「もののあはれ」の物語

古き世のうたびとたちへ寄せる思いと折に触れての雑感です。

里の秋

2008年11月02日 | 季節のうつろい
 散歩コースの枯蓮も首を折り、水に姿を没してゆくものが急に増えてきました。
すっかり葉を落とした柿が赤く実を灯すのも目に哀しく映ります。

 山形から秋の便りに、黄菊が届きました。食用の菊です。熱湯に酢を少し加えてさっと茹で、軽く水に晒して絞るのですが、くるみ和え、おろし和え、からし酢と、いろいろ試してみて、すり胡麻に少し調味料を足して和えるのが一番好みに合うようです。市販の胡麻ドレッシングも簡単で美味しいです。九州では余り見かけない食材で、懐石料理などで出されると目に留まります。
 毎日、サラダで、和え物で、吸物に浮かべてと、東北の秋を目と舌で楽しんでいます。短い期間の季節限定の秋味です。残りは茹でてお正月用に冷凍しました。

 春と秋の季節は、それぞれ贔屓があって、万葉のいにしえから春、秋の優雅な論争がおこなわれてきました。かの源氏物語でも六条院の源氏は春が相応しい紫の上を春の御殿に、斎宮の女御(後の秋好む中宮)を秋の御殿にと配置しました。日本人なら誰でも四季の移ろいに寄せてそれぞれの好むところがあります。 “もののあはれは秋こそまされ“で、私は秋が好みです。額田王も秋に肩入れしました。当分は秋をもとめて楽しみな日が続きます。


 万葉集 巻1額田王
     冬ごもり春さり来れば、鳴かざりし鳥も来鳴きぬ。
     咲かざりし花も咲けれど、山を繁み入りても取らず。
     草深み取りても見ず。秋山の木の葉を見ては、
     黄葉をば取りてそ偲ふ。青きをば置きてそ歎く。
     そこし珍らし。秋山われは