Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

11/24(金)東京二期会『こうもり』/伝統の傑作オペレッタをアンドレアス・ホモキの颯爽とした新演出で楽しむ

2017年11月24日 23時00分00秒 | 劇場でオペラ鑑賞
東京二期会オペラ劇場/NISSEI OIPERA 2017提携
ヨハン・シュトラウスⅡ世『こうもり』
オペレッタ全3幕/字幕付き言語(ドイツ語)歌唱・日本語台詞による上演


2017年11月24日(金)17:00〜 日生劇場 S席 1階 C列 29番 12,000円
指 揮:阪 哲朗
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
合 唱:二期会合唱団
合唱指揮:佐藤 宏
演 出:アンドレアス・ホモキ
舞台美術:ヴォルフガング・グスマン
照 明:フランク・エヴィン
【出演】
アイゼンシュタイン:小森輝彦(バリトン)
ロザリンデ:澤畑恵美(ソプラノ)
フランク:山下浩司(バス・バリトン)
オルロフスキー:青木エマ(ソプラノ)
アルフレード:糸賀修平(テノール)
ファルケ:宮本益光(バリトン)
ブリント:大野光彦(テノール)
アデーレ:清野友香莉(ソプラノ)
イダ:秋津 緑(ソプラノ)
フロッシュ:イッセー尾形(俳優)

 お馴染み、ヨハン・シュトラウスⅡの傑作オペレッタ『こうもり』。東京二期会オペラ劇場とNISSEI OPERAの提携公演として、またベルリン・コミッシェオーパーとの提携公演として、アンドレアス・ホモキ氏の演出するプロダクションで上演された。
 『こうもり』といえば東京二期会でも得意の演目のひとつだが、今回はホモキさんの新演出でまた違った側面を見せてくれるだろうと期待していた。過去にも、『フィガロの結婚』や『ばらの騎士』などで、極度に抽象化されたオペラ空間を創出したプロダクションを知っているだけに、あのドタバタ喜劇の『こうもり』がどのように化けるのかと、ワクワクものであった。

 ところが、意外なことに、かなり「普通」に近い演出であった。期待していた分、正直言って拍子抜けしたところはあるが、一般的に考えれば、センスの良い、粋なプロダクションに仕上がっていたといえる。だから、初めは「なんだ、普通じゃないか」と思って見ている内に、やはりバカバカしい『こうもり』の世界に引き込まれてしまい、「へー」とか「ほー」とか「おやおや」とか心の中でつぶやきながら、ニヤニヤ鑑賞していたわけである。結果的にはホモキさんにうまく踊らされたことになる。やはり世界一流の演出家だけのことはある。
 このプロダクションでは、時代や場所の読み替えなどは行わず、19世紀ウィーンの上流階級風の一般的な舞台装置と衣装を質感高く揃えているが、華美な装飾は避け、全体を上品に仕上げている。演出上で台本から物理的に変更されている点は、全3幕のオペレッタ作品を第2幕の途中で分断し、休憩1回の2幕もの風にしたことだ。第2幕の中程、「乾杯の歌(シャンパンの歌)」が終わったところで切ったのである。休憩を挟んで後半の開始部分には前奏曲として、ポルカ・シュネル「ハンガリー万歳」が挿入されていた。ここでのトランペットが妙に晴れやかで印象に残った。
 夜会を開催している「ロシアの若い貴族オルロフスキー侯爵」の存在そのものもファルケによる大掛かりなお芝居になっているという設定(解釈)になっている。そのため元々はメゾ・ソプラノのズボン役であるオルロフスキーが、ファルケが仕込んだ女性(青木エマさん)が男装しているという設定になっている。こうした逆転した設定はちょっとした楽屋落ち風で面白い。
そういうわけだから、第3幕の刑務所のシーンなど、どこまでがファルケの仕掛けた芝居なのかがよく分からなくなってしまう。まあ、いささか無理があるようにも思えるが、もともと深く考えないオペレッタなので、こういうのもありなのだろう。

 出演者の歌唱はドイツ語、台詞は日本語というのも、二期会ではお馴染みの構成だ。歌手の皆さんは、歌唱はともかくとして、台詞(芝居)の部分が非常に多いので、ドタバタ喜劇であっても演じる方は大変だろう。オペラ歌手の台詞はよく通るので聴き取りやすい。歌唱の方は、メンバー表を見れば分かるように、東京二期会のトップグラスの歌手たちなので、安心して聴いていられる。もともとそれほど図抜けた技巧を要求されるような作品ではないので、誰それの歌唱がどうだった、こうだったという評価をすべきものではないかもしれない(ただしアデーレだけは別)。
 阪 哲朗さんの指揮は、全体的に速めのテンポ設定で、オペレッタ全体に疾走感をもたらし、良い意味で緊張感を高めていたと思う。東京フィルハーモニー交響楽団の演奏も手慣れたもので、力みがないのに質感が高い。音そのものに楽しい情感が乗っているような、素晴らしい演奏を聴かせてくれた。
 もう一つの見せ場である、第3幕のフロッシュ(イッセー尾形さん)のアドリブを効かせた(?)台詞まわしだが、こちらもなかなか面白かった。照明を変えさせたり、オーケストラを鳴らせたり、自身が歌ったり(Bravo!の声がかかった)・・・・。

 まあ、何だかんだといって『こうもり』は楽しい。あまり奇抜な演出にしなかったのは正解。あまり疑問を持たずに、素直にステージに集中でき、無邪気に笑える方が良いに決まっている。その意味でも、普通に楽しめたので満足である。素敵な公演であった。

 最後になるが、この日の公演は、チケット料金が特別価格設定になっていた。5回の公演日の内、他の日はS席15,000円なのに、今日は12,000円。しかも平日の金曜日なのに17時開演。そう、プレミアム・フライデーなのである。いつもより速く仕事を切り上げてゆるりとオペレッタ鑑賞。実践してみると、実に豊かな気分になりこれほど素晴らしいことはない。しかし世間ではプレミアム・フライデーを謳歌している様子はまったく見られないので、こちらとしてはいささか気か引けてしまった次第であった。

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