これは、尊師がジェータ林にとどまっておられたときに、戒誓行に入っている五百人の帰依信男に関して講演なさったものです。そのとき実に、尊師は法則の広間において、四つの集団の真ん中にある装飾された覚者の座に座り、穏やかな心で集団を見て、
「今日は帰依信男たちに対する話に関連させて教えを示そう。」
と判断し、帰依信男たちに呼びかけ、こうお尋ねになりました。
「帰依信男たちよ、あなた方は戒誓行に入っているのか。」
「はい、尊師よ。」
と申し上げると、
「あなた方がなしていることは素晴らしいことだ。戒誓行というもの、これは大昔からの賢者たちのならわしであった。というのは、大昔からの賢者たちは、愛著などの煩悩を制御する手段として、戒誓行に時を費やしてとどまったからだ。」
と言って、彼らに懇願されたので、物語をお話しになったのです。
その昔、マガダ国の王領などの三つの王領の間に森がありました。到達真智運命魂はマガダ国の王領にある大邸宅を有する祭司の家に存在するようになり、青年に達すると、愛欲を捨断し、家庭生活を後にして、その森に入り、人里離れた住まいを作って暮らしていました。
ところで、その人里離れた住まいから遠くない、ある竹林には鳩である鳥が自分自身の妻と一緒に、あるアリ塚には蛇が、ある林の茂みにはヤマイヌが、ある林の茂みには熊が住んでいました。彼ら四匹は同様に時折、尊い人の所へ行き、法則を聴くのでした。
さて、鳩は妻と一緒に巣を出て、餌を探すために出発しました。彼の後から、雌鳩が行くと、一羽の鷹が捕まえて立ち去ってしまったのです。彼女の叫ぶ声を聞き、鳩が引き返して見ると、鷹が彼女を連れ去っているのが見え、さらに鷹は叫んでいる彼女を食べてしまいました。鳩は彼女との別れによって、愛著の燃えるような悲しみにあぶられ、思念しました。
「この愛著は極端にわたしを疲れさせる。今、これを制御できないうちは、餌を探すために出かけないようにしよう。」
と、彼は餌を取ることを遮断し、苦行者の面前に行き、愛著の制御のために戒誓行を始めて、そばに座りました。
「わたしは餌を求めよう。」
と、蛇も人々の住まいがある場所に出かけ、国境の村にある牛の牧場において、餌を求めていました。
そのとき、村長の純白で祭られた牛が牧草を取った後、あるアリ塚の根元において、膝で立ち、角で粘土を取って楽しんでいました。蛇は牛の足音にぎょっとして、そのアリ塚に入ろうとして、去っていくところでしたが、そのとき、牛がその蛇を足で踏みつけたのです。蛇は怒って彼にかみつき、牛はまさにそこで生命の破壊に至りました。村の住人たちは、
「牛は死んだそうだ。」
と聞き、すべての者がまさに連れ立って来て、涙を流し、彼を香りのある花飾りなどによって礼遇し、穴を掘り埋葬して帰りました。蛇は彼らが去ったとき出て、
「わたしは激怒によって、このものの生命を奪い、多くの人々の心に悲しみを与えてしまった。今、この激怒を制御できないうちは、餌を探すために出かけないようにしよう。」
と引き返し、人里離れた住まいに行って、激怒の制御のために戒誓行を始めて、そばに座りました。
ヤマイヌも餌を求めていると、一頭の死んだ象を見て、
「わたしは大きな餌を得た。」
と喜んで行きました。
象の鼻にかみつくと、あたかも柱にかみついたときのようでした。そこで、よい味を得られなかったので、牙にかみつくと、あたかも石にかみついたときのようでした。腹にかみつくと、あたかも煉瓦にかみついたときのようでした。しっぽにかみつくと、あたかもこん棒にかみついたときのようでした。肛門にかみつくと、あたかも精製されたバターで作られた砂糖菓子にかみついたときのようでした。
彼は貪欲によって、食べながら腹の中に入り、そこで、空腹なときは肉を食べ、のどが渇いたときは血を飲み、横たわるときは小腸と肺臓との上に横たわりました。
「まさにここに、わたしの食べ物と飲み物と寝台とが備わっている。どういう訳で他のどこかへ行く必要があるだろうか。」
と、彼は思念して、まさにそこで楽しみを見いだし、外部に出ず、まさに腹の中に住みましたが、間もなくして、熱い風によって、象の死体は乾き、肛門は閉じてしまったのです。肉や血は少なくなり、出る道は見えず、腹の中でヤマイヌは肉体が青ざめ、憔悴していました。
さて、ある日、時期外れの雷雲が雨を降らせ、肛門は湿り、柔らかくなって、開いたところが見えました。ヤマイヌは隙間を見て、
「とても長い間で、疲れてしまった。この隙間から、わたしは立ち去ろう。」
と、肛門に頭をぶつけました。その圧迫されるところを素早い動作で出たので、肉体は傷つき、肛門にすべての体毛が付着し、あたかもパルミラヤシの幹のように、体毛がなくなった肉体になって出たのでした。
「貪欲によって、わたしはこの苦しみを経験した。今、これを制御しないうちは、餌を取らないようにしよう。」
と、彼は思念して、その人里離れた住まいに行き、貪欲の制御のために戒誓行を始めて、そばに座りました。
熊も強欲に征服され、森から出て、マッラ国の王領にある国境の村に行きました。村の住人は、
「熊が来たそうだ。」
と、弓や棒などを手に持ってやってきて、そこで茂みに入り、周りに輪を作りました。彼は多くの人々に囲まれた状態に気づき、出て逃げ、そしてまさに逃げているときに、彼はまさに数々の矢や棒によって攻撃されたのです。彼は傷つき、頭から血を流しながら、自分自身が住む場所に行き、
「この苦しみはわたしの強欲と貪欲によって生じた。今、それを制御しないうちは、餌を取らないようにしよう。」
と、その人里離れた住まいに行き、強欲の制御のために戒誓行を始めて、そばに座りました。
苦行者も、自己の生まれに対する慢に陥って、静慮を生じさせることができなかったのです。それで、一人の独覚が彼の慢が内在した状態に気づき、
「この者は並の生命体ではない。この人は覚醒をなす。まさにこのカルパにおいて、全智に達するだろう。この慢の制御をなして、生起のサマディが生じる状態になそう。」
と、彼は自分の枝や葉っぱでできた小屋にまさに座っていましたが、北の雪山から来て、苦行者の石でできた平たい厚い板に座りました。苦行者は出ると、独覚が自分自身の座に座っているのを見、慢が内在した状態によって、いらいらさせられ、彼に近づき、指をパチッと鳴らして言いました。
「うせろ。浮浪者、不吉なニセの出家修行者坊主よ。何のためにわたしの座る平たい厚い板に、お前は座っているのか。」
「善と徳のある人よ、なぜ、あなたは慢を内在しているのか。わたしは独覚の精通を獲得した者だ。あなたはまさにこのカルパにおいて、全智の覚者になるだろう。あなたは覚醒をなす。種々の徹底を成就し、さらに多くの、しかじかの時を経て、あなたは覚者に達するだろう。覚者の状態であるときの名前はシッダッタであろう。」
と、独覚は彼に名前と家系と一族と第一の多学の弟子などをすべて明かし、
「何のために慢を内在し、乱暴なのか。これはあなたにふさわしことではない。」
と忠告を与えました。彼は独覚によってまさにこのように言われても、彼にうやうやしくあいさつすることはなく、まさに、
「いつわたしは覚者になるのだろうか。」
などと尋ねることはなかったのでした。
「あなたの生まれよりも、わたしの徳の方が偉大であることに気づきなさい。もしできるならば、あたかもわたしのように空間を動き回ってみなさい。」
と、独覚は彼に言って、空中に舞い上がり、自分自身の足の塵を彼の丸く結ばれた髪に払い落として、まさに北の雪山に去ったのでした。
苦行者は彼が去ったとき、敬虔な感情が生じ、
「この出家修行者はこのように重い肉体で、あたかも風に向かって投げたキワタのように飛び上がっていった。わたしは生まれに対する慢によって、まさにこのような独覚に対して、足にうやうやしくあいさつすることはなく、まさに、
『いつわたしは覚者になるのだろうか。』
などと尋ねることはなかった。生まれというもの、これによって何がなされるだろうか。この世界においては、まさに戒の実行が偉大なのである。それゆえに、わたしのこの慢が増大していくならば、激苦地獄に堕ちるだろう。今、この慢を制御しない内は、あらゆる種類の実を探すために行かないようにしよう。」
と、枝や葉っぱでできた小屋に入り、慢の制御のために戒誓行を始め、小枝でできた敷物に座ったのです。大いなる精通がある善男子は慢を制御し、十全境を修習し、種々の証智と種々の生起のサマディが生じ、歩き回るための場所の端にある石でできた平たい厚い板に座りました。
それで、鳩などは彼の所へ行き、うやうやしくあいさつして、そばに座りました。偉大な生命体は鳩に尋ねました。
「他の日々には、この時にあなたがこちらに来ることはなく、餌を求めていた。今日は今、戒誓行の誓いを守るようになったのか。」
「はい、尊者よ。」
「どういう訳によるのだろうか。」
と、彼に尋ねて第一の詩句を言いました。
鳩よ、今、あなたの欲は少ない。
空を行く者よ、あなたは食物を願わない。
空腹と渇きを我慢して、
鳩よ、
なぜ戒誓行の誓いを、
守っているのだろうか。
それを聞いて、鳩は二つの詩句を唱えました。
以前わたしは雌鳩に飽くなき欲望があり、
この場所で双方は楽しんでいた。
そのとき、鷹が雌鳩を捕らえ、
彼女はなく、感覚の喜びの対象はなくなった。
様々な状態から、
彼女との別れによって、
意識で成り立っている痛みを感じ、
この理由ゆえに、わたしは戒誓行を守り、
わたしの愛著が再び来ないように願っている。
鳩によって自己の戒誓行の行為が説明されると、偉大な生命体は蛇などにそれぞれ尋ねました。彼らも同様に如実に回答しました。
くねりながら進む者よ、
二枚の舌を持つ胸ではって進む者よ、
毒牙を武器とし、猛毒がある蛇よ、
空腹と渇きを我慢して、
長い者よ、
なぜ戒誓行の誓いを、
今、守っているのだろうか。
村長の牛は力があり、
両肩のこぶは揺れ、
美しさと力が備わっていた。
彼はわたしを踏みつけ、
わたしは感情を害されて彼にかみついた。
彼は苦しみにもだえ、死に至った。
それゆえに、人々は村から出て、
涙を流し、泣き叫んで、近づいて来た。
この理由ゆえに、わたしは戒誓行を守り、
わたしの激怒が再び来ないように願っている。
種々の死肉は墓地に数多くある。
これは心を喜ばせるあなたの食べ物だ。
空腹と渇きを我慢して、
ヤマイヌよ、
なぜ戒誓行の誓いを、
守っているのだろうか。
大きな象の腹に入り、
死体の中で楽しみ、
象の肉を貪り喜んでいると、
熱い風と鋭利な光線とが、
その肛門を乾かせた。
尊者よ、わたしの出る道はなく、
わたしはやせ、そして青ざめた。
しかし突然、大きな雷雲が雨を降らせ、
それがその肛門を湿らせた。
尊者よ、ラーフの口から、
月が解放されたように、
わたしはそこから出た。
この理由ゆえに、わたしは戒誓行を守り、
わたしの貪欲が再び来ないように願っている。
以前あなたはアリ塚の塔で、
アリたちを殺して食べ、
動き回って生活していた。
空腹と渇きを我慢して、
熊よ、
なぜ戒誓行の誓いを、
今、守っているのだろうか。
自分自身の家を蔑み、
強欲さによってマッラ国に行った。
そのとき、人々は村から出て、
石弓でわたしを撃った。
このわたしの頭は傷つき、
手足からは血が噴き出し、
わたしは自分自身の家に再び戻った。
この理由ゆえに、わたしは戒誓行を守り、
わたしの強欲が再び来ないように願っている。
このように彼ら四匹は自分自身の戒誓行の行為を説明し、立ち上がって偉大な生命体にうやうやしくあいさつし、
「尊者よ、他の日々には、この時にあなたはあらゆる種類の実を探しに行っていました。なぜ今日は行かずに、戒誓行の誓いを守っているのですか。」
と尋ねて詩句を言いました。
尊者よ、わたしたちはあなたに尋ねられて、
認識し理解していることにしたがって、
まさにすべてを明らかにしました。
尊者よ、わたしたちもあなたに尋ねます。
神聖な人よ、
なぜ戒誓行の誓いを、
今、守っているのでしょうか。
彼は同様に彼らに回答しました。
わたしの人里離れた住まいにおいて、
けがれない独覚が少しの間座った。
彼はわたしに、
転生して行く方向と転生して来た方向、
名前と家系と振る舞いのすべてを知らせた。
このようであっても、わたしは、
彼の足にうやうやしくあいさつすることはなく、
そして、わたしは慢に陥って、
彼に尋ねることもなかった。
この理由ゆえに、わたしは戒誓行を守り、
わたしの慢が再び来ないように願っている。
このように偉大な生命体は自分自身の戒誓行の行為を伝え、彼らに忠告して引き取らせ、枝や葉っぱでできた小屋に入りました。彼らもそれぞれ自分の場所に去りました。偉大な生命体は静慮を怠ることなく、神聖天の世界を最終地点としました。そして、彼らも彼の忠告に従い、天を最終地点としました。
尊師はこの教えをもたらした後、
「帰依信男たちよ、このように戒誓行というもの、これは大昔からの賢者たちのならわしであった。戒誓行を守り続けなさい。」
と言って、輪廻転生談に当てはめられたのです。
「そのときの鳩はアヌルッダであり、熊はカッサパ、ヤマイヌはモッガラーナ、蛇はサーリプッタ、苦行者はまさにわたしだったのである。」