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Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

12/30(水) BSジャパン「バイオリンの聖地クレモナへ」(川久保賜紀さん出演)を見て感激

2009年12月31日 23時31分12秒 | テレビ・FMで観る・聴く
12月30日(水)BSジャパン「バイオリンの聖地クレモナへ~ストラディバリウスに魅せられた日本人たち~」

 年末の押しつまったこの時期に、BSジャパンで大好きな川久保賜紀さんが出演するドキュメンタリー番組が放送された。
 2002年のチャイコフスキー国際コンクールで最高位を獲得して、今や日本を、いや世界を代表する若手ヴァイオリニストのひとりとなった川久保さん。相変わらずお美しくたおやか。いつもステージで見せる集中と緊張を伴う厳しい表情とは打って変わって、今回の番組では素顔の自然な表情がたっぷり拝見でき、ファンとしては嬉しい限りである。今年(2009年)で30歳になられたはずだが、ちょっとたどたどしい日本語がとてもチャーミング(彼女はまだ帰国していない帰国子女?)。

 テレビ番組は、15歳の時から10年間、貸与を受けて使用してきた1707年製ストラディヴァリウス「カテドラル」を所有者に返すことになり、新しい楽器を探すという観点から、ヴァイオリンの聖地と呼ばれる来たイタリアの古都クレモナを訪ねた川久保さんが、現地でヴァイオリン製作に取り組む日本人の制作者たちと交流する、というストーリーである。
 クレモナは、かのアントニオ・ストラディヴァリがヴァイオリンを製作していた都市。今でもその伝統が息づき、80余りのヴァイオリン工房があるという。川久保さんは、クレモナでヴァイオリンを製作している菊田浩さん、高橋明さん、天野年員さんの3人と出会い、彼らの製作したヴァイオリンを弾いてみる。伝統を引き継ぎ、さらに研鑽を重ねて作られる新しい楽器は、もちろん1台1台音色が異なるし、製作者によっても個性が違ってくる。1台の楽器でも、微妙な調整によって音が変わってくるのだという。4本の弦のバランスも大切だ。微調整を繰り返しながら、徐々に製作者の意図した音に近づけていく。しかも、そうして作られたピカピカの新品の楽器は、これから弾き込んでいくことで、名器になる可能性を持つのだという。
 演奏者である川久保さんは、製作者の意図や感情を知り、新たな発見をする。


 川久保さんが菊田さんの自宅の工房を訪れ、彼が2002年のチャイコフスキー国際コンクールのヴァイオリン製作部門で優勝した時の楽器を弾いてみる。その表情は真剣そのもの。音楽家の厳しい耳が楽器の微妙なニュアンスを捉えていく。製作者と演奏者の意見交換で、さらに楽器作りの新たなヒントが生まれていくのだ。コンクールで優勝したこの楽器も、今後、良い楽器に成長していく可能性がある、と川久保さんは感じたようだ。ところで、彼のヴァイオリン保管ケースの中に、マングースのキャラクターのぬいぐるみが…。こんなところにまで「のだめ」が出没しているとは。

 あらためてわかったことだが、音楽家の皆さんの耳の良さ。楽器の持つ音色の差異や個性を実に高いレベルで聞き分けて、自身の演奏への適合性を究めていく。われわれ凡人には、感覚的には理解できても、本質的にわからないレベルの話である。こうして日々研鑽と努力を続けている人々が創り出す音楽を私たちは聴いているわけで、素人が無責任に良いの悪いのと批評したりするのはいかがなものかと思う。とはいえ、いつも素敵な音楽を聴かせてくれる川久保さんの、いわば舞台裏の苦労の部分をほんのわずかでも知ることができて、とても嬉しかった。

 テレビの番組では、結局、川久保さんが自分の楽器を見付けはしないまま終わってしまった。取材されたのは2008年のこと。結論はないまま、番組は終了した。
 後日談となるが、「カテドラル」と別れた後、日本音楽財団からストラディヴァリウス「ムンツ」を短期貸与され使用していた。現在の使用楽器は1757年製のカルロ・ランドルフィだとのことだ(『音楽の友』2009年11月号)。
 次に川久保さんに会えるのは2010年1月16日(土)/文京シビックホールでサラサーテのカルメン幻想曲とサン=サーンスの序奏とロンド・カプリチオーソ(沼尻竜典指揮/東京フィルハーモニー交響楽団)と、翌週23日(土)/第一生命ホールでモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」(N響メンバーによる室内オーケストラ)。また素敵な音楽を聴かせてくださいね。
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「ラ・ボエーム」NHK BS-hi「華麗なるメトロポリタン・オペラ」より

2009年10月13日 00時35分16秒 | テレビ・FMで観る・聴く
「なんて冷たい小さな手なんだ。僕が暖めてあげよう」
ご存じ、プッチーニの名作「ラ・ボエーム」だ。METライブ・ビューイング・シリーズの一環で、2008年に上演された映像記録だ。

歌劇「ラ・ボエーム」
作曲:ジャコモ・プッチーニ
2008年4月5日 メトロポリタン歌劇場
指 揮:ニコラ・ルイゾッティ
管弦楽: メトロポリタン歌劇場管弦楽団
合 唱: メトロポリタン歌劇場合唱団
バレエ:メトロポリタン歌劇場バレエ
美術・演出: フランコ・ゼッフィレッリ

ミミ :アンジェラ・ゲオルギュウ
ロドルフォ:ラモン・ヴァルガス
ムゼッタ:アインホア・アルテタ
マルチェッロ: リュドヴィク・テジエ
コルリーネ: オレン・グラドゥス
ショナール: キン・ケルセン ほか

 「ラ・ボエーム」は何度見ても泣ける。プッチーニの曲があまりにも美しく切なく、感情を揺さぶる。普通以上の演奏をすれば成功間違いなしの名曲なのだ。冒頭のロドルフォの台詞は第1幕でのミミの出会いのシーンだが、この台詞を第4幕でミミが歌い返すのが切なく、涙無くしては聴けないのだ。
 今回のMETのプロダクションは、昔から使っているフランコ・ゼッフィレッリの演出と装置による、いわばスタンダードといえる舞台である。見飽きているといってしまえば元も子もないが、とりあえず「ラ・ボエーム」というばこれだ、というプロダクションだから、文句の付けようもない。第1幕と第4幕の舞台となる屋根裏部屋のは、かつてよりごぢんまりとしてリアルになっている。第2幕のカルチエ・ラタンの豪華な群衆シーンもあいかわらず圧倒される迫力だし、第3幕のアンフェール門の雪のシーンは音楽が演奏されている間でもシーンとした静かさを感じさせてすばらしい。
 主演のミミ役のアンジェラ・ゲオルギュウは、もともとルーマニアでミミを歌って見出された(とどこかで聞いた)。その後、サー・ゲオルグ・ショルティが1994年にコヴェントガーデンで「椿姫」の新プロダクションに彼女を抜擢して大成功を収め、スターダムにのし上がったのは周知である。


主演のアンジェラ・ゲオルギュウさん

 震えるような独特のヴィブラートとかげりのある美貌、そして舞台女優のような演技力が悲劇のヒロインにピッタリ。「椿姫」も「ラ・ボエーム」もこの人の死ぬシーンはあまりにもリアルである。少々お年を召してしまわれたが、久しぶりに健在ぶりを拝見した。2005年に来日した際のコンサート以来である。
 ロドルフォ役のラモン・ヴァルガスは、体格の割にはやや声が細く、ちょっと物足りなさを感じないでもないが、この役ではそれほど声を張り上げなくても十分に泣かせることができるから、誠実そうな人柄がにじみ出てなかなか良かった。
 ムゼッタ役のアインホア・アルテタといソプラノさんは初めて聴いた。一所懸命やっているなァという感じで好感が持てた。
 マルチェッロ役のリュドヴィク・テジエはこの役は十八番のようで、手堅い。安心して見ていられる。
 一方、演奏の方だが、若い指揮者のニコラ・ルイゾッティががんばっていた。さすがにイタリア人っぽく、各国生まれの歌手たちをうまくイタリアっぽく歌わせている。指揮者がガンガン引っ張るのではなく、歌手たちの歌に合わせてうまく伴奏している。サントリーホールで毎年開催されているホールオペラの指揮で日本でもお馴染みの人で、ニコニコしながら楽しく元気に(ラ・ボエームでは悲しげに)音楽を創っていく魅力的な指揮者である。

 「ラ・ボエーム」は最も好きなオペラのひとつで、見るたびに涙をそそるのだが、来年(2010年)には、7月のトリノ王立歌劇場の来日公演で「ラ・ボエーム」が上演され、ミミをバルバラ・フリットリが歌う。トリノ王立歌劇場は「ラ・ボエーム」が初演された劇場である。そして、9月には英国ロイヤル・オペラ(要するにコヴェントガーデン)の来日公演でアンジェラ・ゲオルギュウが「椿姫」のヴィオレッタを本家のリチャード・エアの演出で歌うことになっている。偶然とはいえ、2010年の二つのイベントと今日のゲオルギュウの「ラ・ボエーム」との関連を考えると、またまた楽しみ(悲しみ)が増えてしまった。
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