徒然なるままに修羅の旅路

祝……大ベルセルク展が大阪ひらかたパークで開催決定キター! 
悲……大阪ナイフショーは完全中止になりました。滅べ疫病神

Balance of Power 30

2014年11月02日 19時14分01秒 | Nosferatu Blood
「一冊目は棄てとけ」 と、アルカードは一瞬の躊躇も無く即答した。  経験則からくるアルカード個人の考え方ではあるのだが――メンテナンス系の雑誌などをみると、質を度外視してホームセンターで売っている様な九十ピース入り千九百八十円といった安物を初心者に勧めるものがたまにある。  そういった記事を目にした時点で、アルカードはその雑誌の内容は一切当てにしないことにしていた――精度の低い工具は使ったら使った . . . 本文を読む
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Balance of Power 29

2014年11月02日 19時14分00秒 | Nosferatu Blood
     *   「なあ、アルカード」 ソファの背もたれに体重を預けてふんぞり返ったままのフリドリッヒに声を掛けられて、アルカードは彼の向かいで先ほど届いた荷物を開封しながら適当に返事を返した。 「おーう?」 「このベルトなんだけどさ」  ビートの試運転から帰ってきたフリドリッヒは硝子テーブルを囲むソファのひとつに腰を下ろし、アルカードが窓から投げ込んだまま放置していたポリ袋の中に入れっぱなしにな . . . 本文を読む
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Balance of Power 28

2014年11月02日 19時13分59秒 | Nosferatu Blood
「どうしたんですか」 「フリドリッヒが帰ってきたらしい」 フィオレンティーナが声をかけると、アルカードは駐車場へと続く扉に視線を向けたままそんな返事を返してきた。 「なにしに行ったのか、アルカードは知ってるんですか?」 「車買ったから、それの試運転《テストドライブ》」  パオラが質問すると、アルカードは短くそう返事を返した。思い当たることがあって、ふたりで視線を交わしてうなずきあう――アルカードが . . . 本文を読む
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Balance of Power 27

2014年11月02日 19時12分34秒 | Nosferatu Blood
     *    金髪の青年が帰ってきたのは、とっぷりと日の暮れたあとのことだった――たまたま玄関先で金魚に餌をやっていたマリツィカは、彼のずいぶんと汚れた有様にぽかんと口を開けた。 「どうしたの? その格好」  まるで森の中で取っ組み合いでもしたかの様にところどころに土や草の切れ端がついた格好のアルカードは、憮然とした表情のままかぶりを振った。彼は肩にかけていた黒いナイロンの巨大な鞄をいったん . . . 本文を読む
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Balance of Power 26

2014年11月02日 19時12分19秒 | Nosferatu Blood
「昼間ならともかく、夜に男の住居にひとりでやってくるってのはどうなんだ?」 こめかみを指で揉みながら、アルカードはそんなことを言ってきた。彼は昼間でもどうかと思うけど、と付け加えてから、 「俺が言うのもなんだが、その手の冗談は面白くないぞ――こないだの狗狼態のまま一緒に寝るとかいうのもそうだが」 「そうですか?」 別に冗談で言ったつもりは無いのだが、吸血鬼は少々たちの悪いジョークのたぐいだと受け止 . . . 本文を読む
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Balance of Power 25

2014年11月02日 19時11分55秒 | Nosferatu Blood
     *    開け放していた掃き出し窓のほうからキャンという鳴き声が聞こえてきて、リディアはそちらを振り返った――網戸に前肢を掛けて中を覗き込みながら、黒い犬がパタパタと尻尾を振っている。 「ソバちゃん?」 窓のそばまで歩いていって網戸を開けてやると、ソバが返事をする様に一声鳴いた。足の甲に前肢を置いてこちらを見上げているソバに小さく笑い、足首と膝が痛くてかがめなかったので、窓際に座り込む。 . . . 本文を読む
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Balance of Power 24

2014年11月02日 19時11分54秒 | Nosferatu Blood
  *    左手で据銃したブラウニング・ハイパワー自動拳銃が、乾いた銃声とともに火を噴く――正確無比のコントロールペアがジャンノレの両眼に着弾し、一時的に視界を潰されて、ジャンノレが憎悪のこもったうなり声をあげた。  溶解液の雫が降りかかったためにところどころ斑点状に焼け爛れた顔をゆがめ、ジャンノレが右腕を突き出す――ほつれた右腕が投網の様に広がりながら、密生した棘状の突起物で地面を引っ掻いて . . . 本文を読む
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Balance of Power 23

2014年11月02日 19時10分24秒 | Nosferatu Blood
     *   「――お」 アパート裏手の駐車場に近づいたところで、アルカードが声をあげる――その視線を追って、リディアもアルカードがなにを見ているのかに気づいた。  アルカードの駐車場、普段だったらいつも空いている駐車スペースに、黄色のカラーリングの小さなオープンカーが止められている。  どうもこの駐車場は違法駐車の標的になりやすいらしく、空きスペースに見知らぬ車がちょくちょく止められている。 . . . 本文を読む
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Balance of Power 22

2014年11月02日 19時10分05秒 | Nosferatu Blood
     *   「――けきゃきゃきゃきゃきゃぁっ!」 耳障りな哄笑とともに、ジャンノレが右腕を振り翳す――長く伸びた右腕の手首から先がまるで水死体のそれの様に膨れ上がり、まるで錘を思わせる巨大な瘤の内側から、金属質の棘が皮膚を突き破って何本も突き出した。  まるでモーニングスターの様にうなりをあげて振り回された右腕が、咄嗟に回避したアルカードの立っていた空間を叩き潰し、背後にあった欅を半ばから叩 . . . 本文を読む
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Balance of Power 21

2014年11月02日 19時09分18秒 | Nosferatu Blood
「閉めるぞ」 一声かけてから、松葉杖を手に持ったまま助手席側のドアを閉める――なにかあったときに自力で逃げられなくなる危険があるので松葉杖は助手席に置いておくべきだろうかとしばらく考えて、結局やめて後部座席に放り込んでから、アルカードは車体の反対側に廻り込んで運転席に乗り込んだ。交通事故であれなんであれ、不測の事態が起きたとしても、ほとんどの状況であればアルカードはリディアを連れて車内から離脱出来 . . . 本文を読む
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Balance of Power 20

2014年11月02日 19時06分45秒 | Nosferatu Blood
     *    昨夜一度救急外来で訪れた総合病院の会計の前の待合ロビーで、リディアは会計待ちの老人や若い母親と彼女が連れた幼児、会社を休んで診察に来たらしい若者に交じって長椅子に座っていた。  若い外国人が珍しいのかちらちらとこちらを見ている者もいたが、リディアは気にしていなかった。日本に来てからまあ慣れた視線だ。  電光掲示板に表示された会計待ちの番号は、152――おっと、たった今158に変 . . . 本文を読む
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Balance of Power 19

2014年11月02日 19時06分27秒 | Nosferatu Blood
     †    地面を撫で切りにする様にして繰り出された巨大な触手を躱して、アルカードは再び林縁に飛び込んだ――ここは道路に近すぎる。すでに十分すぎるほどの痕跡を残してしまった――あとから全権大使とサポート役の神田忠泰に文句を言われそうだ。  伸ばした触手を木々の幹に打ち込む様にして次々と木々を飛び移りながら、ジャンノレが追ってきている――触手はただの武器ではなく密生した棘をアンカーの様に対象 . . . 本文を読む
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Balance of Power 18

2014年11月02日 19時06分07秒 | Nosferatu Blood
     2   「――リディアが負傷を?」  ライル・エルウッドの言葉に、アルカードは小さくうなずいた。 「ああ」  ライル・エルウッドは『主の御言葉』の前庭に置かれた長椅子に腰かけて、水道で遊んでいる愛娘の様子を眺めている。前庭の植え込みに水を撒くのに使うホースリールをプール噴水のところまで伸ばし、周囲に水を撒いて遊んでいた。エルウッドはその娘の様子を眺めながらこちらには視線を向けずに、 「容 . . . 本文を読む
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Balance of Power 17

2014年11月02日 19時05分51秒 | Nosferatu Blood
 それぞれ前時代的な長剣を手にした、四人の吸血鬼――『兵士』たちが叫び声をあげながら床を蹴る――彼らは力士の脇をすり抜けて、それぞれの得物を振り翳しながら殺到してきた。  最初に突っ込んできた金髪の若い女の真直に近い袈裟掛けの斬撃を左手で押しのけて軌道を変え、続く中年の禿頭の男の刺突の鋒を払いのけて脇をすり抜ける。  残るふたりはほぼ同時に接近して、それぞれ左右同時に腰元を薙ぐ様にして一撃を繰り出 . . . 本文を読む
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Balance of Power 16

2014年11月02日 19時05分28秒 | Nosferatu Blood
     *   「……?」 ふと眉をひそめて、アルカードはバックミラーに手を伸ばした。  赤坂のローマ法王庁大使館から高速道路に入るまで、ずっと数台間に入れて尾行している車がいる。  車種はトヨタのランドクルーザー。見た限りフロントシールドに遮光フィルムを貼っている――日本では確か前部のサイドウィンドウと、フロントシールドには遮光フィルムを貼ってはいけないはずだ。  それを無視してまで、直射日光 . . . 本文を読む
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