイオリニストとしては、矢部達哉さんと川田知子さんに続いて川久保さんが3人目の演奏者になるとのことだ。初めて聴く曲、しかも誰もが知らないような曲は、最初の音を聴く瞬間まで期待と不安が伴う、得難い体験だ。
 第1楽章は、ヴァイオリンのソロパートから始まり、ピアノが追いかけて加わる。…いわゆる「現代音楽」かと思っていたら、何やらロマン派の響きが。美しい旋律をヴァイオリンが、ピアノが華麗な伴奏を繰り広げる。ソナタ形式のがっちりした構成だ(ですよね? 横山さん)。
 第2楽章はスケルツォ楽章となっている。中間部はテンポが遅くなって叙情的な旋律が現れる。
 第3楽章は緩徐楽章。和音が4拍子をきざみ、ヴァイオリンが美しく天国的な旋律を乗せる。
 第4楽章もヴァイオリンのソロから始まり、ピアノが加わり、やがて力強く盛り上がっていく。ピアノがカデンツァのように縦横無尽に走り回り、ヴァイオリンが激しく応対する。
 全体はロマン派の香りがプンプン。部分部分を聴くと恋愛ものの映画音楽のように美しい旋律が次々と現れてくるのだが、4つの楽章の構成、各楽章の形式的な構造などは、むしろ古典派的な「クラシック音楽」であることを物語っている。
 作曲がピアニストの横山さんだから、ピアノのパートはショパンのような華麗な音楽。一方、ヴァイオリンのパートはそれほど技巧的ではなく、叙情的な要素を受け持っている形だ。やはりピアノには絶対にできないこと(音を伸ばすことやピチカート奏法、ミュートで音質を変えることなど)をヴァイオリンに求めて、両者の個性をうまく表したのだろう。とても「素敵な」曲である。
 もちろん一度聴いただけではまったく覚えられないから、ぜひもう一度聴きたい。川久保さんのレパートリーに加えていただいて、これからもリサイタルなどで聴かせてもらいたい。できたらレコーディングしてください。>^_^<

 アンコールはモンティのチャルダッシュ。派手な技巧で絶対に盛り上がって、後味スッキリまちがいなし。Bravo!!

 さて、リサイタルの終了後、CDを購入した人を対象にしたサイン会があった。川久保さんの「リサイタル!」と横山さんの「ベートーヴェン:ピアノ協奏曲全集」を購入、サインしていただいた。普通は写真はダメなんだけど、今日はおかまいなし、という雰囲気だったので…川久保さん、ありがとうございました。


川久保賜紀さん~リサイタル終了後のサイン会にて

 クラシックの演奏家の方たちは、リサイタルを開くといつもサイン会をやったりして大変そう。本当は疲れているはずなのにね。でも世界で活躍しているトップ・アーティストの方たちとふれあう機会が持てるのは、クラシック音楽ならではのこと。ファンにとってはうれしいひとときなのであります。
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9/18(金)「清冽」南紫音のブルッフVn協奏曲

2009年09月19日 00時17分25秒 | クラシックコンサート
「日本フィルハーモニー交響楽団 第55回さいたま定期演奏会」

2009年9月18日(金)19:00~ 大宮ソニックシティ大ホール S席 1階 1列 24番 5,000円
指 揮: 飯森範親
ヴァイオリン: 南 紫音
管弦楽: 日本フィルハーモニー交響楽団
【曲目】
ベートーヴェン:「プロメテウスの創造物」序曲
ブルッフ: ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調
ベートーヴェン: 交響曲第6番ヘ長調「田園」
《アンコール》
 グリーグ: 組曲「ホルベアの時代より」(ホルベルク組曲)から前奏曲

 今日は大宮まで足を伸ばしてきた。目的はもちろん南紫音さんのブルッフ:ヴァイオリン協奏曲。南紫音さんはブルッフは初挑戦とのことで、ファンの私としては、当然待ち望んでいた。彼女と日本フィルの組み合わせでは、かつてメンデルスゾーンを聴いたことがある。この時の指揮は炎のコバケンさんだった。
 7時。指揮の飯森範親さんが登場し、序曲「プロメテウスの創造物」。う-む、オケが重い。なにやらドタバタした感じ。ティンパニの音が大きいのは日本フィルの特徴かな。弦がおとなしくて、金管が強い。
 そして2曲目。南紫音さんが濃いピンクのドレスでスラリと登場。ロン・ティボー国際コンクールで2位を受賞したのが2005年だから、もう4年の経つ。演奏に、年々貫禄が増していくように、成長の真っ最中というか、期待の星である。
 ブルッフのヴァイオリン協奏曲は、美しいメロディが次々と奏でられていく、名曲だ(ところがクラシック音楽を聴かない人はまずブルッフなんて知らない。学校で教わらないからだ)。ボクも大好きな曲のひとつである。最近では、昨年(2008年)のNHK音楽祭でのサラ・チャンの快演が記憶に新しい。
 まず、南紫音さんのヴァイオリンだが、ひとことでいえば「清冽」というところか。マジメというか清らかというか、20歳の女性らしい繊細さというか素直さというか。ひとつひとつの音を正確に弾く堅実な演奏で、ちよっと堅いかなァという気もした。もう少し流すところは流してメリハリをきかせたりしてもいいかなとも。でも技術のレベルは高いし、低音の深い音色から高音のすすり泣くようなフレーズまで、表現の幅も広く、彼女のヴァイオリンを十分に堪能できた。
 最前列の奏者の正面の席だったので、その表情もよく見えた。曲の途中、ソロの途切れる部分でホールの空間に厳しい視線を送り、集中している表情が険しい。2楽章の中盤以降、時折満足げな微笑も見られるようになり、ご自分でも満足のいく音が出ていたのだろう。彼女は、演奏の内容も演奏中の動作・仕草なども、どちらかというと淡々としている方で、感情をほとばしらせるようなところがない(優等生的?)。もう少し感情を前に出すことによって、表現に艶のようなモノが出てくるかもしれない。今後の課題だろう。



 一方、飯森範親さんの指揮と日本フィルの演奏は、この曲にはちょっと重すぎた。テンポの遅めで、リズム感がバタついて、推進力がない。弦と管と打のバランスもイマイチ。ブルッフのロマンティシズム溢れるこの曲を、若いヴァイオリニストが弾くのだから、もっと勢いがあっても良かったのでないか。突っ走るような躍動感、情熱がほとばしるようなエネルギーを感じさせる演奏をすると、この曲は多少ヘタでもBravo!!になると思うのだが、いかがだろうか。
 休憩をはさんで、3曲目の「田園」になると、さすがにオケが弾きなれているのか、指揮も暗譜だったし、音がぐっとまとまってバランスが良くなった。アンコール前に飯森さんが挨拶をし、「ウィーンを散歩して来ましたが、次の曲は…」と語っていたが、「田園」を聴きながら目を閉じてみても、ウィーン郊外の田園風景は浮かんでこなかった(実際に行ったこともないですけど)。
 アンコールは、グリーグ:組曲「ホルベアの時代より」(ホルベルク組曲)から前奏曲。弦楽だけのオーケストラ曲だが、今日一番の出来だったりして(失礼)…
 とはいえ、たった5,000円でS席でコンサートを聴けるのは、地方の名曲シリーズならでは。ブツブツ言ってますけど、けっこう楽しんでいるんですよ。南紫音さん、飯森範親さん、日本フィルの皆さん、これからも素敵な音楽を、よろしくお願いします。

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