Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

11/15(水)おいしいクラシック/調布/川久保賜紀と三浦友理枝のデュオが奏でる優雅で洒落たベートーヴェンとクライスラー等

2017年11月15日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
ウィークデーマチネコンサート《おいしいクラシック》Vol.3
~ベートーヴェンとウィーン風オムレツ~


2017年11月15日(水)13:30〜 調布市文化会館たづくり・くすのきホール 指定席 A列 12番 2,520円(会員割引)
ヴァイオリン:川久保賜紀
ピアノ:三浦友理枝
ナビゲーター:浦久俊彦
【曲目】
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第5番 ヘ長調 作品24「春」
ベートーヴェン:ピアノのためのロンド ハ長調 作品51-1(ビアノ・ソロ)
ベートーヴェン:ヴァイオリンのためのロマンス ヘ長調 作品50
クライスラー:シンコペーション
クライスラー:愛の喜び
ブラームス:ハンガリー舞曲 第5番
《アンコール》
 クライスラー:ベートーヴェンの主題によるロンディーノ

 調布市文化・コミュニティ振興財団が主催する企画コンサートで、「ウィークデーマチネコンサート《おいしいクラシック3》」は、「ベートーヴェンとウィーン風オムレツ」というサブタイトルにあるように、ベートーヴェンの時代の「食」を巡る話題を紹介するトーク・イベントと、関連する楽曲をヴァイオリンの川久保賜紀さんとピアノの三浦友理枝さんのデュオによる演奏会とを合体させたイベントである。《おいしいクラシック》は今回が3回目ということだ。進行役は、作家で文化芸術プロデューサーの浦久俊彦さんが務める。また、会場である「調布市文化会館たづくり」および隣の「グリーンホール」内にあるレストランなどで、関連するウィーンの料理が特別メニューとして楽しめるという多角的なイベントにもなっている。

 コンサート・イベントはおよそ休憩なしの90分間。上記のプログラムを見ればある程度分かると思うが、演奏時間はコンサートの半分くらいで、残りの時間はトーク・ショーである。演奏とトークが交互に行われた。浦久のトークが中心だが、賜紀さんや友理枝さんも加わって、ステージ上でなごやかな雰囲気で進められた。ベートーヴェンの時代は卵が鮮度を保てずに高価なものだったので・・・・というような蘊蓄話であったが、その詳細は割愛させていただくとして。


 1曲目はベートーヴェンの「ヴァイオリン・ソナタ 第5番 ヘ長調 作品24『春』」。曲が始まってふと感じたことがある。このホールは音響は決して良いとはいえない。音がどこかに拡散してしまうイメージで、最前列の目の前で聴いているのに、いつものような音のエネルギーが感じられないのである。その代わりに、賜紀さんのヴァイオリンの音が、何時にも増して澄んでいて美しく感じられた。「春」は出だしの部分で、遠くの方から風が草原を渡って吹いてくるような、遠くの方から聞こえて来るような情感溢れる表現は賜紀さんならではのものだが、その音がとても美しいと感じたものである。後で彼女にそのことを伝えたら、弓が変わったからかな? とのことだったが・・・・。
 賜紀さんと友理枝さんのコンビネーションは抜群で、さすがにこの曲を数十回は演奏しているだけのことはある。賜紀さんの演奏はその豊かな表現のためにかなり自由度の高い解釈で、旋律を大きく歌わせたり情感たっぷりにテンポが揺らぐ。そんなヴァイオリンに寄り添うようにピアノが紡がれていく。ピアノの音もとても澄んでいて美しい。

 2曲目は友理枝さんのピアノ・ソロで、ベートーヴェンの「ピアノのためのロンド ハ長調 作品51-1」。優しく穏やかな曲想の可愛らしいロンドである。今日はベートーヴェンの優しさが感じられる曲を選んでいるようだ。友理枝さんのピアノは、音がとても澄んでいて、透明感に溢れている。ベートーヴェンなどのドイツ系の音楽にありがちな、渋めの音ではない。それがかえって、ベートーヴェンの純真な心情をうまく描き出していて、聴く者を穏やかな気持ちにさせてくれる素敵な演奏であった。

 3曲目はベートーヴェンの「ヴァイオリンのためのロマンス ヘ長調 作品50」。元はヴァイオリンとオーケストラのための曲なので、ピアノ伴奏だとピアノだけの部分(本来ならオーケストラの部分)が量感が足りなくてちょっと惜しく思うが、賜紀さんの「ロマンス」はあまり記憶にないので、聴くことができただけでもうれしかった。究極の美音で奏でられる、優しくエレガントな主題・・・・乙女の憧れが控え目に歌われていくようなイメージだろうか。ひたすらロマンティックである。

 続いては、クライスラーの「シンコペーション」。「ウィーン風のオムレツ」というテーマから、ウィーン風のヴァイオリン曲といったらこの人が一番というクライスラーの登場である。軽妙で洒脱な曲である。賜紀さんのヴァイオリンの音の向こう側から、クライスラーの悪戯っぽい笑顔が浮かんでくる。

 さらに1曲追加されたプログラムは、あえて曲名を告げなかったが、誰でも知っているクライスラーの「愛の喜び」。賜紀さんの自由度の高い演奏は、主部よりもむしろ中間部がとても素敵だ。まさにそれはウィンナ・ワルツのようで、優雅で小粋な、流れるようなリズム感。この曲はヴァイオリニストなら誰でも弾くが、これほどまでにウィーンを感じさせる演奏を聴かせてくれる人を他には知らない。

 最後はブラームスの「ハンガリー舞曲 第5番」。これも誰でも知っている名曲だが、ゆっくりとしたテンポで始まったかと思うしグングン加速していく。中間部に入るとまたグッとテンポを落として・・・・。オーケストラ版だったらコバケンさんが得意としているような手法だが、賜紀さんがやると土俗的な雰囲気がなくなってエレガントになるから面白い。

 アンコールは、本日のテーマにしたがって、ベートーヴェンとクライスラーのコラボレーションともいえる曲。クライスラーの「ベートーヴェンの主題によるロンディーノ」である。これも主題がベートーヴェンとは思えないほど、優雅で洒落た曲である。さすがはクライスラーというところだ。賜紀さんの演奏はまさにツボを心得ているといった感じで、主題を優雅に歌わせ、中間部でわずかな翳りを見せる。旋律を歌わせる表現力は、どこまでも自然体なのに、楽曲の中から豊かな音楽を引き出してくる。若手の演奏家たちに、是非とも参考にして欲しいと思う、表現力の素晴らしさである。

 終演後は恒例のサイン会があった。賜紀さんと友理枝さんに加えて、ナビゲーターを務めた浦久さんも著書が用意されていて、人数はそれほど多くはなかったけれども、ファンとの交流にゆったりとした時が流れる素敵な時間帯であった。
 この後、賜紀さんのスケジュールは、12月19日に東京オペラシティ・リサイタルホールで開催される「B→C[197]小林沙羅 ソプラノ・リサイタル」にゲスト出演が予定されているくらいだが(この公演は完売らしい)、来年2018年は協奏曲のイベントが多く予定されていて、私も久し振りなのでとても楽しみにしている。



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