彼は拳銃の様に右手で保持したストックの無いサブマシンガンを刃物の様に振り下ろして据銃し、トリガーを引いた――暴れ馬の様に跳ね回るサブマシンガンの反動を片手で抑え込み、彼はとりあえず反撃能力を失ったクロウリーにさらに四発撃ち込んだ。二発ずつ短く区切って二回――指を離すタイミングを間違えさえしなければ、フルオートしかない銃でも訓練次第で自由自在に発射弾数をコントロール出来る。
両膝にそれぞれ二発― . . . 本文を読む
†
それがなんなのか、知識の無いクロウリーには瞬時に理解出来なかった――理解出来なかったから対応も出来なかった。
だが《・・》、危険なものだ《・・・・・・》――
それだけは理解出来たが、どう危険なのかはわからない。結局なんの対応もとれないまま、クロウリーは投げ込まれてきた物体に視線を向け――結果、特殊閃光音響手榴弾《ディストラクション・ディヴァイス》が放った強烈な閃光を正面から . . . 本文を読む
吸血鬼は生前人間であったときと同様、体内のエネルギー源を熱に変換して生きている――そのために、彼らは酸素を必要とする。それも基礎代謝率が桁違いに上がっているために、生身のときの数倍の量の酸素を必要とするのだ。
だがその一方で、人間が吸血鬼になっても血液量そのものはさほど変わらない――ではなにが違うのかというと、血中で酸素の運搬を行うヘモグロビンの量と能力が違うのだ。
これが彼であれば、大量の . . . 本文を読む
†
噛まれ者《ダンパイア》と呼ばれる吸血鬼がいる。
それは個体の名前ではなく、吸血鬼たちの一種の種類を示す言葉だ。
もっとも、それを種《race》と呼ぶのもまた正しくない――生物をこれはヒト、これはイヌ、これはネコといった様に生物学的分類で区別したり、あるいは白人と黒人と黄色人種を区別したりといった、そういったたぐいのくくりを表す言葉ではないからだ。
言葉の定義からいくと、呼 . . . 本文を読む
†
ヴッヴッという抑えられた銃声とともに、スライドの復座の衝撃で銃口が二度跳ねた――発射ガスで薄汚れた空薬莢がふたつ、綺麗な放物線を描いて地面に落下して、コンクリートの上で跳ね回る。
手にした自動拳銃の銃身に装着したサプレッサーから、硝煙が立ち昇っている――足元にくず折れた男の屍を見下ろして、彼は銃を下ろしながら小さく息を吐いた。
彼が手にしているのは、黒色テフロンでコーティン . . . 本文を読む
1
西暦二〇〇六年、香港――
一九九七年にイギリスから統治権が中国に返還されて以来、この小島群は中国の特別行政区となっている。
香港島とその周りに存在する二百近い島は、いずれも平地が少ない――そのために数少ない平地に七百万人近い人口のほとんどが集中しており、その集中した人口を住まわせるために、平野部に構築された市街地には数十階を超える様な超高層ビルが文字通り林立している。
以 . . . 本文を読む
怪物とたたかうものは《Wer mit Ungeheuern kämpft, mag zusehn,》、
みずからもまた怪物とならぬ様に心せよ《dass er nicht dabei zum Ungeheuer wird.》。
おまえが深淵を覗くとき《Und wenn du lange in einen Abgrund blickst, 》、
深淵もまたおまえを覗いているのだ《blickt . . . 本文を読む
というわけで、Nosferatu Bloodの今あるぶん全部の移植がとりあえず終わりました。
なんか妙にリディア推しの回になっております。メインヒロインはフィオレンティーナのはずなのに。
次はLDKですね。
フォトなんとかの試用期間が終わっちゃったので、とりあえず新規で申し込んでみようかな? . . . 本文を読む
これも前回の記事と同様、一種の補完日記ですね。
今回はベルトの不具合に関してです。というかこのブログ本当に小説用なのだろうか。
補機類の駆動ベルトの不具合は大きく分けて五つあります――痩せ、乾燥、亀裂、裂け、破断です。大概はどれかが起こると残りも起こるのですが。
痩せはそのまま、三~五山くらいあるベルトのリブが摩耗によって減り(痩せ)、本来は台形に近い形状のリブの山が三角形に近づ . . . 本文を読む
*
葉隠《はがくし》北の交差点の手前で信号が赤に変わり、アルカードがジープを止めた。
交差点の向こう側の角にファミリーマートがあって、その建物の向こうに小高い山が見えている――マリツィカも通ったことのある小学校の裏山で、位置的には硲西の交差点を左折していった先、デルチャの近家を通り過ぎてもうしばらく行った場所になるのだが、山頂に近いところにさびれた神社がある。
どことなくおどろ . . . 本文を読む
*
掃き出し窓の外に張られたタープに当たった雨滴が砕け散り、パタパタと音を立てる――それまで床に座り込んで犬の遊び相手をしていたパオラが立ち上がって窓に歩み寄り、
「雨が降ってきましたね」
「そうだな」
キッチンで飲み物の用意をしていたアルカードはトレーを手にリビングに戻り、窓の外に視線を向けて小さくうなずいた――塀とタープの隙間から覗く空は黒雲に覆われ、時折雷鳴が轟いている。そ . . . 本文を読む
*
「――それじゃ、本当にありがとうございました」 謝礼の言葉を口にして、紗希が丁寧に頭を下げる――そのかたわらで彼女の母親も丁寧にお辞儀をするのに、アルカードは運転席から降りないまま適当に手を振った。
紗希の足元にお座りの姿勢で蹲り、グレートデン二頭がじっとこちらを注視している――どうも彼は紗希の挨拶よりも、門の向こうで鳴いている犬二頭のほうが気になっている様な風情ではあった。
. . . 本文を読む
*
「あ、そうだ――」 お茶会という空気でもなくなってみんなでテレビを見ているときに、思い出した様に口を開いたのはフリドリッヒだった。彼はアルカードが常備しているポテトチップ――新製品をとりあえず買い込んでくるのが好きらしい――をつまみつつ、
「凛ちゃんから聞いたけど、マリツィカさんが妊娠したんだって?」
「ああ、言ってたな――俺も蘭ちゃんたちから聞いただけだが、そうらしい」 アルカ . . . 本文を読む