私が踊るレストランのマネージャーの1人は、強面でしかめっ面。でも案外真面目で、とってもいい奴な彼の名前はモハメッド。イスラム教の国にはよくある話だけれど、イスラム教の経典コーランの預言者であるモハメッドにちなんで、たくさんの人がモハメッドと名付けられるということもあり、彼は別名リダウイと呼ばれる。モハメッドという人物の多さは、私の友達でモハメッドという名前の人物が何人いるか把握できてないくらいに立証されている。
そんなリダウイが、1週間ほど前、私に問う。
「君の契約はいつまでなんだ」
「3月18日に終わって19日に発つよ」
フランス語で‘apres’(アプレ)とは英語でいう‘after’とか‘later’とかという意味。
また、フランス語の‘avant’(アヴォン)は、英語で‘before’となる。
そしてこのリダウイ、英語にすると、よく‘apres’と‘avant’がこんがらがるよう。
話しの続きはなんだろう、と思っている私に続けて
「君が発つavantにケーキを用意する」
そして英語で「君が発つafterにケーキを用意する」と言う。
・・・私が発った後、ケーキを用意する・・・。
それは私が発ったことを祝福するケーキなのか・・・
ちょと気になり指摘する。
「英語で‘avant’はなんだ?‘after’じゃないのか?いやいや、間違った。beforeねbefore」と訂正する彼。
良かった。いなくなったことを祝われるケーキじゃなくて。
という思いの上に、そんな粋な計らいを提案してくれるなんて、と軽く感動を覚えるのだけれど、ここで終わらないのがアルジェリア。
先日、またまたリダウイ。
「マリコ、僕は3月1日からバカンスに入る。25日間だ」
「へー・・・え?じゃあ私が発つのはあなたのバカンス中だよ」と言う私、
「何だって?・・・そんな・・・」
ってそんな悲しそうに驚いたしゃべり方はしないでおくれよ。
だいたいケーキはどうしたんだい、ケーキは。
あの、上の会話したの、つい1週間ほど前なんですけど・・・。
と、リダウイに言いたい。