一杯の水

動物であれ、人間であれ、生命あるものなら誰もが求める「一杯の水」。
この「一杯の水」から物語(人生)は始まります。

「ヴァラナシ(2)」――ヴァラナシの現在――

2007年02月17日 11時23分20秒 | ヴァラナシ(ベナレス)
数え切れないほどの、古の記念碑に関する様々な記述に接すると、この都市は、ただ単に、過去に生きているのだ、と考えるかも知れない。しかし、それは誤解であろうし、実際のところは、現在もなお、とても生き生きとし、大変な活気に満ちているのである。これは、現在のヴァラナシに関する下記の事実から明らかである。

ヴァラナシ市には、ヴァラナシ県(district)とヴァラナシ行政区(division)の本庁が置かれている。2001年の国勢調査(census)によれば、ヴァラナシ市の面積は79.06平方キロメートル、人口は13,02,250人を数える。インドの国内外を問わず、あらゆる類いの人々が、そのごった返したストリートに見受けられるだろう。地元の人々は西ボジプール語(Bhojpuri)のヴァラナシ変化形(version)を語り、公用、ビジネス、そして出版においては、カリー・ボーリー(ヒンディー語の前身であるヒンドゥスターニー語の祖語)も用いられる。他の言語、ウルドゥー語とベンガル語は、とりわけ、イスラム教徒間とベンガル人同士でのみ用いられる。ヴァラナシ市は、91の区が合併した一つの地方自治体を、その管轄下におく。新しいビルやストリートの建設も続いており、特に郊外で、それが現代的な景観を呈している。それにもかかわらず、無数の狭い路地や横丁、そして古い館は、依然として、ヴァラナシの古き町並みを保っている。

ヴァラナシは、水上交通、高速道路、鉄道、そして航空事業の巨大なネットワークを通じて、他の世界と連絡している。これらの遠方の地域との関係以外にも、必需品となる食料や商品の移入、そしてヴァラナシの製品を他の田舎や地方に移出するために、広大な内陸部ともつながっている。

ヴァラナシは、数え切れないほどの礼拝所と修道院からなる壮大な宗教的混淆を享受する(enjoy)。世界に見られる主要な宗教の信徒のほとんど、すなわち、ヒンドゥー教徒、ジャイナ教徒、仏教徒、キリスト教徒、イスラム教徒とこの都市で出会うことができる。教育機関に目を転じると、有名な4つの総合大学と多数の単科大学、ハイスクール、小学校、古典学習のための伝統に則った専門学校、そして公立図書館などの、数々が挙げられる。

この都市の文化的特徴は、様々な面(次元)を持つ。一年を通して開催される非常に多くの縁日と祭り、そこに集い、演奏と歌と踊りにふける多くの音楽家や芸術家、入念に準備された食事と飲み物。そして、スポーツやその他の娯楽である。出版物は夥しい。様々な言語、特に、ヒンディー語と英語で書かれた新聞や雑誌が定期的に発行される。異なる言語で出版される文学、科学、テクノロジー、そして美術品に関する学術書もまた、この都市の栄光と名声に加えられる。

下水処理(sewerage)と公衆衛生の様々な公共サービス、東洋医学と西洋医学それぞれの専門医が常駐する健康センター、病院、そして老人ホーム、水道局、電気局、郵便局、そして電気通信(telecommunication)サービスの全てを、ヴァラナシでは利用できる。

大小両規模の工業(industry)、家内工業、銀行業、大小の市場、そしてあらゆる類いの商品を扱っている無数の商店が見つかるだろう――近代的な都市であれば備えているほとんど全てが。

法と秩序は、都市中に設けられた警察署によって維持されており、郊外には軍の基地、すなわち宿営地もある。

要するに、これが現代ヴァラナシのアウトラインであり、他の大都市となんら変わるところなど見あたらない、と考えられることだろう。しかし、読者は、それならば何故、この都市が「黄金のカーシー(ヴァラナシ)」と語られてきたのか、あるいは、何故、ヒンドゥー教徒によってかように神聖視され、大いに尊重されてきたのか、と尋ねずにはいられないだろう。

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「ヴァラナシの今」を知るには、SUZYさんのブログ「インドの暮らし VARANASI DIARY」が最適!
皆さんもぜひ訪ねてみてください。

<関連記事>
「ヴァラナシ(1)」――都市の第一景――
「ヴァラナシ(2)」――ヴァラナシの現在――(当ページ)
「ヴァラナシ(3)」――ヴァラナシの独自性――
「ヴァラナシ(4)」――名称の由来――

このたび、当ブログメインサイト、「Hinduism & Vedanta
に「ヴァラナシ」第1章全訳をアップ致しました。是非ご覧下さい。



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4 コメント

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Unknown (たかはし)
2007-02-18 18:06:58
年中開催される縁日に祭り、歌と踊り、様々な人種と宗教・・、ほんとに興味深いですね。
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たかはしさんへ (便造)
2007-02-19 02:15:37
いつもコメントをありがとうございます。

わたしもいつか、ヴァラナシの、その「聖なる混沌」の中に身を浸したいと思っております。

はるか昔にヴァラナシ行ったときには、「聖都をものにする」という気合が足りなかったように思います。
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大河のうた (mugi)
2007-02-22 20:58:52
こんばんは。

ヴァラナシですが、サタジット・レイ監督の映画「大河のうた」でも舞台になりましたね。
主人公オプー一家がそこで暮らしており、オプーの父がガンガーで沐浴してました。

それにしても、世界の様々な宗教寺院が混在するのは、ヴァラナシのすごさですね。
巡礼者や観光者が集まる地なので、結構日本人はカモにされていると聞いてますが、インドで最も訪れてみたいところです。
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Re:大河のうた (便造)
2007-02-22 22:18:50
mugiさん、こんばんは。

>オプーの父がガンガーで沐浴
確かにそうでしたね。(「オプー三部作」はVHS並みの画質にもかかわらず、DVDまで購入してしまいました・・・・・・。)
しかし、最近の報道を見ると、あのような沐浴風景が見られるのもいつまでなのだろう、と暗澹たる気持ちになります。

先日「大腸菌が意外に少ない」と書いたばかりなのですが、工場排水などによるガンガー(とヤムナー河)の汚染の実態はかなり深刻なものらしいです。
ご存知かもしれませんが、ニュースサイトのアドレスを張っておきます。

http://www.afpbb.com/article/1275153

このままでは、ヴァラナシに限らず、ガンガーでの沐浴の風景が見られるのも後わずかかもしれません。

>世界の様々な宗教寺院が混在
ヴァラナシは、インド・中東に興味をお持ちのmugiさんにとって、大いにそそられる街かも知れませんね。
私といえば、先日、古本屋で「イスラーム辞典」を手に入れたばっかりです。ここにきて、翻訳のためにイスラムも少し勉強せねば、と思っています。

>日本人はカモ
これは、もう、ブッダガヤが酷いですね。
ヴァラナシで仕入れた10円もしない数珠を、3000円程度で、仏跡ツアーの日本人観光客に売っていたぐらいですから。(ずいぶん昔の話です。)

しかし、私はインド人と値段の交渉をするのが面白かったです。日本に帰ってくると、買い物をする楽しみがなくなって、さびしかったものです。




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