ひょんなことでDENONのDP-80完動品とキャビネットをジャンク価格で手に入れた。
日頃からお世話になっているオーディオ店の店主と店員さんに感謝である。一応、動作には問題無いが、なにせ30年近く前の機種。爆弾があちらこちらに隠れているのは想定済み。そそくさと持ち帰って、WE-308Nを取りつけその素晴らしい音を確認した上で、メンテナンスを行った。
まずは方針を決める。
足が腐食していようがいまいが2SC458と2SA673は全てもれなく交換する。DP-3000をメンテナンスした時のパーツの在庫が山ほどあるので、追加調達は無しで行けそうだ。
(実は一部電解コンデンサが足りなくなって、近所のパーツ屋に走った....(汗))
2SC458⇒2SC1815(GR)
2SA673⇒2SA1015(GR)
半固定VR交換
電解コンデンサ全交換
ハンダ補正
でメンテナンス開始。
裏ぶたは簡単には開かない。
ねじ2本を外して、マイナスドライバーでこじ開けると悪名高いスポンジが現れる。
スポンジをきれいに外してこんな感じ。
モーター内部にボロボロになったスポンジのカスが入らないように、きちんと養生しながら、シールはがしなどを使いながらスポンジを取り除かなければならないので、割と神経を使う作業だ。30分ほどかけて丹念に取り除く。
そして各基盤を外し、部品交換を開始する。
どういう環境で使われてきたのかわからないが内部が恐ろしく綺麗。パーツの足はピカピカで新品のよう。ネットで良く見る足がボロボロに腐食したパーツはどこにも無い。どんな環境でどう使えばああなるのか。温泉地なら仕方ないとは思うが、一般家庭での利用環境では想定しずらい。余りに綺麗なのでどうしようか迷ったが、いずれ劣化で暴走あるいはうんともすんとも言わなくなるのは時間の問題だ。よしと気合を入れて作業開始。
これが
↓
こんな感じに。
音声信号が通る訳では無いので別にオーディオ用の電解コンデンサで無くても良いのだが、今後の安定動作を祈念してニチコンのピュアゴールドを使用した。
DP-80のメンテナンスには色々鬼門があって、そのひとつがこの基板についている250V4.7μFの縦型電解コンデンサの存在。なんとも中途半端な耐電圧と容量だ。真空管アンプの電源フィルタ部に使うには耐圧不足だし、容量も中途半端。
ネットのご宣託に従い、外してリード側をみると、あららご宣託通り液漏れが。真空管アンプの設計製作に明け暮れていた事に買っていた450V10μFのチューブラの電解コンデンサで代替させようかと思ったが、さすがにこれも在庫10年選手だし、スピーカーネットワーク用のフィルムコンが山ほどあって、その中に同じ規格(250V4.7μ)のものがあったのでそれに取り換える事にした。
そのままでは基板に取り付けられないので、基板のパターン側に2本のリード線を接続してフィルムコンに接続、熱収縮チューブや自己融着テープで絶縁をきっちり行った上で、フィルムコンをシャーシに超強力両面テープでペタリでおしまい。これでネオンランプがより安定して光るといいが。
もうひとつはこの半固定VRの存在。
このまま取り換えたくなるが、良く考えてみよう。これを組み上げた時、どうやって調整する????DP-80はそのまま組み上げると、この半固定VRが回せないという不可思議な状況に陥る。
恐らくはこの基板単体で調整し、完成状態になってからは、この半固定VRをいじらなくても良いような製造工程だったのだろう。しかし、あとあとの保守を考えるとこれは「なんだかな」と思う。半固定VRは劣化が特に激しいパーツなのを設計者はわかっていたとは思うのだが。
文句を言ってもしょうがないのでさっさと自己解決、パターン側(上の写真で言うと裏側)に半固定VRを取りつけることにした。アクロバットなはんだ付けだが、先の細いコテ先で慎重にやれば十分に可能。写真はなし。撮影をすっかり忘れてしまった(笑)
(注)2016 年になってぼおっと写真を見ていてふと気がついた。この半固定VR取り付け部分についている穴を。あれ?もしや...ネットで検索し、予備の半固定VRをしげしげと眺めて確信に変わった。そうか、この穴を通して絶縁精密ドライバなどを使って半固定VRを裏から(パターン側から)調整するのか。確かに元から付いている半固定VRは裏側からも調整出来る。この時交換した半固定VRは同じタイプなので特に基板裏(パターン面)に取り付ける必要は無かったのか....そんな発想は無かった。半固定VRは上から調整するものだと思い込んでいた自身の発想の貧困さを大いに大いに反省。設計された方、文句を言って申し訳ございません。上記3項目の発言を撤回しお詫びします。
m(_ _)m
で3つの基板で所定のパーツ交換とハンダ補正を行い無事完成。半固定VRをパターン側に取り付けたおかげで、なんとも簡単な調整でノーマルもバリアブルもストロボがピタリと決まってあっけなく調整終了。
~調整のやり方~
1.回転数調整のボリュームを中央位置にする
2.モードをバリアブルにして45回転で回す。
3.ストロボが停止するように45回転調整用の半固定VRを調整する。
4.回転数を33回転にしてストロボが停止するように33回転調整用の半固定VRを調整する。
5.バリアブルの状態で33/45回転どちらでもストロボが動かない事を確認する。
(動く場合は3.と4.を繰り返す。適切なヘッド位置で、回路が正常動作し、モーターに問題が無ければピタリと止まるポイントが必ずある.....はず)
6.モードをPLLにし33/45回転どちらでもストロボが動かない事を確認する。
慣れればあっという間に調整が完了する。何も測定機は使わない簡易的な調整だが実にピタリと調整が可能なやり方。TT-71に比べたら何と簡単な事か。(TT-71にも簡便なやり方があるのかもしれないけれど....)
しかし、このDP-80、内部配線コネクタの渋さや基板取付時の渋さは、とても高級品とは思えない。基板が軽くたわむほど左右から力がかかっている状況って、家電製品としてどうよ。また、今となっては入手困難なパーツが多く、通販パーツ店で検索する度に気分が萎える。腐食など目視でわかるような劣化が無いだけマシだがそういう意味ではDP-80よりDP-3000の方が長く使えそうな気がする。
とは言え、TT-71を購入した学生時代には逆立ちしても買えなかった憧れの高級品のDP-80が手に入ってとてもうれしい。メンテナンスできる限り長く愛用しよう。
追記:
その後、DP-80に使われているECQMタイプのフィルムコンデンサは経年変化が大きいことを知った。通常のメンテナンスではフィルムコンデンサは特にいじらないのだが、DP-80ばかりはとにかく長く使いたいので交換する事にした。また、この際、入手しうる限りの交換用のパーツの確保と交換を実施することとした。
オレンジ色のパーツが取り換えたフィルムコン。特売品だが立派なものだ。直接音声信号が通る訳では無いのでオーディオ用でなくても十分。少なくとも触って軽くべたべたするような古臭いフィルムコンよりは性能も良く信頼できるものだ。寸法は半分、耐圧が倍、技術の進歩はさすが。容量が合わないところは基板裏からパラってあげて回路図どおりの容量と
している。(昔の製品に使われている古いコンデンサではよくあること。組み合わせで何とかするのが楽しい)
2SC458、2SA673以外のトランジスタもパーツが入手できた(しかしよくぞ見つけた)ので交換、コンパレーターやフォトカプラ、ロジックICも交換した。念のため、コンパレーターやロジックICにはソケットを使用した。
<交換したパーツ類>
2SC458⇒2SC1815(GR)
2SA673⇒2SA1015(GR)
2SA778AK⇒2SA778K(一部の2SA778は足の配列に注意要!)
2SC2168
2SC2023
2SB861
2SD669A
2SA879
HD7348P
HA17901P⇒TA75339P(HA17901Pの代替品(互換品))
PC613
PC614
半固定VR10kΩ全交換
電解コンデンサ、ECQMタイプのフィルムコンデンサ全交換
(250V4.7μFはちょうど良い電解コンデンサーが見つかったのでそれと交換した。
フィルムコンでの代替はやめにした)
あと残る難物パーツはSC3120A(代用はLR3736)とTA7122AP(BP)で、これらも入手がえらく困難だが、何とか手に入れる事ができたので大事に保管しておく事にする。リレーも入手困難。ちょっとしたパターン修正で代用できるリレーも入手したがこれらが活躍する機会が無い事を祈るばかり。
これでDP-80のメンテナンスは完了。
電気的メンテナンスはこの位にして、SMEのショートアームが使えるようにアームボードの穴修正しなきゃなあ。これがまた荒行なのです。