サイレント・クーデター

「ん？クーデター？ああ、起こってるよ。でも周りの人はみんな歓迎してるな。クーデターっていうよりも、民の怒りが沸点に達した末の革命みたいなもんだよ。タクシンに怒ってる人は多かったし。それに、噂じゃ国王が黙認してたって話だしな。何だかんだいってタイでは首相より国王の方が人気あるし、神聖視してるから、その国王が黙認してるんなら安心・・・って気持ちがあるんだろうな。それに、タイでのクーデターは、日本で今やってる総裁選みたいなもんだよ。戦後から１５回近くもクーデターが起こってるんだぜ？タイの政権交代の方法だよ。まあ、大概クーデター側に正義があるからいいんじゃね？」と、タイに住んでいる友人がのん気な口調で喋ってくれた。

ということで、タイでクーデターが起こった。

＜タイ・クーデター＞平穏なバンコク　観光客が記念写真も

＜タイ＞クーデターは成功　国王も黙認か

クーデターのタイ陸軍が現行憲法停止、全土に戒厳令も


タクシンの親族経営は、結果的に富・権力の一極集中を招き、国民も軍もそれに不満を感じでいたわけだから、今回のクーデターは概ね好意的に受け止められている。
厳戒令が布かれ、現行憲法は停止されているが、

市民や観光客が周囲に集まり、記念写真を撮る

北門周辺には１５人ほどの兵士が詰めているが、時折タバコを吸ったり、談笑したりしている

完全武装して戦車の前に立つ兵士を「よくやったね」と激励、一緒に写真に収まった。社員は「タクシン首相は嫌い。首相一族は不透明な株取引で大もうけをしたから」と笑顔で語った


といった感じで、軍に対する恐れが全く無いという、他国では考えられないほど平和なクーデター。

クーデターは民主主義を損なうかもしれないが、時と場合によっては正当化される・・・。今回のクーデターは、まさに正当化されるクーデターの良い例かもしれない。

勿論、クーデターが成功したからといって、軍部がそれによって権力を握り、タクシンと同じように富権の一極集中を図ったら、泥沼化するだろう。
ソンティ陸軍司令官は、あくまで軍統治は一時的なもの、と言っているが、彼の真意や実力はこれから試されるだろう。