太った中年

日本男児たるもの

米国からの自立

2010-04-23 | weblog

以下、The Journalより二見伸明氏のコラムを転載。

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今こそ、米から自立するチャンスだ

19日朝、テレビ朝日の番組で出演者たちが、前日の読売新聞一面トップのスクープ記事「『きちんと実現できるのか』"Can you follow through?"」を、鳩山退陣の絶好の材料だと、鬼の首を獲ったかのようにはしゃいでいるのを、鳥越俊太郎さんが、冷ややかな眼つきで「日本のメディアはアメリカの顔色をうかがい過ぎる」と厳しく批判し、徳之島での反基地集会は、沖縄のみならず、「米軍基地はいらないという日本人の気持ちを表していることを(メディアはアメリカに)伝えるべきだ」と、辛辣な口調で述べた。コメンテーターの三反園記者は鳩山批判を展開するつもりのようだったが、真っ当な反論に、返す言葉もなく「そうですね。鳩山さんが、(そのことをアメリカに)言えば、支持率が25%に下がることはないですね」とバツが悪そうだった。

「日本は属国だ」と米高官

読売の記事によると、12日の鳩山総理とオバマ大統領との非公式会談で鳩山総理が「日米同盟は大変大事だ。その考え方の中で今努力している。5月末までに決着する。大統領にもご協力願いたい」と述べ、大統領が「あなたは『私を信じてほしい(Trust me)』と言った。しかし、何も進んでいないではないか。きちんと最後まで実現できるのか」と強い疑念を示したということである。

まず、検証しなければならないのは、この記事の狙いである。私は外務省の幹部に「オバマ大統領は"Can you follow through?"と言ったのか。もし、言ったとすれば大変なことだ。これは、主人が召使に言う言葉だ」と質した。彼は「大統領はそういう発言をしていない。あの場に米国務省の関係者は一人もいない。通訳だけだ。国務省関係者は、又聞きの又聞きで、おそらく、大統領は"Can you"と言ったはずだと、多少はスピンをかける気持ちもあって、言ったのではないか」と答えた。私が「読売新聞が一面トップで報じた影響は大きい。国務省は日本をアメリカの属国なみに扱い、侮辱している。アメリカに何らかの対処を求めたのか」と聞き返したが、「総理がぶら下がり会見で、官房長官が定例の記者会見で、否定しているので、それ以外は何もしていない」とのことであった。それにしても、はからずも、米国務省の対日観の本音と本性が明らかになったといえよう。

読売はジャーナリストの精神を失った

読売新聞によれば「米政府の関係筋は、『本来は鳩山首相から、早期決着の約束を守れずに申し訳ないと謝り、自分の責任で必ず決着させると言うべきだった。(中略)大統領も堪忍袋の緒が切れたのではないか』」と言ったそうである。

沖縄は主権国家・日本の領土である。アメリカの植民地ではない。鳩山総理は、普天間基地の移設を沖縄県民、日本人の立場に立って、オバマと交渉すべきであって、むしろ、「なかなか、軍部を説得できなくて申し訳ありません」と謝罪すべきなのはオバマの方である。そのことを指摘するどころか、大はしゃぎしている読売は、アメリカの手先であって、「破廉恥」そのものである。なりふり構わず、日本の国益や名誉も考えず、「鳩山追い落とし」に狂奔する読売に暗澹たるものを感じる。読売はジャーナリストの精神を失っている。

ジャーナリズムの「小沢潰し=鳩山内閣打倒」のためのキャンペーンは、それにしても、異常である。そのスケールと執拗さ、「包囲網」の巨大さにおいて、戦後最大ではないか。日本のマスコミは、広告料収入の激減、読者の急減、視聴率の低下など、経営環境の悪化に苦しめられ、またぞろ、「いつかきた道」に戻る方向に走りはじめているのではないか。

そして、オバマの背後に、大統領ですらどうにもならない、アメリカのネオコン的な牢固とした覇権主義的国家観、人種差別観を見るのである。

私は国粋主義者、人種差別論者ではない。むしろ、嫌悪感を持っている。私は、真の愛国者、真の民族主義者とは、日本人として、日本の歴史、文化、伝統に誇りと愛情をもつだけでなく、全ての国、民族を心から尊敬し、愛することのできる者だと思っている。そうでなければ、複雑な国際社会で、日本は安心して生きていくことが出来ないことを知っているからである。オバマ大統領は、独りよがりの正義を振りかざしているアメリカを、他国と協調、共生するアメリカに改革する崇高な理想を掲げた「ニガー大統領」(注:ニガーとは黒人の蔑称)のはずである。オバマは、沖縄や徳之島の反対運動は、日本人の総意だと認識し、謙虚に日本の声を聴くべきである。

覇権国家の絶対的条件は、戦争の費用は自前で持つということである。しかし、アメリカは、自前で戦費の調達が出来ず、イラク戦争、アフガン戦争の費用を日本など諸国に依存した。日本がアメリカの国債を「買ってやった」から、戦争が出来たと言っても過言ではない。アメリカの世界戦略は、ベトナム戦争以来、すべて失敗である。それに、唯々諾々と従ってきたのが、戦後65年の日本外交史である。カレル・V・ウォルフレンのいう「世界史上、例を見ない"宗主国と属国"の関係」である。むしろ、「普天間問題」はアメリカから「自立」「独立」する、またとないチャンスだと思う。

「普天間問題」は、煎じつめれば、(1)国外移転(2)(中身は不明だが)鳩山案(3)アメリカと自公が合意した辺野古案しかない。昨年暮、鳩山総理が「普天間問題」を今年に先送りした時、新聞、テレビは一斉に、「辺野古案」で決着しない鳩山の決断を「日米同盟の危機」と騒ぎ立てた。マスコミと自民・公明は「辺野古案」支持である。鳩山総理は、ベストは「国外移転」だが、次善の策として、「辺野古案」より負担の少ない解決策を模索している。マスコミのずるさは、自分たちが「辺野古案」支持者であることをほっ冠りして、鳩山案を潰すため、世論を煽っていることである。国民はマスコミの扇動的な報道に惑わされることなく、成り行きを冷静に見つめてもらいたいと思う。

自民党は、石破元防衛相を中心に、アメリカの日米安保でメシを食っている高官や元高官たちと手を携えて「鳩山潰し」にやっきになっている。鳩山総理はアメリカ、自民、公明、マスコミに包囲され、集中砲火を浴びせられているのだ。知事や市町村長、国会議員、地方議員は、わが町に移設されれば、半狂乱になって反対するが、そうでなければ、口先だけで「沖縄」に同情するのである。本来であれば、知事たちが先頭に立って「国外移転」をアメリカに働きかけるべきではないのか。それが、「日本人の絆」というものだ。しかし、鳩山総理の稚拙とも見えるやり方は、意図的か、結果としてかはともかく、全国に「海兵隊はいらない」の気運を高めたといえるだろう。鳩山総理は国民の大多数の意思を追い風にして、オバマ大統領に日本の要求を認めさせるべきである。

海兵隊は日本を守らない

昨年暮、THE JOURNALに寄稿した拙文「日本のマスコミもアメリカも、頭を冷やして考えよ」で、私は、沖縄の海兵隊の任務は、日本の安全保障ではなく、在韓アメリカ人の救出であると指摘したが、21日の党首討論で、谷垣総裁は「(朝鮮有事の際)非戦闘員(注:在韓米軍家族)の救出」と明言した。国民の知らないうちに、自公政権はアメリカの都合に合わせて「抑止」の概念を変質させていたことを銘記する必要がある。

昨年2月、小沢一郎民主党代表(当時)は、訪日したクリントン国務長官に「両国で世界戦略を話し合い、その合意の上で個別問題に対応することが大事だ」と述べた。このようなことをアメリカの要人に通告した政治家は、小沢が初めてである。日本は、かつての「一国平和主義」に逆戻りすることは出来ない。憲法の範囲内で、日本は、例えば、極東アジアの平和のために、北朝鮮の核問題解決のために、積極的な役割、具体的な行動を自ら決める覚悟がなければならないのである。

逆風ではない、抵抗勢力のあがきだ

舛添新党が出来るそうだ。自民党は小骨、中骨が抜け落ちて、無惨な姿になりつつある。しかし、戦後の混乱の一時期を除いて、新党で成功したのは小沢一郎だけである。彼には「日本改造計画」という骨太の理念と国家像、社会観があり、(今も続いている)彼を葬り去ろうとする陰険な策謀、弾圧に動じない強靭な精神がある。雨後の竹の子のように出てきた新党に、付け焼刃ではない、持続性のあるグランドデザインと不撓不屈の精神があるのだろうか。あれば、民主主義にとって、歓迎すべきことである。
 
正論は、多くの場合、初めは「異端」である。ガリレオの「地動説」、アインシュタインの「相対性理論」、然りであった。フランス革命、インド独立、明治維新も、当初は「異端」だった。小沢一郎の「日本改造計画」は、今では、表面的には常識化しつつあるが、17年前は、強烈なエネルギーをもつがゆえに、強烈な逆風にさらされた「異端」だった。今、民主党には厳しい風が吹きつけている。しかし、これは、逆風ではない。逆風とは、失政に対する有権者の叱責だからである。この風は、「革命」が法則的に直面する、守旧勢力の最後のあがき、「抵抗の風」である。

「小沢革命」と守旧勢力の決戦場は7月の参議院選である。

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