三崎亜紀
『失われた町』★★
こちら挫折本。。
何度も再読を繰り返ししかし結末に至らず。
2009年11月15日 第1刷
ってことは7年もかかってる(苦笑)
なぜ今か?
山積みの本の中に惹かれる本がなかったから。
言葉の美しさを実感させられた。
澪引きの海
鈍の月映え
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五月の空は、透明さを内に秘めて目に痛い程青く、くっきりとした輪郭の雲がゆっくりと流れていく。
「私は今、ここにいる・・・・・・」
「疲れてるだろ?」
「そんなに疲れた顔していますか、私?」
思わず頬に手をあてる。
「ああ。しかも性質の悪い事に、疲れている人間の方が立派だって思い込む病気にかかってる」
薄雲が冬の高空にたなびく。冬とはいえ、さえぎるものなき陽光は、周囲のビルの窓に反射し、強く注いだ。
「どうぞ、よき澪引きを得られますよう」
「あなたが、私の心を動かせる人になったら、その時は考えてもいいわ」
僕は失われる そして町の人々も だけど人々の想いまでが失われるわけではない 明日への望みを繋げていくために 残りの日々を僕たちは精一杯生き続ける
「まあ、骨は折れたほうがかえって丈夫になるって言うからな。若いうちにいっぱい失恋でも挫折でも骨折でもしておくがいいさ」
「人と人が分かり合えるわけがないだろう」
「確かなことなんか何もないんだ、人と人の間には。たとえ好きになった者同士でもな。いや、分かり合いたい相手ほど、より多くを求めてしまい、結果、分かり合えない部分はより一層増えてゆくもんだ」
「じゃあ、どうすりゃいいんですか?」
「信じ合える部分、求め合える部分を見つけることだよ。それが一つでもあるならば、何があっても心が離れることはない」
水は時に温かく、柔らかに人を包み込むが、また時には津波のように人を襲い、激しく圧することもできるのだ。
「いちいち何のためにとか思いながら自分のやることを決めるの?自分がそれをやりたいかどうかが大事なんじゃないの?」
「誰かのために生きるのなんて、まっぴら」
春まだ浅い朝の町は、清浄な大気に満たされていた。
――ボクハコンヤウシナワレル――