「もののあはれ」の物語

古き世のうたびとたちへ寄せる思いと折に触れての雑感です。

おのぼりさん

2008年11月13日 | 旅の足あと
 羽田で京急に乗り継いで品川まで出るという私と、モノレールがいいという連れ合いの間で早速食い違いが出て、ここは私が譲り、無事新宿駅南口まで辿りつきました。
 2泊の宿はただ利便性を考慮して、駅に最も近い宿というので新宿駅サザンテラス口から徒歩1分のセンチュリーサザンタワーを予約していました。
 移動する距離と時間の釣り合いは、この10年ほどで極端に短くなっています。北九州空港を発って、1時間15分で羽田空港です。快晴の秋空に五合目近くまで冠雪の富士山が裾を曳いていました。

 4年ぶりの東京は、また変貌していて、この不気味な大都市はどこを目指してゆくのかと思います。35階の窓からは東京タワーのオレンジ色の明かりがビルの間に見えています。足元の新宿の夜は、きらびやな灯りが眠らないで瞬いています。
 旅情をいとおしむ、しっとりとした時間はここには存在しません。自分の足で峠を越えて他国に入ったときに、いにしえ人が抱いた旅の情感などとは全く無縁の空間が、世界の大都市の何処とも格別に異なることのない風景で拡がっています。
 落ち着けないのがせめてもの旅情と言うべきでしょうか

 サザンテラスには、クリスマス・イルミネーションがすでに点灯されて、静閑な暮しとの甚だしい格差で、人の数と非日常の幻想世界に戸惑います。

 明日は下の尾形光琳筆 波図屏風 (メトロポリタン美術館)にも逢えます。