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とりとめのないメモの山

Rana catesbeiana:

2009-07-09 00:00:00 | biologie*


ウシガエル Rana catesbeiana Shaw, 1802

 脊索動物門 Chordata
 脊椎動物亜門 Vertebrata
 四足動物(四肢動物) Tetrapoda
 両生綱 Amphibia
 平滑両生亜綱 Lissamphibia
 無尾目(カエル目) Anura
 ナミガエル亜目 Neobatrachia
 アカガエル科 Ranidae
 アカガエル亜科 Raninae
 アカガエル属 Rana

   
Calcaneus:踵骨  Clavicle:鎖骨  Coracoid:烏口骨  Fiburale:腓側足根骨  Femur:大腿骨  Frontoparietal:前頭頭頂骨  Humerus:上腕骨  Illium:腸骨  Ischium:坐骨  
Maxilla:上顎骨  Nasal:鼻骨  Occipital:後頭骨  Premaxilla:前上顎骨  Parasphenoid:副蝶形骨  Prootic:前耳骨
  Pterygoid:翼状骨  Quadratojuggal:方頬骨  Radioulna:橈尺骨  Sacrum:仙骨  Scapula:肩甲骨  Suprascapula:上肩甲骨  Sternum:胸骨
Squamosal:鱗状骨  Talus:距骨  Tibiale:脛側足根骨  Tibiofibula:脛腓骨  Urostyle:尾骨(尾柱)   Vomer:鋤骨


この標本は、私の骨格標本作製史黎明期に手がけたもので、
当時はまだ勝手が掴めておらず、指骨などはだいぶバラバラになってしまった。
頭や体幹はそれでも組み立てられたが(カエルは肋骨もないし、特殊化して単体の骨が強くて大きいので初心者向きだ)、
さすがに足先は、前後左右の四肢それぞれ別個に処理したのでこれらが雑じることはなかったが、混乱したままだった。
ここまで組み上げたのはごく最近。
欠損しちゃってどうしても足りないパーツの一部は、楊枝などを削って自作し、補完している。

   

カエルの体は非常に特殊化している。
両生類の代表格であるかのように捉えられがちだが、おそらく"両生類(Amphobian)"、
特に平滑両生亜綱(Lissamphibian)で定義される体制としては、
もっとイモリやサンショウウオのような有尾類(Urodela)が基本形になっていて、
より陸生に特化して跳躍運動とか極めた結果、こんな異様な形が独自のニッチを獲得して大成功を修めたのだろう。
現生種での種数や分布域は、有尾類や無足類を大きく上回っている。
幼生(オタマジャクシ)との形態差も非常に大きくなり、変態前後ではまるで別生物のようになっている。

著しく胴が短縮し、数少ない太短い脊椎骨には肋骨がない。
仙椎は1つだけで、尾椎はと言えば完全に癒合して、尾柱(Urostyle)になってしまっている。
腸骨がこれまた異様に長く、尾柱の後ろまで伸びてこれを覆っているため、
見た目にはカエルには尾が全くなくなっているように見える。

前肢では橈骨(radius)・尺骨(ulna)が癒合し、後肢では脛骨(tibia)・腓骨(fibula)が癒合。
それぞれ橈尺骨(radioulna)と脛腓骨(tibiofibula)になっている。
  脊椎動物の骨の場合、単一の運動に特化した条件では、隣接する骨同士が癒合したり、一方のみが肥大化したりして
  自由度を犠牲にしながら、行動を更に特殊化させる傾向が見られる。
  鳥の前後肢もそうだし、哺乳類だと偶蹄類やウマの脚が好例。
  カエルの場合も著しく跳躍運動に特化した結果と言えそうだ。
足根骨 { 脛側足根骨(tibiale)・腓側足根骨(fiburale) 。 (日本語訳はオリジナル。合ってるかどうか??)
それぞれ 踵骨(calcaneus)・距骨(talus) と表記してある場合もあり}までもが長く伸び、
足首の複雑な運動を捨ててまで特殊化した、異様な形状を持っている。
両方とも近位足根骨(proximal tarsals)と表記されている場合もあるが…
…要は足根骨が超特殊化して長く伸びたのである。
一見するとほとんど脛骨(tibia)と腓骨(fibula)のようにも見えてしまうが、
それより中軸側に、棒状の骨が既に2本ある(つまり、大腿骨と脛腓骨)ため、
いざ、他の動物と比べようとした時に「ん?なんじゃこれ~!?」と、後肢は一瞬戸惑う部位でもある。 →足根については豚足骨格も参考までに

更に、よく6本目の""を見つけて騒ぐ人がいるが(ex.昔の私です)、
あれは手根骨や足根骨の二次的な伸長、prehalluxであって、"パンダの親指"とほぼ同様と考えていいかな。

   
ちなみにこの個体はメス。
もちろん解剖すれば分かるのだが、
カエルの場合外部からでもそれが分かることがある。
抱接の時にオスがメスの腹をグッと押して卵を出すのを助ける種が多く、
大概そういう種のカエルのオスは♀に比較してマッチョな前肢をしているように見える。
更に前肢の掌に婚姻瘤と呼ばれる"抱きタコ"が出ることも少なくない。
ただし、これらが見られないからと言って♀である証明にはならないので注意。
 ウシガエルの場合、♀の鼓膜が眼の大きさぐらいしかないのに対して、♂ではかなりデカイので区別できたりするが。


さて、カエルの背骨には上記のように肋骨(rib)もなく、(横に突き出ているのは横突起(transverse process, pleurapophysis)であり、肋骨でない)
ガッチリして可動性も小さいが、
反面、体幹の脊椎(vertebrae)と腸骨(ilium)の間の仙腸関節(sacroiliac joint)がよく可動するようになっていて、
跳躍に大きな役割を持っている。
   
ばびょーん。と。


ちなみにウシガエルは食用ガエルとして北米から移入され、
その後、持前の体のデカさと気性の激しさと繁殖力の強さで、あっという間に世界中に定着した、
謂わば帰化動物の代表格である。
美味しいんだけど、小川で手のひらサイズのオタマジャクシなど見つけた日には、ちょっとビックリする。

    
ガオー。
結構気が荒くて力が強いので、屋外で見つけても不用意に苛めないでね。


BLOG内LINK:
  ・specimens: その他の収蔵標本。
  ・
vertebrata:0102 脊椎動物。

 =  National Geographic:News =

References:

『日本動物解剖図説』
 広島大学生物学会:編   池田喜平 稲葉明彦:監  (森北出版株式会社, 1971)
『バイオディバーシティーシリーズ7 脊椎動物の多様性と系統』
 松井正文 :編集,  (裳華房, 2006)
『Functional Anatomy of Vertebrates: An Evolutionary Perspective 3rd. edition』 (Hardcover) 
 Warren F. Walker :著/編, Karel F. Liem :編  (Brooks/Cole Pub Co, 2000)


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