竹林の愚人  WAREHOUSE

Doblogで綴っていたものを納めています。

神々のハワイ

2005-04-29 19:43:29 | BOOKS
スザンヌ・ムーア 「神々のハワイ」 早川書房 2004.08.20.

1820年から44年にかけてアメリカからキリスト教の布教のために12回にわたって宣教団が異教徒の魂を救うため、この太平洋の真ん中の孤立した火山列島にやってきた。彼ら[宣教師]は布教にもカナカの文明化にも成功し、カナカは2世代か3世代あとになると事実上絶滅してしまった。これは福音の種、宣教師のまいた種が実を結んだものだが、その結果として宣教師たちの子供たちの代になると、無邪気なほど物惜しみしないハワイ人から島そのものを占有し、土地も、港も、町も、さとうきび農園もわがものにした。ハワイ人は根っから怠惰だと思われていたため、農作業の人手か足りなくなり、労働力を海外から導入した。最初は中国人、のちに日本人(1885年)、スペイン人(1898年)、プエルトリコ人(1900年)、フィリピン人(1907年)が収容施設に寝泊りして農作業に従事するようになった。こうしてハワイは移民の国になった 伝道師の影響力はあまりに大きすぎた。1959年の統計によると、ハワイの総出生数は17,050人、うち白人は4,673人、純血のハワイ人は114人だった。

1946年生まれの著者は、けっして上流を鼻にかけた人種差別社会の側にいたわけではないが、1970年代にピンクのギンガムのビキニを着た日本人の娘たちがマカブウ・ビーチにくりだすようになると、誰もが自由であるべきだと思いながら、一方で相反する気持ちをどうしても抱いてしまう。と正直に告白する。  無意識の人種差別はそうとうあったが、ハワイ人に向けられたものではなかった。どのみちわたしたちは彼らに近づけるものとは思っていなかった。会員制のクラブばかりでなく特定の地域からも非ハオレを締めだす規則や条例を認めていた。たとえばダイヤモンドヘッドやカハラといった一等地に住めるのもハオレだけだった。

朝日新聞記者が書けなかったアメリカの大汚点

2005-04-25 21:38:13 | BOOKS
近藤 康太郎 「朝日新聞記者が書けなかったアメリカの大汚点」講談社+α新書 2004.11.20.

はた迷惑な「俗流プラグマティズム」
 アメリカ人は、どんなに混迷が続こうが、ひとたびそれが「現実」になると、四の五の言わずに「現実」を受け止める心性がある。これを「俗流プラグマティズム」という。 真理や正義なるものが、現実にどう役立つのかがポイントだ。 一方でアメリカ人は、強烈なキリスト教精神があるとも指摘され、神の意志を地上にもたらす運命を自分たちが負っていると強く自覚しているから、ことは複雑になる。建前は真理や善を高くかかげ、やってることは現状追認の現実主義。そんなお国なのだ。
 イラク戦争を始める大義だった大量破壊兵器は、いつまでたっても出てこない。そもそもイラクは備蓄もしていなかったことが分かった。テロリストのアルカイダとイラクを結びつける証拠はどこにもない。確かにフセインは独裁者だったが、こんな独裁者をのさばらせたのはアメリカ自身に原因がある……。つまり、アメリカには、戦争を始める大義はなく、真理もなく、結果として、善でさえなかった。 2004年の大統領選直前、こうした事実は、アメリカ人の前にはっきり提示されていたように思う。
 「プッシュは、『サダムがいなくなったおかげで世界はより安全になった』と言っている。一方でケリーは、『サダムが残っていても世界は安全だったかもしれない』 と言っている。では、ケリーはイラクで死んだ1,000人以上のアメリカ兵に、君らは無駄死にしたとでも言う気なのか~ もし明日にでも戦争をやめるというなら、最後に死んだ兵士に何と説明するつもりなのだ?」 ニューヨーク・タイムズ紙のコラムニストが書いたこのたわごとこそアメリカ俗流プラグマティズムの本領だ。 「最後に死んだイラクの母子に、どう説明するつもりなのだ」という問いは、彼らからは一生出てこない。ったくアメリカ人って奴は……。
 俗流プラグマティズムの人と付き合う上では、こっちもそれなりの俗流処世術が求められる。 自らそうと信じる正義、真理、善を、本当にそうあらしめたいのなら、不正や嘘、悪行の限りを尽くして、アメリカをなだめ、さとし、何としても「現実」になる前に押しとどめなければならない。「現実」になっちゃあ、おしまいだ。 

空気のようにジャズが流れている。

2005-04-19 21:43:52 | NEWS


JR西日本 「神戸休暇へ。シティ・ハイク」 2005.03 

JRの神戸案内は洒落た物が多く、以前神戸に住んだこともあり、いつも楽しみにしています。見開きA4サイズで裏表6ページに情報満載です。今回の表紙は「ソネ」。ライブスポットの老舗。近くにあるYMCAのスカッシュコートで汗をかいた後、ビールと唐揚げを目当てに通ったものです。

幕末の毒舌家

2005-04-16 21:19:17 | BOOKS
野口武彦「幕末の毒舌家」 中央公論新社 2005.01.10.

大谷木醇堂(おおやぎじゅんどう)天保9年生まれ明治30年死去(1838-1897)近世世間に知られるようになったのは、三田村鳶魚が大正5年(1916)に刊行された近世随筆集成「鼠璞十種」に「燈前一睡夢」を収録してから。記録魔・書写魔の幕末のゴシップコラムニスト。世を拗ね、冷眼で見、白眼視する、不遇に生きた醇堂の偏見に満ちた眼差しは、不思議なレンズの働きをして幕末における社会と人間の真実をとらえる。特別に意地悪なアングルでしか人間を評価しないひねくれた眼の持ち主には、人間模様がまるっきり違ったかたちで見えてくる。ヒガミは立派に一つの史観をうちたてる。身体を動かさず、ただ評論するだけの旗本が幕末にはぞろぞろ出て、それが幕府をつぶしたようなものだが、醇堂先生はその点まったく人後に落ちなかったのである。醇堂先生の文章はゴシップの世界では水を得た魚のようになる。無責任な噂話にこそ裏返しのリアリティが生まれるという奇妙な筆力である。シニカルな物の言い様だが、「現在日本のこととして、最近やたらに外交関係の不祥事が相次いでいる。事件が報じられるたびに高級外交官の毛並みのよさが報じられた・・」と語る時、江戸っ子の筆者はどっぷりと醇堂先生に感化されてしまっている。慶応2年(1986)12月11日に発病して疱瘡と診断された孝明天皇は嘔吐や出血など大変な苦痛の末に25日の崩御に至った。時あたかも幕末の政争の最中、宮廷内反対勢力による毒殺説が生まれ、砒素による毒殺が言われているが、醇堂先生は思わせぶりに仄めかす。「近来、舶載の毒剤にモルヒネ、アトロヒネありて、人々これをおそるれども、その人すでに陛下の宮中に在りて知らざるぞ、うらめしくも不着意ならずや。」斬新な見解ではと述べる段になってはもはや一体となっている。次は野口先生の毒舌ぶりをご拝聴願いたい。

東アジア 文明の対話

2005-04-16 20:48:23 | NEWS
中野稔(文化部)「東アジア 文明の対話」日本経済新聞 2005.04.16.  

国際日本文化研究センターが中国の研究者と手がけた湖南省・城頭山遺跡発掘調査で、約六千年前の水田跡が見つかり、DNA分析で日本のコメと同じジャポニカと判明した。 安田善意日文研教授は「長江文明は、稲作漁労型という点で日本文明と共通する。」と語る。伊東俊太郎東大名誉教授は「非暴力」「共生」「格差の解消」を前提に「『東アジア海文明交流圏』がやがてできる」と語っている。 昨年九月の中国・蘭州で開かれたシンポジウムでは「調和型の東アジア文明の再評価を目指す」という内容の「敦煌宣言」を採択した。中国人研究者による日本文化の論考を集めた「〈意〉の文化と〈情〉の文化」(中央公論新社)の編著者の王敏(ワンミン)法政大教授は「マンガやゲーム、音楽、ファッションでも日本ブームが起きている。しかし、その担い手である若い世代の日本観は、親近感と憎悪感という二重性を持つ」と話す。「現代の東アジアが共有するのは、中国の古典思想と日本のポップカルチャーだろう。しかし、同じ文化だと思い込んでいると、違う面を見たときに反発してしまう恐れがある」と指摘する。相違点を踏まえ共通性を探る姿勢こそが求められているようだ。 

包括・継続的な支援必要

2005-04-15 22:44:35 | NEWS
宮本みち子 「経済教室 若年雇用への視点 下」日本経済新聞 2005.04.15.

若者の雇用をめぐっては、意欲の欠如や、コミュニケーション能力の不足という若者自身の問題だという認識があるが、一人前になるための社会の枠組みそのものが崩壊している。学卒と同時に職場に入り、そこで教育されて一人前の職業人、社会人となる仕組みは200万人を超すフリーター、同じく200万人を超す無業者の急増という事態を前に機能しなくなった。 
学卒後一貫して正社員に就いている20歳代の若者は半数に満たない。また、大多数が離転職を経験し、同じ職場に長く勤めようという者も急減している。  
欧米諸国は20%に達する失業率、貧困化やホームレスの増加から、無業者が若者政策の最重要課題となり、97年の欧州連合(EU)雇用サミットの「欧州雇用戦略」では「ニュースタート」と呼ばれる教育・訓練プログラムが採択された。 
英国では2001年コネクションズ・パートナーシップという組織が作られ、13歳から19歳の早期に学校を離れる若者を支援している。職業訓練の機会を与えて、就職へと誘導する従来の手法から、ボランティア活動や、音楽・スポーツ活動への参加や、学校に戻すなどの手法が主流になって、若者集団を一括して扱うのではなく、個人ベースのカウンセリングがとられている。 
いま我が国に必要なことは、欧米先進国の経験に学び、教育・生涯学習・就労・社会保障・家族・健康医療など、青少年の発達過程の障害を取り除き、長期継続的にフォローアップして自立させる支援を推進することであり、そのための社会的コンセンサスを形成しなければならない。

ニート、学歴・収入と関連

2005-04-13 21:45:40 | NEWS
玄田有史 「経済教室 若年雇用への視点 上」日本経済新聞 2005.04.13.

ニートは裕福な親が子どもを甘やかした結果、就業に無気力になったという批判は当てはまらない。
「フリーター」人口は2002年厚生労働省試算で209万人。一方通学も仕事もしておらず、職業訓練も受けていない独身の「無業者」は総務省統計局調査で213万2千人。10年で80万も増えている。
フリーターの多くはパートやアルバイトというかたちで就業している。求職活動を行なわない、あるいはそもそも就職希望すらない無業者が合わせて84万7千人もいる。最近注目を集めている「ニート」だ。このニートと学歴とに特徴的な関係が認められた。職を求める無業者に短大・高専・大学・大学院卒が4割弱いる。それに対し、就職希望しない無宿者は中学・高校卒が8割以上を占める。ニートの圧倒的多数が高等教育を受けていないのだ。特に経済的に苦しい、年収300万未満の家庭に高い傾向がある。
ニートという言葉の生まれた英国では恵まれない社会階層の若者ほどニートになるという認識があった。日本においても若年無業の増加は日本社会の階層化が進んだ結果と考えられる。

2ちゃんねる宣言 告発するメディア

2005-04-10 10:51:03 | BOOKS
井上トシユキ+神宮前.org 「2ちゃんねる宣言 告発するメディア」 文藝春秋 2001.12.10.

個人がホームページをつくるのは面倒くさく、人も来ない。ある程度人が集まっている掲示板があれば、そこに書けば他人に自分のホームページの存在を伝えられる。情報を知りたい人がいて、情報を言いたい人がいて、そこに「2ちゃんねる」という場所があって、上手くはまった。テレビを意識した「2ちゃんねる」は見ていれば情報がはいてくる。しかもテレビに比べたら物凄い低いコストで特定のジャンルの情報ルートができる。発信したい人と受けたい人がいれば済む。システムさえつくれば、あとはランニングコストもかからない。世の中、面白いニュースがいっぱいあるけれど、どこも取り上げないモノがある。でも、「2ちゃんねる」で誰かが取り上げると、それがニュースになる。一億総特派員だ。

「便所の落書き」と揶揄された匿名のインターネット掲示板。ブログの躍進した今、その役割は過去のものとなるのか?

日本のコリアン・ワールドが面白いほどわかる本

2005-04-10 00:01:01 | BOOKS
Kang Hibong 「日本のコリアン・ワールドが面白いほどほどわかる本」  樂書館 2001.11.16.

京都にも大阪や神戸ほど多くはないが在日コリアンが住んでいる。「元祖」渡来人たちも平安時代から住んでいたのだから、その歴史は千年以上。古都の地場産業である西陣織りや京友禅の下働きに従事し、京都駅に近い鴨川の河川敷に多く住んでいた。昭和30年代に「古都観光に来る人たちが、真っ先に目にするのがバラッックでは」と、新幹線開通に合わせ、駅からさらに南に下った河川敷へと立ち退かされる。その番地がない土地は今では新しい市営住宅に生まれ変わり、数こそ多くはないが評判の良い焼肉や韓国料理の店が九条河原町には固まっている。

日本人は在日コリアンをしばしば「向こうの人」と称する。でも、そろそろ「向こう」から「こっち」にやってくる時期がきているのではないだろうか。太古の昔から、日本列島は半島やサハリン、南西諸島から、様々な民俗がやってきて、共生することで、日本人の原型はつくりあげられてきた。日本こそまさに「共生」の国。その「共生」の象徴的な出来事が阪神大震災後の神戸市長田区で起こった。日本人と在日コリアンが互助精神を大いに発揮したのだ。メッセージ色の濃いコリアンタウンガイドブックだが、隣人を知るための良き手引き書となっている。

科学する店舗 第5章 未来の店舗作り

2005-04-09 22:14:18 | BOOKS
金井 真介 「科学する店舗 第5章 未来の店舗作り」東洋経済新報社 2005.03.17.

RFタグはRFID(Radio Frequency Identification)という技術に基づき、モノの認識を行う。このRFIDによって、ネット上でそのモノを追跡することが可能になる。Auto-ID ラボ・ジャパン所長の村井純慶應義塾大学環境情報学部教授と、「ユビキタスIDチップ」の坂村健東京大学大学院情報学科教授が双璧。RFIDタグは、シリコンチップと、データを無線で送信できるアンテナからなり、電源は内蔵されていない。電波や電磁波でRFIDに電源を誘電させてリーダーライターで読み書きする。1)非接触で読み書きができ、繰り返し使用可能2)複数のRFIDカードが存在しても、一度にアクセス可能3)バーコードと違い、表面が汚れていても、見えなくても読み書き可能これにより物流、経営の合理化が格段に進む可能性がある。このように企業にとってのメリットは計り知れない。ところが消費者にはメリットがないどころか、プライバシーの侵害が懸念される。店舗内ばかりか街中や個人の家の中においても個人の所有物を監視できる。政府による監視。ハッカーや犯罪者によって悪用されると大変だ。