竹林の愚人  WAREHOUSE

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華僑烈々

2007-01-31 20:28:19 | BOOKS
樋泉克夫 「華僑烈々 大中華圏を動かす覇者たち」 新潮社 2006.12.15. 

1992年、「改革・開放の総設計師」と呼ばれていた小平は、党や政府の首脳に対し「恐れることはなにもない。とっとと鼠を捕まえる猫になれ」とバッハをかける。いわゆる「南巡講話」だ。「金儲けは正しい」「貧しいことは社会主義ではない」との号砲に勢いを得て、中国は全土を挙げ躊躇することなく市場経済の道を驀進し始めた。毛沢東によって封殺されてきた漢民族の商人気質に火が点けられた瞬間だった。国を挙げて金儲けに突進した。 この時以降、東南アジアの華人資本に加え、香港や台湾の資本が中国市場に怒濤の勢いで流れこみ、中国経済の成長は軌道に乗ったのだ。これら華人企業家、香港や台湾の企業家なくして中国経済の発展は考えられなかった。 ASEANの華人企業家と香港、台湾、マカオ、そして大陸中国の企業家との間に、共通する企業文化がある。一言でいえば、「拝金主義」、つまり「カネをムチャクチャ儲けてどこが悪い」ということになる。民族の体内にすり込まれた《商業の民》としての遺伝子が、200年や300年程度の短時間では変わることも、消えることもない。ASEAN、香港、マカオ、台湾の企業家であろうが、かつて毛沢東思想を金科玉条としたはずの共産党政権を戴く大陸中国の企業家であろうが、ルーツを同じくする彼らの体質から滲みでてくる経営手法の根源は、やはり漢民族の歴史にこそ求められるべきだろう。 一般に、華人企業家に共通する特徴は、最初に起業した時の業種にかかわりなく、経営規模や業種を拡大する過程で必ず不動産開発に手を染めている。安価で手に入れておいた土地が高騰するや、それを原資に事業拡大を目指す。やがて多くの業種の企業を傘下に置く企業集団に成長したとしても、中核を支える大きな柱は不動産開発部門なのだ。 台湾、ASEANにしても事情は同じだ。要するに「地産致富(地産ハ富二致ル)」とは伝統的な中華企業文化、あるいは商法なのだ。そして、「地産致富」こそ、中華系企業家に共通するDNAだと言っても過言ではない。現代中国の企業家たちもまた伝統的商法に先祖返りし始めた。