ブルックリン横丁

ブルックリン在住17年の音楽ライター/歌詞対訳者=渡辺深雪の駄ブログ。 そろそろきちんと再開しますよ。

086:「マライア取材:ディーヴァ光線浴びてきました。」

2005-02-22 | ブルックリン横丁
ほぇ~。まだ半分惚けてますワタクシ。マライアすごかったっす。

木曜日のアルバム試聴会、金曜日の取材通訳に続き土曜日はTV用の共通素材や各番組用のID録り(「○○をご覧の皆さんこんにちは、マライアです」、っていうアレね)というスケジュール。USの媒体は彼女のスケジュールに合わせて密着すりゃいいだけだがインターナショナルの場合は各国からジャーナリストを飛ばしてきて短期間で最大限の取材をぎっしり詰め込むのがお約束。大抵は日、英、独、仏、豪、スウェーデンなど。そのアーティストの規模や各国での人気度によって多少参加国が変わったりすることはあるけど。金曜日は紙媒体の取材だけだったのでタンクトップにノーブラ、ブーツインさせたタイトなデニム姿(でも化粧はカンペキ)というカジュアルな出で立ちのマライアでしたがやはりTVとなると気合いが違うようで。しかも本人たっての希望/提案で30分おきくらいにお色直しして登場という演出付き。。。TV素材には色々なバリエーションがあった方が良いだろう、っていう気配りと解釈すべきなんだろうけど、彼女がMTV Cribsに登場した時のことを覚えている人ならわかるでしょ?…彼女のヴィジュアルに対するこだわり、というか見せたがり、っていうか、まあその意気込みたるや常人の域を超えてますな。

それが一番顕著だったのが、マライアお抱えの照明担当として采配をふるうビルの存在。つーかどこの国にプロモやツアーで出向く時も必ず彼とクルーを引き連れて行くらしい。彼女が日本のTV局の歌番組に出演しようと、その照明は必ずビルが手掛けるのだそう。予定より数時間遅れて登場したマライア、衣装#1はミッソーニのニットドレス。昨日のウェーヴヘアから一転、ピシ~っと伸ばしたストレート。会場となったミートパッキング・ディストリクトのGansvoortホテルの最上階のペントハウスの巨大な窓の下に広がる夕闇のハドソン河と室内にデコレートされたキャンドルに白い薔薇。吹き抜けの2階部分にある彼女の控え室から着替えを済ませ、しもべ(にしか見えなかった)に手を引かれ階段を下りてくる姿はマジでディーヴァ、姫様ですよ。しかしそこからが長かった。ビルが数時間かけてセッティングした照明にばさりばさりとダメ出しするマライア。どこをどう映して欲しいのか、自分をどう見せたいのか、はたまたどう見られたいのか、それをカンペキに把握しているプロフェッショナルっぷり。何てったって全世界でアルバムを1億5千枚(だったっけ)売り上げている人だもの。ビートルズとかプレスリーの記録を抜いちゃった人だもの(詳しいことは忘れた)。そのくらい当たり前なんだろうけどさ。椅子の座り心地、はたまた肘掛けの有無が与える彼女の姿勢、ロングドレスの裾をたくし上げるそのギリギリ感(やっぱり露出するのが好きらしい)、髪の毛の毛先の伸び具合、胸元にはたくフィニッシング・パウダーの分量、その全てにおいて彼女が絶対権を握っているのだ。メイク担当、スタイリスト、照明係、その誰一人として彼女に指図する者はいない。It's All About Herなのだ。

ていうかあんまりスターを目の前にしてもビビったりする方ではないし、割としょーもない軽口を聞いたりすることもあるんだけど、彼女に関してはもうただただ固唾を飲んで傍観、ってカンジでした。こりゃースゴいわ、と(笑)。

しかも取材直前になって、実はこちらが日本から用意してきている質問や代行取材用に必要な時間よりも少し余裕がありそうだ、ということで急遽追加取材分の質問状を作成せよ、とユニバーサルS氏からの指令が。基本的にハーコーなラッパーやR&Bシンガーを相手にすることの多いワシだけに、こんな天下のディーヴァ相手に一体どうすりゃいーんじゃ、と悩んだもののそれなりにアタックしてみることに。

後になって分かったことだけど、私の前に入っていたUKのジャーナリストは皮肉屋&ゴシップ好きな傾向にある人だったらしく、私は敢えて今回のアルバムの音楽性やその「歌声」の復活の裏にあるものを探る方向で話を進めることが出来たのは良かった。マライア級のアーティストになってしまうと、音楽性うんぬんっていうよりももっともっと「女性誌」的な質問を浴びせるのが常ではあるんだろうけど、その辺の話は日本からいらしていた大先輩方にお任せするとして、ってことで。ホントはもっと練った質問をしたかったのは事実だが、受け取め方によってはディーヴァな彼女ならご立腹してしまいそうな微妙に聞きにくい質問(意地悪、っていうワケじゃないんだけど)もあったので、なるべく耳障りの良さそうな語彙を選んで質問したりとマジで神経使っちゃいました。でもその甲斐あって取材が終わった後に「素晴らしいインタヒューをありがとう」と言ってもらえたので自分的には一応合格、ということにしようかと(おめでたくて悪かったわね)。

さらにそこから数時間して、また別の衣装で現れたマライアと残りの取材(これは純粋に通訳のみ)も敢行。これもソツなく終了、しかし気づいたら既に深夜2時。途中本人たっての希望で飼い犬のジャックにまつわる質問を半ば強制的に訊かされたり(しかもユニバーサルS氏になついた彼はマライアのところには行きたがらなかった。。。)とかもありましたが、ホントにスゴいモン見せて頂きましたよ。でも取材が終わってS氏と話していたのだが、彼女の本拠地であるNYで、しかもお抱えのスタッフ総動員でコレだっちゅうのに、アウェイもアウェイ、飛行機で13時間も離れた遠い国ジャパンにおいて全てをあのディーヴァのためにしつらえもてなしながら微妙に仕事もさせなきゃならないその心労たるや。ご愁傷様です&頑張って下さいとしか言いようがありまへん。噂では3月に来日するかも、ということなのでまたまた日本にもマライア旋風が吹き荒れることでせう。

でももし今度彼女の姿をTVで観たりしたら、その背後にある裏方スタッフの汗と人知れぬ涙を感じてあげて下さい(笑)。