fantasia*diapsida

とりとめのないメモの山

the dawn of the dinosaurs:02

2010-08-11 00:00:00 | biologie*

01:よりつづき 


ファソラスクス・テナックス(Fasolasuchus tenax) 
  双弓類 Diapsida
   主竜類 Archosauria
    クルロタルシ類 Crurotarsi
     ラウスキア類 Rauisuchia
 
レッセムサウルス・サウロポイデス(Lessemsaurus sauropoides)
  双弓類 Diapsida
   主竜類 Archosauria
    恐竜類 Dinosauria
     竜盤類 Saurischia
      竜脚類 Sauropoda
       古竜脚類 Prosauropoda
 
  
クルロタルシ類の中でもラウイスクスに属すファソラスクス(手前)が、恐竜レッセムサウルス(奥)に襲いかかるの図。
何れも発掘された化石は断片的だが、近縁種から推測するとこのような姿になる。
捕食動物としても、植物食動物としても、三畳紀後期の南米では最大級のものだ。

互いに主竜類の中で栄華を極め、それも非常によく似た、収斂的な進化をしたクルロタルシと恐竜。
それは完全に直立歩行に特化した脚の付き方や、
恐らくほぼ同時期に陸上脊椎動物としては初めて行った二足歩行、
更には、現生哺乳類でさえ圧倒的に凌駕する超効率的な呼吸様式
  (現代的定義による"気嚢式呼吸"とまでは行かないまでも、
   この時代の両者は既に、体に分散した空気の袋を巧みに利用して、肺(肺管)に絶えず一方通行で空気を送る、
  我々に一般的な"空気入ってーまた出して―"を繰り返す方式より、遥かに複雑で機能的な呼吸を獲得していた可能性が高いという)

など、様々な点で非常によく似ていたが、
決定的な違いもあるにはあった。

1つが後肢の大腿骨-骨盤の股関節で、
つまり、両者とも脚は体の軸から真っ直ぐ垂直に下向きに伸びるのだが、
恐竜の場合、大腿骨頭が大腿骨の長軸方向から横向きに張り出して、骨盤の寛骨臼に真横からカポッと嵌るのに対し、
クルロタルシ(中でもラウイスクス類)は、大腿骨頭は大腿骨の長軸に対し延長線上にあって、骨盤の寛骨臼周辺そのものがグイッと腹側に曲がっている。

他には例えば、
下のように足根で容易く見分けることができる。
 
クルロタルシの足首の関節(写真ではファソラスクス)は、現生ワニや、まぁ我々哺乳類ともパッと見の形は似ていて、
距骨(talus)が,脛骨(tibia)-腓骨(fibula)と合一し、踵骨(calcaneus; 上矢印の踵に突出た骨)が足指と合一して、
距骨-踵骨 の間で足首の関節をつくる。
 {哺乳類は普通、<脛>-<踵骨-距骨-足>の間で関節を作る…ように思う}
対して恐竜は(写真ではレッセムサウルス)、距骨と踵骨が両方とも脛の骨と一体化し、
足先-これら足根骨 との間で平面的に足首の関節をつくっている。
          ↓下の『恐竜 2009』のときのスピノサウルスの三角形の踵骨が典型的で分かりやすい。
 
我々の脚はアキレス腱が踵骨に付いているが、
現生鳥類の脚は、脛から足根から足指までもが一続きに強靭な腱で繋がり、膝を曲げれば自然にそこから先も連動して動くようになっているため、
踵骨は我々のようにテコのような形をしている必要はないのだ。
この歩行様式も既に恐竜で確立していたんだろうなぁ。

ファソラスクスのアップ☆
   
ところで、クルロタルシの鼻孔の後ろ、前上顎骨(premaxilla)と上顎骨(maxilla)のちょうど境目には、
よく比較的大きめの開口部がポッカリ開いている。
Gower, D. J. (2000): Rauisuchian archosaurs (Reptilia, Diapsida): An overview. -. N. Jb. Paläont. Abh., 218: 447-488 などで調べると、
これは"premaxilla-maxilla fenestra"、ないし"subnarial foramen"と呼ばれ、多くのクルロタルシに一般的なようだが、
特に系統に従ってどうのこうのということはなく、
またヘレラサウルス(Herrerasaurus)など恐竜にも散見されることから、homologyというよりはhomoplasticな構造である可能性が指摘されている。
試しにWeishampel『The Dinosaurua』2nd. などをパラパラしてみると、意外とアロサウルス(Allosaurus)などにも似たようなものがありそうな気分だ。





ヴェナティコスクス・ルスコニイ(Venaticosuchus rusconii)
 
 羊膜類 Amniota
  双弓類 Diapsida
   主竜類 Archosauria
    クルロタルシ類 Crurotarsi
     オルニトスクス類 Ornithosuchia
 

  
鼻曲がりタイプのクルロタルシ。
前上顎骨-上顎骨間にこうした括れのある動物は他にも多く、
恐竜のディロフォサウルス(Dilophosaurus)類とかスピノサウルス科(Spinosauridae)などもたいへん特徴的だ。
個人的にはとても気になる形態なので、主竜類以外に四足動物でこういうのいねぇかなぁと軽ぅく探索中。
そういえば現生のクロコダイルもよく見るとここが少し括れ、下顎の歯がスポッと嵌っている。
今回の展示会の生体復元では、ヴェナチコスクスのこの位置の歯は完全に露出してイノシシの牙のように復元されているが、
個人的には化石から見て、余裕で唇で覆い隠されていたような気がするなぁ。


エクサエレトドン・フレングエリ(Exaeretodon frenguelli)
 単弓類 Synapsida
  獣弓類 Therapsida
   キノドン類 Dicynodontia
 

 
今回の生体復元部門のMVPでしょう(笑)。
ポスターの段階から「なんじゃこの人面犬」と賛否両論だったが、
抜群の個性で覚えられまくって、なぜか巷ではキモカワと隠れた人気が出ているらしい…(笑)。
せんとくん戦略か。
骨格は前回:01で載せたが、
あの骨格からヌメッとした紫色の肌に所々生えた湿ったような黒い体毛(ゲハラみたいだ…)、
どうもわざと気持ち悪く復元したとしか思えないのだが…。
しかしライオンやトラを骨だけから完璧に鬣の生え方から模様まで復元するのはまず不可能であるように、
化石の復元も可能な範囲とそうでない領域があるものなので、
では可能でない領域をどう表現するかというのは、難しい問題なんだろうなと思う。
だったらコイツをワザワザ気取って哺乳類っぽく愛らしくする必要も、まぁないっちゃないわけか。
俺も段々カッコよく見えてきたよ…。



プロベレソドン・サンユアンエンシス(Probelesodon sanjuanensis)
 単弓類 Synapsida
  獣弓類 Therapsida
   キノドン類 Dicynodontia
 

 
哺乳類ではないのだが、
しかしもうここまでくると普通に"ちょっと変な哺乳類"である。




フレングエリサウルス・イスキグアラステンシス(Frenguellisaurus ischigualastensis)
 双弓類 Diapsida
  主竜類 Archosauria
   恐竜類 Dinosauria
    竜盤類 Saurischia
 
イスキグアラスティア・イェンセニ(Ischigualastia jenseni)
 単弓類 Synapsida
  獣弓類 Therapsida
   ディキノドン類 Dicynodontia
 

  
奥のフレングエリサウルスは恐竜だが、ヘレラサウルスの大きい版個体なのでは?という話も無きにしも非づ。
今回生体復元に関しては、どうも古典的というか…独特の古き良き"怪物っぽさ"がチラホラ見えるため、
好き嫌いが分かれるかもしれないなぁ。


―糞石。
 



 03:へつづく....  

 
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<weblog内-関連記事LINKS:>

 ・dinosaur expo 2009:01 
 ・
disosaurs of gondwana 2009: 大恐竜展 知られざる南半球の支配者@国立科学博物館
 ・
palaeo-skeletalis: 大恐竜展 知られざる南半球の支配者 @ 大阪市立自然史博物館
 ・
dinosaur museum:1 福井県立恐竜博物館

 
specimens: うちの収蔵標本。

 ・
vertebrata:01 脊椎動物




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