Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

5/30(水)読響シンフォニックライブ公開録画/久石譲の「Synfonia」とショスタコーヴィチ交響曲第5番

2012年05月31日 01時12分36秒 | クラシックコンサート
読響シンフォニックライブ公開録画(7月18日放送分)

2012年5月30日(水)19:00~ 東京オペラシティコンサートホール 1階 27列 26番(無料)
指 揮: 久石 譲
管弦楽: 読売日本交響楽団
【曲目】
ドビュッシー: 牧神の午後への前奏曲
久石 譲: シンフォニア ~弦楽オーケストラのための~
    1.Pulsation 2.Fugue 3.Divertimento
ショスタコーヴィチ: 交響曲 第5番 ニ短調 作品47

 日本テレビ系列の「深夜の音楽会」が今年度より「読響シンフォニックライブ」と番組名を変えてのリニューアルした。今日はその7月放送分の公開録画である。いつも不思議に思うのだが、スポンサーの付くテレビ番組制作のためには、1600席の東京オペラシティコンサートホールが(テレビに映る部分だけ)満席になる。それは見事なくらいの満席で、普段はあまり売れない隅っこの方の席までビッシリと客が入ったホールは壮観だ。視聴者(?)への無料招待であるから抽選で外れる人も多いと聞くが、もちろん有料の定期シリーズのチラシを配布していたのが…ちょっと侘びしい。

 作曲家として著名な久石譲さんであるが、ご承知のように最近は指揮者としての活動も活発だ。ところが読売日本交響楽団との協演は初めてなのだそうだ。今日はご自身の作曲による曲も指揮されるので、プレトークでも楽曲の解説があった。
 1曲目は「牧神の午後への前奏曲」。現在、3つの定期シリーズの会員になっているので一番聴く機会の多い読響なので、まああまり感激するということもなく…。しかもこの曲は、1ヵ月半ほど前の2012年4月に、同じ東京オペラシティコンサートホールでシルヴァン・カンブルランさんの指揮で聴いたばかり。その時の絵画的な色彩感溢れる演奏と比べると、今日の演奏は、…まあ、普通というところだ。ちょっと意外だったのは、最後列に近い27列で聴いていたのに、オーケストラの音がとても澄んでいて、各楽器の分離が明瞭だったこと。17列で聴いた時の方が音が混然として濁った感じに聞こえたような気がする。ステージの上に浮かぶ天上代わりの反響板の効果なのだろうか。概ね評判の良いオペラシティでも、席の場所によっては微妙に音響が違うようである。いつもステージ間近で聴いている私にとっては、「思ったより、かなり良い音」であった。

 2曲目は久石譲さんの「シンフォニア」(2009年)。サブタイトルに「弦楽オーケストラのための」とあり、英文では「Synfonia for Chamber Orchestra」となっていた。今日の演奏は、弦楽のみならず、管楽器などを加えて編成を大きくしたものに書き直した版である。
 久石さんといえば、『風の谷のナウシカ』を初めとする宮崎駿監督のアニメ映画の音楽や、最近ではNHKのスペシャルドラマ『坂の上の雲』の主題歌「Stand Alone」(サラ・ブライトマンさんや森麻季さんが歌った)などが話題になった。その一方で、国立音楽大学在学中よりミニマル・ミュージックに関心を持ち、いわば純音楽の分野での作品を発表している。今日の「Synfonia」は、そのミニマル・ミュージックの作品である。
 なるほど、ミニマルといわれるだけあって、3つの楽章を通じて、短い単純な「動機」のようなものが繰り返されて曲が構成されている。解説文によると、第1楽章・第2楽章は動機のハーモニーが5度ずつ上がって行きすべての調で演奏されるのだという。理論的に構築された音楽なのである。…正直なところ、聴いていてもあまり面白くは感じられなかった。これは作品がつまらないという意味ではなくて、聴く側がもっと音楽理論に精通していないと、理論武装された現代音楽は聴く側の感性だけでは消化しきれないということだ。現代音楽は決して嫌いではないのだが、解りにくいことも確かで、一般に人気が出ないのも仕方のないことかもしれない。

 後半は、ショスタコーヴィチの交響曲第5番。この曲は読響では昨年2011年7月の「サントリー名曲シリーズ」でワシリー・シナイスキーさんの指揮で聴いている。なんだかこうして振り返ってみると、この1年以内に演奏会で採り上げた曲ばかりなので、どうしても新鮮味には欠けてしまうことになろう。
 全体の印象としては、ややメリハリに乏しく、各楽章ともフラットに感じられた。馬力のある読響サウンドというよりは、かなり抑制されていて、ある意味冷静なアプローチというふうにも採れる。ダイナミックレンジが広くなく感じられたのは、27列目という席までの距離感が原因なのかと思っていたら、第4楽章では随所に力感溢れる読響サウンドが炸裂した。そうなると、楔形の天上は高いが幅が狭いシューボックス型のオペラシティでは、音が怒濤のごとく押し寄せてくるイメージ。会場全体が爆発的な音量で満たされていた。トロンボーンとチューバなどの金管の低音の迫力と、キリキリと刻むヴァイオリンのヒステリックな響きが鮮やかな対比になっていて、聴くものを決して癒してくれないショスタコーヴィチらしさを感じた。とはいえ、久石さんの音楽作りは、ある意味ではスタンダードで、スコアの再現という点では、バランスの良いオーケストラ・ドライブでしっかりとした構造感も描き出していた。読響の方も精緻で透明な弦楽アンサンブル、強すぎない金管、木管の中ではクラリネットが存在感を出していたり、と、密度の高い演奏をしていた。ただ惜しむらくは、国家や社会体制に抑圧されたショスタコーヴィチの情念、あるいは第4楽章の長調に転じた「歓喜(?)」に隠れた闇の部分など、スコアの裏側にある「生々しさ」のようなものをあまり感じさせてはくれなかった。

 まあ、今日はタダのコンサートなので、何も文句を言う筋合いではない。2時間のコンサートを楽しませていただいたことに感謝したい。

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5/27(日)舘野 泉ピアノ・リサイタル/千葉/豊かな音楽性が感動を呼ぶ左手のピアニスト

2012年05月28日 01時29分08秒 | クラシックコンサート
千葉県文化会館/プレミアム・クラシック・シリーズVol.13/舘野 泉 ピアノ・リサイタル

2012年5月27日(日)14:00~ 千葉県文化会館・大ホール  指定 1階 1列 26番 3,500円
ピアノ: 舘野 泉
ピアノ: 平原あゆみ*
【曲目】
J.S.バッハ/ブラームス編: シャコンヌ ニ短調 BWV1004より
スクリャービン: 左手のための小品 前奏曲と夜想曲 作品9
吉松 隆: タピオラ幻景 作品92(舘野 泉に捧げる)
      1.光のヴィネット 2.森のジーグ 3.水のパヴァーヌ
      4.鳥たちのコンマ 5.風野トッカータ
エスカンデ: 「音の描写」~三手連弾曲~*
      1.爬虫類 2.夢 3.砂に埋もれた犬 4.青の空
      (舘野 泉と平原あゆみに捧げる/舘野 泉「左手の文庫」助成作品)
吉松 隆: 紀行三景(NHK大河ドラマ『平清盛』より)
      1.遊びをせんとや 2.友愛 3.夢詠み
coba: 記憶樹(舘野 泉に捧げる/舘野 泉「左手の文庫」助成作品)
      1.深遠な予感 2.果敢な叫びを上げよ 3.嘆きと自負 4.宿命 5.回廊
      6.バルカロール 7.信頼 8.果敢な叫びを上げよ BIS 9.カオス 10.根源的な回想
《アンコール》
 吉松 隆: 三手連弾「4つ小さな夢の歌」から「秋」*
 カッチーニ/吉松 隆編: アヴェ・マリア

 千葉県文化振興財団が主催するプレミアム・クラシック・シリーズ。2012/2013年シリーズの第1回は、舘野 泉さんのピアノ・リサイタルである。舘野さんは1936年生まれというから、もう76歳になる。その年齢で第一線のピアニストとして演奏活動を行っているだけでも立派なのに、ご承知のように10年前に脳出血を患い、右半身が今でも不自由なのに、「左手のピアニスト」として現在も活躍されている。そして暖かみのある豊かな音楽性でしっとりとした感動を呼ぶ素晴らしいピアニストである。
 舘野さんは、今月、2012年5月から、「舘野 泉フェスティバル~左手の音楽祭 2012-2013」というコンサート・シリーズを開始し、2年間で7回のコンサートを開く他、多くのコンサート企画が予定されている。とはいえ左手のためのピアノ作品が極めて少ないのも事実。そこで新しい作品を委嘱して作曲してもらうための基金「舘野 泉 左手の文庫」を設立、募金中とのことだ。私も今日些少ながら募金に応じて来た。

 さて、演奏会の方は、上記の曲目を見ていただければ分かっていただけると思うが、当然のごとく初めて聴く曲が多く、あまりコメントできる立場でもないので、多くを語ることは止めておこう。

 バッハ/ブラームス編の「シャコンヌ」は有名な無伴奏ヴァイオリンの曲を左手ピアノ用にブラームスが編曲したもの。また、スクリャービンの「左手のための小品」は、若い頃の作品でロマン派的な要素の強い曲だ。その他の曲は、ほとんどが舘野さんのために書かれた曲で、現代音楽の範疇に入る曲だ。また、NHK大河ドラマ『平清盛』のテーマ音楽として書かれた吉松隆さんの「紀行三景」はテレビでお馴染みの曲だが、左手ピアノ用の編曲ヴァージョンとしては、コンサートで弾くのは今日が初めてだとのこと。というわけで、曲目については、すべて初めて聴く曲ないし編曲ということになった。

 舘野さんの演奏は、確かに音楽として完全に成り立っていて、左手だけで演奏されているということは聴いていても特に意識されることではない。ごく自然に、違和感もなく、いわば普通に演奏されているように聞こえる。舘野さんのために書かれた曲は、その卓越した技量に沿った構成になっているのだろう。複数の声部が一体となって、低音部と中音部の和声の上に載る主旋律などが明瞭に描かれていて、どの曲も完成度が高いばかりか、演奏自体も非常に見事なものであった。
 片手故に音量的には不足がちになってしまうが、それがかえって全体をまろやかな音色で包む働きをしている。ギスギスした所が一切なく、暖かみのある音色で、音楽への喜びや尊崇の念が伝わっている、素敵な演奏であった。

 ところで今日のリサイタルは、お弟子さんの平原あゆみさんとの三手連弾を含めて、2時間15分に及ぶ非常に充実した内容であった。さすがにこれだけ演奏したらお疲れになるだろうが、最後まで微笑みを絶やさず、素敵な演奏に終始した。とても内容の濃い演奏会だったといえる。

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5/26(土)東京シティ・フィル/ティアラこうとう定期/宮本文昭と小林美樹のブルッフVn協奏曲と「新世界より」

2012年05月27日 02時57分42秒 | クラシックコンサート
東京シティ・フルハーモニック管弦楽団 第29回ティアラこうとう定期演奏会

2012年5月26日(土)15:00~ ティアラこうとう・大ホール S席 1階 D列 21番 3,500円(実質2列目)
指 揮: 宮本文昭
ヴァイオリン: 小林美樹
管弦楽: 東京シティ・フルハーモニック管弦楽団
【曲目】
ウェーバー: 歌劇『オイリアンテ』序曲 作品81
ブルッフ: ヴァイオリン協奏曲 第1番 ト短調 作品26
ドヴォルザーク: 交響曲 第9番 ホ短調 作品95「新世界より」

 今日は、東京シティ・フルハーモニック管弦楽団の「ティアラこうとう定期演奏会」に足を運んだ。これまで、東京シティ・フィルを聴く機会はそれほど多くなかった、というよりは積極的に聴きに行ったことはほとんどなかった。ところが、今年2012年2月、「都民芸術フェスティバル」のオーケストラ・シリーズで、宮本文昭さんの指揮するのを聴いて、失礼ながら想像していたより遥かにエキサイティングな演奏に感銘を受けたものである。その後4月にこのオーケストラの音楽監督に就任するということだったので、早速に今日のコンサートのチケットを確保したという経緯があった。もう一つは、ヴァイオリン界に詳しい友人のKさんが今一番お勧めのヴァイオリニストとして小林美樹さんの名を挙げていたこともあり、彼女の演奏も是非聴いてみたかったので、いつものように前の方の席を取った次第である。

 1曲目はウェーバーの『オイリアンテ』序曲。これはあまり聴く機会のない曲だ。全編が軽快な曲想のためか、オーケストラの音量が思ったより小さめに感じられた。いかにもロマン派のオペラらしい曲なので、もう少しダイナミックに、ワクワク感を出して欲しかったところだ。とはいえ、第2主題(?)のヴァイオリンの等は繊細で透明感があったし、アンサンブルも緻密で、洒落た演奏だと思った。このホールの音響のせいだと思うが、2列目で聴いている割には、各楽器の音の分離が良くなく、全体にモワーっと音が混ざっている感じ。とくに管楽器群が抑え気味に演奏されていたので、余計にそう感じられたのかもしれない。

 2曲目はブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番。大好きな曲のひとつだ。ソリストの小林美樹さんの演奏を聴くのは初めてだったので、期待が高まる。初めて見る小林さんは、比較的大柄な女性で、白っぽいドレスで登場。入念に調弦しているのが好ましい。
 短い序奏ですぐにソロ・ヴァイオリンが入ってくる。初めの印象は、よく音が出ている、楽器が鳴っている、だった。この曲は若い奏者が勢いで弾くくらいの方が躍動的で良いと思うのだが、小林さんの演奏はまさにそんな感じだ。ためらいがなく、ストレートで、しかも明快である。低音部から高音部まで、音に濁りがなく、音程も正確。早い装飾的なパッセージも難なくこなす。音色には、溌剌とした若さが感じられ、明るく伸びやかである。
 さらに特筆すべきは、とてもキレ味の鋭い演奏だったことだ。アクセントが前の方にある感じの立ち上がりの鋭い音で、音楽をクッキリと描いて行く。その辺りも若さに満ちているといえばその通りなのだが、やはり彼女の特性とみるべきだろう。なかなか魅力的な演奏である。少なくとも、ブルッフにはピッタリだ。
 第2楽章の抒情的な旋律に対しては、ppの繊細な歌わせ方からも非凡にものを感じさせる。また音に濁りのない低音部の豊かな響きも、ロマンティックな曲想を描くのに適している。
 第3楽章になると、さらにリズム感の良さが加わってきて、どちらかというと、オーケストラを引っ張っていく感じ。これも突っ込みの鋭い演奏がそう感じさせたのだろう。オーケストラとの掛け合いのリズム感も見事で、丁々発止のやり取りがスリリングであった。コーダに入ってからのテンポアップとフィニッシュまでの高揚感は、この曲の協奏曲としての魅力を十二分に発揮できていたと思う。小林さん名Brava!!を贈ろう。
 一方で、宮本さんのオーケストラ・ドライブも素晴らしかった。『オイリアンテ』序曲とは打って変わって、メリハリがはっきりして、テンポ感にも推進力がある。第1楽章はやや遅めのテンポで始まったのに徐々にテンポが速くなっていく。第3楽章では、むしろやや早めのテンポで、怒濤のように突き進んで行った。ソロ・ヴァイオリンとの「対話」が徐々にヒートアップして行き、フィニッシュに向けては先を争ってゴールに駆け込むようなエキサイティングな演奏を聴かせた。けっこう大音量でオーケストラを鳴らしていたのに、要所をうまく押さえ込んでソロ・ヴァイオリンを際立たせていて、全体としてはダイナミックな演奏になっていた。宮本さんもBravo!!

 後半は「新世界から」。あまりにも名曲過ぎて新鮮味には欠けてしまうが、やはり今日のメイン曲ということで、演奏自体はかなり力の入ったものになった。前半の2曲とは、音の出方が違う。本気モードの演奏ということだろう。宮本さんの今年度のテーマが「完全燃焼」ということであり、まさにそれを体現したといえそうだ。テンポの設定も、全体に躍動感を強く感じさせるやや早め。勢いのある流れの中で、個々の主題をしっかりと歌わせるのは、ご自身がオーボエ奏者だったことも影響していよう。ダイナミックレンジを広く取り、全合奏のffではパワーを爆発させるが、弦楽器が必死になって管楽器に負けないように音を絞り出している。結果的にはバランス良く、オーケストラがひとつにまとまっていた。
 聴かせ所のひとつである第2楽章のコールアングレも、ほどよく牧歌的な音色で細やかなニュアンスが郷愁を誘う。この辺りは宮本さんの指導がうまく成果を上げているようだ。一方金管群も、ご愛敬程度に不安定な箇所もあったが、すべて許容範囲内としよう。トランペットの華やかな音色、トロンボーンの馬力のある音、ホルンもまろやかな音を出していて、概ね良好、といったところだ。弦楽は、ヴァイオリンがとくに澄んだ音色でアンサンブルもしっかりしていて安定感があった。一方、ヴィオラが弱く感じられたのが残念だった。ただでさえ音が奥に向かって出てしまうヴィオラに対して、ホールの音響が足を引っ張っていたのではないかと思われる。
 演奏全体は、迫力もあったし、ダイナミックでもあり、オーケストラの魅力を発揮していたと思う。宮本さんの「完全燃焼」する熱意が、素晴らしい演奏を引き出していたのだろう。演奏後のカーテンコールの様子を見ても、指揮者とオーケストラの関係は良好なスタートとなったようで、メンバーの皆さんも達成感のある表情だった(同じ錦糸町に本拠地のあるもうひとつのオーケストラで先日感じた失望とは大違いだ)

 全曲が終わった後、宮本さんの挨拶があった。オーケストラ運営の窮状を語り、ぜひ多くの人にコンサートに足を運んで欲しいとのことだ。今日のような素晴らしい演奏を聴かせていただいた後だけに、できることなら定期会員にもなりたいところではあるが、何しろ他のいくつかのオーケストラやオペラの団体などからも同じような呼びかけをもらっていて…コチラもいっぱいいっぱいな状況だ。現在私は5つのオーケストラの7つのシリーズの定期会員になっているのだが、それだけでもコンサートの日程がけっこう重なってしまい、どうにも動きが取れなくなってしまっている。とはいえ、東京シティ・フィルもこれからもっと聴きたいオーケストラになった。このブログをお読み下さっている方も、東京シティ・フィルを聴きに行きましょう! きっと素敵な音楽を聴かせてくれると思いますよ!!

 さてそれとは別に、終演後は恒例のサイン会。もちろん小林美樹さんである。演奏が終わって1時間も経っているのに着替えもせずにステージ・ドレスのまま登場し、サイン会が始まった。彼女のCDはショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番とプロコフィエフのヴァイオリン・ソナタ第2番を収録したもので2011年11月のリリース。協奏曲の共演はもちろん東京シティ・フィルで、指揮は飯守泰次郎さんである。実はこのCD、かなり以前に既に購入済みで何度も聴いていたのだが、今日は持って行かなかったので、サイン欲しさに会場でもう1枚購入してしまった…。いい年をしてこういうミーハーなところは抜けないが、それでも演奏家の皆さんのお役に立てれば…という思いもあるのだ…。まあ、もう1枚の方には次の機会にでも…。

 最後に。東京シティ・フィルの「ティアラこうとう定期演奏会」では、開演前にホールの2階ロビーでプレ・コンサートが開かれる。これは間近でナマ演奏が聴けるので、間に合うように会場入りした次第。曲目と演奏者は以下の通り。
 【1曲目】G.ボッテジーニ: 2台のコントラバスのためのグランデュエット第1番より第1楽章
   1stコントラバス: 蓮池 仁 2ndコントラバス: 瀬野 恒 
 【2曲目】椎名林檎/松原幸広編: カーネーション(NHK/朝の連続テレビ小説のテーマ曲)
   1stヴァイオリン: 高木 聡 2ndヴァイオリン: 吉田 巧 チェロ: 薄井信介
 コンサートの本番前の緊張する一時に、このようなプレ・コンサートを開いていただけるのも、私たち聴衆にとっては嬉しい企画である。手の届きそうな距離で聴くがっきの音色には、また格別の良さがあるものだ。

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5/25(土)ウィーン・フォルクスオーパー日本公演『メリー・ウィドウ』/笑いと喝采に包まれ…

2012年05月26日 03時15分30秒 | 劇場でオペラ鑑賞
ウィーン・フォルクスオーパー 日本公演 2012
3幕のオペレッタ『メリー・ウィドウ』レハール作曲
VOLKSOPER WIEN in Japan 2012 / Die lustige Witwe


2012年5月25日(金)18:30~ 東京文化会館・大ホール E席 5階 R1列 18番 13,000円
指 揮: エンリコ・ドヴィコ
管弦楽: ウィーン・フォルクスオーパー管弦楽団
合 唱: ウィーン・フォルクスオーパー合唱団
バレエ: ウィーン国立バレエ団
演出・美術: マルコ・アルトゥーロ・マレッリ
演出補: エンリコ・デ・フェオ
衣 装: ダグマール・ニーフィント
振 付: レナート・ザネッラ
合唱指揮: トーマス・ベトヒャー
【出演】
ミルコ・ツェータ: アンドレアス・ダウム(バス)
ヴァラシエンヌ: マルティナ・ドラーク(ソプラノ)
ハンナ・グラヴァリ: アレクサンドラ・ラインプレヒト(ソプラノ)
ダニロ・ダニロヴィッチ: マルコ・ディ・サピア(バリトン)
カミーユ・ド・ロション: ヴィンセント・シルマッハー(テノール)
カスカーダ子爵: ミヒャエル・ハヴリチェク(バリトン)
ラウル・ド・サン・ブリオッュ: ロマン・マルティン(テノール)
ボグダノヴィッチ: ヨアヒム・モーザー(テノール)
シルヴィアーヌ: リディア・ペスキ(ソプラノ)
クロモウ: マルティン・ヴィンクラー(バス・バリトン)
オルガ: ベアーテ・リッター(ソプラノ)
プリチッチ: ハインツ・フィツカ(バス)
プラスコヴィア: スーリエ・ジラルディ(メゾ・ソプラノ)
ニェーグシュ: ロベルト・マイヤー(俳優/ウィーン・フォルクスオーパー監督)

 5月12日に続いてウィーン・フォルクス・オーパーの来日公演で、今日は『メリー・ウィドウ』を観る。今回の来日公演では、ヨハン・シュトラウスIIの『こうもり』が4回、ニコライの『ウィンザーの陽気な女房たち』が3回、そしてレハールの『メリー・ウィドウ』が4回、合わせて11公演が組まれていて、リハーサルや休暇を含めれば、かなりの長期滞在になる。海外から来るアーティストやスタッフの皆さんとしては、いまの日本に長くは居たくないのはわかるような気がする。これも風評被害(?)。確かに今年はオペラの引っ越し公演が少ない。昨年は震災の後、来てくれた劇場、キャンセルになった劇場、と各国、各団体の温度差が見られたが、今年は震災後に新たな契約がなされないらしく、かなり早い段階から決まっていた、ウィーン・フォルクス・オーパーとウィーン国立歌劇場以外には、大物歌劇場の引っ越し公演がないのが、ファンとしては非常に残念である。というわけで、今年は国内団体のものも含めて、オペラを観る回数が少なくなりそうだ。今日は、その数少ない公演のひとつ。『メリー・ウイドウ』は大好きなオペレッタなので、東京で公演がある時は、できれば見に行きたい演目のひとつ。およそ人間の精神において、負の要素をまったく持たない、バカバカしいくらい楽しい作品だ。だから、この演目の時は、素直に楽しめば良い。誰の歌が上手かったの、誰の声が出ていなかったの、演出がどうの、衣装がどうの、と批評家めいた視点で観賞するのはナンセンスの極み。理屈抜きで楽しんだ方が、良いに決まっている。

 今回持ち込まれたのは、マルコ・アルトゥーロ・マレッリさんによる新演出(2011年5月初演)。とくに舞台装置・美術面のセンスが良く、いかにも現代的な洗練されたもので、女性たちの美しい衣装とともに、華やかな舞台を作っていた。大道具などの舞台装置は、3幕を通しての使い回しであるにもかかわらず、安っぽく見せないところが心憎い。20世紀初頭のパリが物語の舞台となっているはずだが、そのようにリアルな物語性は描き出さずに、ある意味で抽象化された構造物と、逆にリアルに時代っぽさを出した衣装とのマッチングが洗練されていて、実に現代的なオペレッタを作り上げていた。また主人公たちによる物語の展開とは直接関係しない舞踏シーンなども、ウィーン国立バレエ団の皆さんの優雅な動きがとても素敵で、一糸乱れぬ踊り…ではなかったのするところが、いかにもオペレッタ的で楽しい。こういうところのクオリティの高さ、遊び心の素直な表現が見事で、観ていると自然に頬が緩んでくる。おそらくはキチンと計算されている演出と、出演者たちの豊富な経験がうまく噛み合っているのだろう。観ているだけで楽しいし、何度観たかわからないような『メリー・ウィドウ』でも、初めて観るような楽しさがいっぱいの演出だ。
 ついでだが、今日の公演では、3幕のオペレッタを第1幕・第2幕を続けて上演し、第2幕の真ん中、男性歌手陣が歌う「女・女・女のマーチ」の後で休憩が入った(つまり休憩1回)。当然休憩後は突然、タイムラグのない場面、女性歌手陣が歌う「男・男・男のマーチ」(?)から始まる。これも舞台装置を3幕を通して使い回しているから可能なことになっている。

 音楽面もまた素晴らしい。エンリコ・ドヴィコさんの指揮は、全体的には軽快なテンポを保ち、イケイケの感じが楽しさを煽る。もともとが台詞部分が多いだけに、音楽が鳴った時にはキビキビと快調な演奏。それがウィーン風の優雅な音色で飛び出してくるから、もうたまらない。ところどころのポイントでは、テンポをグッと落としてから徐々に上げて行き、盛り上げ方も堂に入っている。こういうのを名曲というのだろうか…。この『メリー・ウィドウ』に出てくる曲は、どれも解りやすく親しみやすい。それが色々な場面で繰り返し使われているから、一度観た聴だけですべての曲を覚えてしまえるほどだ。だから音楽的には曲がアタマにこびりついているだけに、軽快なテンポ感が求められるのだろう。
 またオーケストラがとても良かった。ヴァイオリンのソロが甘~い音色で歌ったり、ホルンが何気なく上手かったりと、ごく自然で、まったく違和感なく演奏されていたのがことのほか素晴らしい。技術的に上手いという感じなのではなく、アンサンブルが多少乱れようともビクともしない、日常的な落ち着き。さすがにこの味わいは、他のどんな一流の劇場でも出ないに違いない。ウィーン・フォルクスオーパー管弦楽団ならではのものだ。


ハンナ(左)とダニロ。酔っぱらって寝ぼけているダニロだが、脚を触っただけてハンナだとわかる、お馴染みのシーン(公演プログラムから)。

 歌手陣はといえば、恐らく皆さん劇場との専属契約を結んでいる方々で、オーストリアとドイツを中心にヨーロッパ各国の出身だが、平均的な上手さを持っているといった印象だ。その辺りもいかにもオペレッタ的であり、スター歌手が技量を競い合うのではなく(もちろんそれも魅力のひとつではあるが)、専属歌手同士の和気藹々とした雰囲気が伝わってくる。会話のスピード感とか、演技のタイミングとか、合唱の音量とか、すべてがうまく回っている感じだ。出演者それぞれの歌唱も、誰かが群を抜いていることもなく、平均的に、皆さん普通に上手い。この普通に上手いというのが、意外にあまりお目にかかれないことなのだ。おそらくウィーンでの感覚は、「○○さんが出るから観に行こう」という発想ではなく、「『メリー・ウィドウ』を演っているから観に行こう」という感覚で、いつ行っても平均以上のものを聴かせてくれる、そんな劇場なのだと思う。

 また『こうもり』にも出演していた劇場の監督、ロベルト・マイヤーさんが歌わないニェーグシュ役で、ほぼ出ずっぱり。このトボケた役を監督自身が「ロロ、ドド、シュシュ~」と歌まで交えて、大いに楽しませてくれた。終演後のカーテンコールの時にはステージから抜け出し、ちゃっかりピットの指揮台にのぼって、最後の部分のアンコールを指揮するというお馴染みの(?)場面も拍手大喝采である。


中央がロベルト・マイヤー監督(公演プログラムより)。

 やはり今日の『メリー・ウィドウ』も、期待していた通りの上質な上演で、大満足であった。『こうもり』と『メリー・ウィドウ』は日本でもしばしば上演される2大オペレッタだが、今回、ウィーン・フォルクスオーパーの来日公演でこの2演目を一度に楽しむことができたのは嬉しい限りだ。最近少々財政難のため、両方とも5階席での観賞となってしまったが、ドタバタ喜劇のオペレッタとはいっても、クオリティの高い上演に、あらためて本場物の素晴らしさを見せていただいたという思いである。遠い席からでは、出演者たちの表情までは読み取ることはできなかったが、(本当は一所懸命やっているのだとは思うが)楽しみながら歌って踊って演じている雰囲気が観ている私たちにも伝わって来て、帰り道は皆が笑顔…。とても素敵な週末であった。

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5/19(土)読響第144回オペラシティ・マチネー/ロマノフスキーが弾くラフマニノフP協奏曲2番

2012年05月21日 02時26分54秒 | クラシックコンサート
読売日本交響楽団 第144回オペラシティ・マチネーシリーズ

2012年5月19日(土)14:00~ 東京オペラシティコンサートホール S席 1階 3列 19番 4,400円(会員割引)
指 揮: 篠崎靖男
ピアノ: アレクサンダー・ロマノフスキー*
管弦楽: 読売日本交響楽団
【曲目】
ラフマニノフ: ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 作品18*
《アンコール》
 ショパン: ノクターン 嬰ハ短調(遺作)*
 スクリャービン: 練習曲 作品8-12*
ブラームス: 交響曲 第2番 ニ長調 作品73

 読売日本交響楽団の第144回オペラシティ・マチネーシリーズを聴く。偶然は重なるもので、昨日の日本フィルの定期では上原彩子さん弾くラフマニノフのピアノ協奏曲第3番を聴いたが、今日は読響でラフマニノフのピアノ協奏曲第2番だ。ソリストのアレクサンダー・ロマノフスキーさんは、1984年ウクライナの生まれの28歳。昨年2011年のチャイコフスキー国際コンクールでは、ラフマニノフの最も優れた演奏に贈られる「クライネフ賞」を受賞した俊英である。今日はそのラフマニノフ。さてどのような演奏を聴かせてくれるのか。ただし、席の位置は昨日よりも条件が良くないかもしれない。本シリーズはステージ拡張のため、第3列が最前列となる。センターブロックのやや右寄り、したがってピアノの底が見えているし、だいいち近すぎる…。

 登場したロマノフスキーさんはスラリと背が高く、なかなかカッコイイ。ピアノのソロで曲が始まるが、徐々にクレシェンドしてくると、かなり強い打鍵になってきて、(私の席からでは)音が歪んでしまう。が、それは我慢するとして、演奏の方は、若いだけあって瑞々しい感性とストレートな表現力が素敵だ。おそらくもっと離れた席や2階席で聴いていれば、また違った聞こえ方になっていたのかもしれないが、オーケストラが主旋律を演奏している間の背景にまわったピアノの分散和音の煌めきに、強い存在感の主張が感じられた。その力強さはややバランスを欠いて聞こえはしたが、普段はあまり意識しないで聞き流してしまう部分にも、これだけ主張の込められた音があり、それが曲の下支えをしっかりとしていることを、改めて認識させられた。ラフマニノフ恐るべし、といったところだ。一方、主旋律を弾く際のピアノの輝きは剛直で男性的。感傷的な旋律も、1本芯が通っているかのような強さを持っている。それ自体はけっして悪いことではなく、ラフマニノフは本来こうあるべきなのかもしれない。骨太のロシアの音楽ならでは、である。
 第2楽章の抒情的な旋律に対しては、ロマノフスキーさんのピアノが描く感傷は、若い男性ならでは。屈託のない瑞々しさが際立ち、あまり切ない感じはしない。
 第3楽章については、華麗な技巧の部分に耳を奪われる。正確なリズム感で、曲の進行をグイグイと引っ張っていくのは聴いていてワクワクする。終盤、フィニッシュに向かっては緊張感が高まっていくのは協奏曲の常だが、それにしても読響の爆発的なパワーとの相乗効果で、素晴らしい盛り上がりを見せた。篠崎靖男さんの指揮する読響は、今日はロシア的な骨太の部分をうまく表現していて、やや荒っぽいところもかえってこの曲に合った興趣となっていたように思う。
 ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番は、名曲中の名曲過ぎて、なかなか名演には巡り会えない。それこそ今までに何十回、いや何百回聴いたか定かではないくらいだが、曲をよく知っている分だけ、帯に短し襷に長しということになり、ピアノ、指揮者の解釈、オーケストラ演奏の三拍子が揃って素晴らしいと感じられる演奏は滅多にあるものではない。今日の演奏もとても素晴らしいものであり、とりたてて不満があるわけではないのだが、こちらのアタマの中にあるイメージにはなかなか合致しないようだ。
 鳴り止まない拍手に応えてアンコールは2曲も。ショパンの嬰ハ短調のノクターン(遺作)は、ガラス細工のような繊細な音色の演奏で、思わず耳を澄まして聴き入ってしまう。ナイーブな表現力が素敵だ。スクリャービンの練習曲の方は技巧的な部分を前面に押し出して聴かせていた。ロマノフスキーさんの演奏の多様性を見せていた。

 後半はブラームスの交響曲第2番。ブラームスの4つの交響曲の中では、一番苦手な曲で、何故か昔からあまり馴染めないのである。だから細かいことは避けて、全体の印象を書くに留めたい。
 まず、読響の演奏がなかなか良かった。豊かな音量と立ち上がりのキレの良さ。馬力のある読響サウンドが本領を発揮していた。弦楽のアンサンブルは厚みがあるが鈍重できなく、芯がしっかりしていて重厚である。木管は素直な優しい音色を出していたし、金管も乱れることなく、渋めの音とアンサンブルを聴かせていた。カンブルランさんが振る時の色彩的なサウンドとは違っていて、どちらかといえばドイツ音楽に向いた音色である。また最前列で聴いていても、全体のバランスの良さを感じた。指揮者の真後ろに近い席にいると、第1ヴァイオリンとヴィオラが左右の正反対の方角から聞こえてくるし、第2ヴァイオリンとチェロも聞こえてくる方角がハッキリしていて面白い。このステレオ効果が何とも言えない快感であり、全合奏の時の振動が伝わってくるような音圧も、読響が一番のような気がする。とくに東京オペラシティコンサートホールは、左右の幅が狭いので音が横に逃げないから、一層の音圧を感じる。この音の真っ只中に身を委ねていると、「音楽を体験している」というイメージの快感に浸れるのだ(もっともこれはかなり個人的な印象だとは思うが)。それを一番感じさせてくれるのが読響なのである。そんな意味でも、今日のブラームスは、素晴らしい演奏だったと言える。篠崎さんの指揮も、スタンダードな解釈でとも聴きやすく、オーケストラの機能をうまく引き出していたと思う。休日マチネーのコンサートとしては、肩の凝らない素敵なものだったと言える。

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