先日の2014年度グラミー賞で、最優秀R&Bアルバムを受賞した、BABYFACEとトニー・ブラクストン。私も昨年リアルタイムに購入した数少ないアルバムだったのでうれしかった。R&Bアルバムチャートでも、ビヨンセから首位も奪い、グラミーという同業者からも評価された作品となります。
今風のSOUNDでもなく、両者とも90年代に頂点にたったアーティスト。今の時代にそぐわない作風かとも思いましたが、アルバムの完成度は素晴らしかった。それが評価されるUSAのリスナーと音楽シーンはすばらしい。
日本で音楽シーンが盛り上がらないのも、あのまったく権威のないレコード大賞(基準も不明瞭)にもあると思う。グラミーのようなプロ中のプロが評価する場がない。だから日本のリスナーも育たない→いい作品が売れないという悪循環にもなるんだと思う。
今回、この2人のDUOアルバムが発表されるということ事態が想定外でした。FACEも最近ソロアルバムも出していないし、Produce Workも減り、かつてのようなメガヒット曲もない。
そして、ポスト・ホイットニー・ヒューストンと言われ、グラミーでも最優秀新人賞や最優秀R&Bボーカルも数回受賞しているトニー・ブラクストンも、全盛期の勢いはなく、98年には6億円近い負債を作り自己破産までもしている。98年といえば、まだヒットを連発している頃。なんで?と思ったら、けっこうな個人的な浪費によるものらしい。
さらに2010年には、5千万ドル(60億円??)で二度目の自己破産って・・・ちょっと桁が違うんじゃないのって驚いた。今回のはラスヴェガス公演を体調不良によりキャンセルした違約金らしいけど。
そんなトニー、体調不良や金銭、契約トラブル等業界に嫌気がさして引退を考えていたところ、それを知ったBABYFACEがその才能を終わらせるのはまだ早いということで、今回のDUOアルバムの話に発展したそう。
そしてトニーも今の素の自分を表現することで失われていたインスピレーションも蘇り、『Love, Marriage & Divorce』(恋愛、結婚、離婚)というコンセプトアルバムにいきつく。
2人の共演は、92年に遡る。
トニーは、BABYFACEとLAリードが立ち上げたLAFACEレーベルの歌姫としてデビューアルバムを発表する前に、エディー・マーフィー主演のサントラ『ブーメラン』からの「Give You My Heart」でBABYFACEとDUOデビュー。軽快な愛の賛歌曲(R&B-2位、HOT100-29位)でした。
そして翌年、満を持してLAFACEレーベル最初のディーバとしてアルバムを発表。
ここからはLA&BABYFACEがProduceした曲も含め6枚のシングルヒットを生み、グラミーでも最優秀新人賞を獲得します。今でもこのアルバムが一番好きって人も多い。
この後も、トニーはBABYFACEがProduceした「You’re Makin’Me High」(2nd『Secrets』96年収録)でHOT-100で1位を獲得。またDavid Fosterが手がけた「Un-Break My Heart」は11週1位を記録。3rd『The Heat』(00年)からはRodney Jerkinsの「He Wasn't Man Enough」も2位。ただLAFACEから離れた02年以降ビックヒットに恵まれず。
そんな2人が22年を経て再び、このような甘いだけではない愛をテーマにした作品を発表するのです。
BABYFACEなんて、超ジェントルマンでフェミニストだと思うんだけど、13年連れ添った妻・トレイシーと離婚している。
このトレイシーって美人で実業家としても相当なやり手で、なんか家で夫の帰りを待つって感じの女性の印象はなく、個人的にはフェイスとの相性はどうなんだろう?って思う所はあった。FACEとの離婚後も、エディー・マーフィーと再婚という話も出てたし。
一方、トニーの方も、Jam&Lewisが主催したPerspective Recordが送り出したMint Conditionのメンバー、ケリ・ルイスと01年に結婚し、夫婦でCreativeなアルバム制作にも臨んでいたけど、彼女も13年に正式に離婚。そのトニーもエディー・マーフィーとの交際報道が出てるし。どーいうこと~??
2人とも、まさにこのアルバムのテーマをそのまま体験しているという事なのです。
BABYFACEは55歳、トニーは47歳。そんな二人のまさに私小説的なアルバム。
アルバムだからこそ表現できる内容。1曲のDLでは感じ得ないもの。
このアルバムは、本当にリリックが重要です。
BABYFACEはメロディーメイカーでもありますが、リリックも相当絶妙。55歳にしてこの感性。 メロディーは甘くとも、内容はSweetなLove Songではないのです。
最初のシングルともなった③「ハート・ユー」
まただね
あぁ また同じことの繰り返し
君を愛することがこんなに苦しいなんて
でも君はそれに気づかない
イヤ、目を背けてるだけ
君を傷つけるつもりはなかった 君の心をこんなにもボロボロにするつもりはなかったのに
2ndシングル④「Where Did We Go Wrong」も96年辺りにBABEFACEが得意としたエリック・クランプトンの「Change The World」や自身の「When Can I See You」のようなアコースティックなギターサウンドでのアプローチ。そしてリリックもFACEの心情のよう。
君をあれほど愛していたのに
全ての愛を捧げるほど
全身全霊を込めて愛したのに
君こそが運命の人だと思ってた
でも、僕が何をしても喜ばないんだね
君は僕を傷つけて去ってしまった
そうだろ そうだろ?
どこでどう路を過ってしまったんだろう
11曲の愛憎の歌です。(別にボーナストラックは2曲)
2人のボーカルも衰えていないところがすごい。BABYFACEはProducer、ライターとしてグラミーの受賞をしていますが、94年度には最優秀R&B歌手としても受賞している。FACEは歌唱力というよりかなりテクニカルで自由自在のボーカルスタイル。プロデューサーとボーカリストと両方受賞している人ってそういない。(そういう意味ではマイケル・ジャクソンやファレル・ウィリアムスもそう)さらに同じ94年度の最優秀R&B女性歌手がトニー・ブラクストンでした。
ほとんどがDUO曲ですが、BABYFACEが1曲、TONIが2曲、単独でソロをとっています。
楽曲の完成度も水準以上。
しかし、かつてのBABYFACEのメロディーラインはすばらしかった。よく美メロっていい方がされるけど、その言い方好きじゃない。オレ的には切メロ(切ないメロディー)。
そんな切メロ、思いつくとこでも、マドンナに提供した「Take A Bow」(94)(ちょっと「上を向いて歩こう」に似てる)、テヴィン・キャンベルの「Can We Talk」(93)は超切メロ!マライア・キャリーの「Never Forget You」(91)、マイケル・ジャクソンの「On The Line」、3T&MJの「WHY」(95)、ボーイズ2メンの「End Of The Road」(92)トニー・ブラクストンの「Breath Again」(93)、ざっとあげただけでもこんなにある。
そして今回久々にその水準の楽曲に出会った。
それが、アルバムのエンディングを飾る「The D World」。
シャーデー・アデューが歌ってもいいような雰囲気の曲。さらにFACEも敬愛するマーヴィン・ゲイの空気感もある。「I Want You」のフレーズもあるし。BABYFACEのファルセットから地声からウィスパーVoiceから七変化のボーカルです。それにトニーのバックボーカルが絶妙に絡む。
タイトルのDはDivorce(離婚)のDだと思います。
FACEも久々に降りてきたメロディーラインって思ったのではないだろうか。
このアルバムが大人なのは、愛を連発する従来のアルバムとは違い、別れという痛みを感じるテーマにした曲でアルバムを結んでいるところです。
玄関に書類は置いておいたよ
弁護士は郵送しろといったけど
今でも君を想っているから
もう夫婦ではないけれど
君をずっと恋しく想い続ける
離れてしまっても
君はまだ僕の心の中に
永遠にずっと ずっと
たとえ傷つけられたとしても
永遠に恋しく想うはず
さすがBABYFACEというリリックとメロディーです。
55歳にしてこの楽曲はすごい。
ロマンスという言葉も古臭くなってる現代、04年お蔵入りした『A Love Story』のサブテーマに“Romance is back”という言葉もありました。
そして93年の『For The Cool In You』収録の「A Bit OLD-FASHIONED」はまさにBABYFACE。
僕の唯一の望みは
一生ひとりの女性に身も心も捧げること
君を愛し抜きたい
君こそ僕の人生
僕はちょっと古くさいんだ
そういう風にしか
生きられないんだ
90年代にシーンの先頭を走っていた二人が、ある種の痛みを乗り越えその傷を癒すべくこうして2014年に素晴らしいR&Bアルバムを制作してくれたことがうれしい。
BABYFACE、久々のソロ作も今年発表予定とのこと。こちらも楽しみ。
ベイビーフェイスは、永遠のロマンティストだって思う。
今風のSOUNDでもなく、両者とも90年代に頂点にたったアーティスト。今の時代にそぐわない作風かとも思いましたが、アルバムの完成度は素晴らしかった。それが評価されるUSAのリスナーと音楽シーンはすばらしい。
日本で音楽シーンが盛り上がらないのも、あのまったく権威のないレコード大賞(基準も不明瞭)にもあると思う。グラミーのようなプロ中のプロが評価する場がない。だから日本のリスナーも育たない→いい作品が売れないという悪循環にもなるんだと思う。
今回、この2人のDUOアルバムが発表されるということ事態が想定外でした。FACEも最近ソロアルバムも出していないし、Produce Workも減り、かつてのようなメガヒット曲もない。
そして、ポスト・ホイットニー・ヒューストンと言われ、グラミーでも最優秀新人賞や最優秀R&Bボーカルも数回受賞しているトニー・ブラクストンも、全盛期の勢いはなく、98年には6億円近い負債を作り自己破産までもしている。98年といえば、まだヒットを連発している頃。なんで?と思ったら、けっこうな個人的な浪費によるものらしい。
さらに2010年には、5千万ドル(60億円??)で二度目の自己破産って・・・ちょっと桁が違うんじゃないのって驚いた。今回のはラスヴェガス公演を体調不良によりキャンセルした違約金らしいけど。
そんなトニー、体調不良や金銭、契約トラブル等業界に嫌気がさして引退を考えていたところ、それを知ったBABYFACEがその才能を終わらせるのはまだ早いということで、今回のDUOアルバムの話に発展したそう。
そしてトニーも今の素の自分を表現することで失われていたインスピレーションも蘇り、『Love, Marriage & Divorce』(恋愛、結婚、離婚)というコンセプトアルバムにいきつく。
2人の共演は、92年に遡る。
Give u my heart [Single-CD] | |
クリエーター情報なし | |
メーカー情報なし |
トニーは、BABYFACEとLAリードが立ち上げたLAFACEレーベルの歌姫としてデビューアルバムを発表する前に、エディー・マーフィー主演のサントラ『ブーメラン』からの「Give You My Heart」でBABYFACEとDUOデビュー。軽快な愛の賛歌曲(R&B-2位、HOT100-29位)でした。
そして翌年、満を持してLAFACEレーベル最初のディーバとしてアルバムを発表。
ラヴ・アフェア | |
クリエーター情報なし | |
BMGビクター |
ここからはLA&BABYFACEがProduceした曲も含め6枚のシングルヒットを生み、グラミーでも最優秀新人賞を獲得します。今でもこのアルバムが一番好きって人も多い。
この後も、トニーはBABYFACEがProduceした「You’re Makin’Me High」(2nd『Secrets』96年収録)でHOT-100で1位を獲得。またDavid Fosterが手がけた「Un-Break My Heart」は11週1位を記録。3rd『The Heat』(00年)からはRodney Jerkinsの「He Wasn't Man Enough」も2位。ただLAFACEから離れた02年以降ビックヒットに恵まれず。
そんな2人が22年を経て再び、このような甘いだけではない愛をテーマにした作品を発表するのです。
BABYFACEなんて、超ジェントルマンでフェミニストだと思うんだけど、13年連れ添った妻・トレイシーと離婚している。
このトレイシーって美人で実業家としても相当なやり手で、なんか家で夫の帰りを待つって感じの女性の印象はなく、個人的にはフェイスとの相性はどうなんだろう?って思う所はあった。FACEとの離婚後も、エディー・マーフィーと再婚という話も出てたし。
一方、トニーの方も、Jam&Lewisが主催したPerspective Recordが送り出したMint Conditionのメンバー、ケリ・ルイスと01年に結婚し、夫婦でCreativeなアルバム制作にも臨んでいたけど、彼女も13年に正式に離婚。そのトニーもエディー・マーフィーとの交際報道が出てるし。どーいうこと~??
2人とも、まさにこのアルバムのテーマをそのまま体験しているという事なのです。
BABYFACEは55歳、トニーは47歳。そんな二人のまさに私小説的なアルバム。
アルバムだからこそ表現できる内容。1曲のDLでは感じ得ないもの。
このアルバムは、本当にリリックが重要です。
BABYFACEはメロディーメイカーでもありますが、リリックも相当絶妙。55歳にしてこの感性。 メロディーは甘くとも、内容はSweetなLove Songではないのです。
最初のシングルともなった③「ハート・ユー」
まただね
あぁ また同じことの繰り返し
君を愛することがこんなに苦しいなんて
でも君はそれに気づかない
イヤ、目を背けてるだけ
君を傷つけるつもりはなかった 君の心をこんなにもボロボロにするつもりはなかったのに
2ndシングル④「Where Did We Go Wrong」も96年辺りにBABEFACEが得意としたエリック・クランプトンの「Change The World」や自身の「When Can I See You」のようなアコースティックなギターサウンドでのアプローチ。そしてリリックもFACEの心情のよう。
君をあれほど愛していたのに
全ての愛を捧げるほど
全身全霊を込めて愛したのに
君こそが運命の人だと思ってた
でも、僕が何をしても喜ばないんだね
君は僕を傷つけて去ってしまった
そうだろ そうだろ?
どこでどう路を過ってしまったんだろう
11曲の愛憎の歌です。(別にボーナストラックは2曲)
2人のボーカルも衰えていないところがすごい。BABYFACEはProducer、ライターとしてグラミーの受賞をしていますが、94年度には最優秀R&B歌手としても受賞している。FACEは歌唱力というよりかなりテクニカルで自由自在のボーカルスタイル。プロデューサーとボーカリストと両方受賞している人ってそういない。(そういう意味ではマイケル・ジャクソンやファレル・ウィリアムスもそう)さらに同じ94年度の最優秀R&B女性歌手がトニー・ブラクストンでした。
ほとんどがDUO曲ですが、BABYFACEが1曲、TONIが2曲、単独でソロをとっています。
楽曲の完成度も水準以上。
しかし、かつてのBABYFACEのメロディーラインはすばらしかった。よく美メロっていい方がされるけど、その言い方好きじゃない。オレ的には切メロ(切ないメロディー)。
そんな切メロ、思いつくとこでも、マドンナに提供した「Take A Bow」(94)(ちょっと「上を向いて歩こう」に似てる)、テヴィン・キャンベルの「Can We Talk」(93)は超切メロ!マライア・キャリーの「Never Forget You」(91)、マイケル・ジャクソンの「On The Line」、3T&MJの「WHY」(95)、ボーイズ2メンの「End Of The Road」(92)トニー・ブラクストンの「Breath Again」(93)、ざっとあげただけでもこんなにある。
そして今回久々にその水準の楽曲に出会った。
それが、アルバムのエンディングを飾る「The D World」。
シャーデー・アデューが歌ってもいいような雰囲気の曲。さらにFACEも敬愛するマーヴィン・ゲイの空気感もある。「I Want You」のフレーズもあるし。BABYFACEのファルセットから地声からウィスパーVoiceから七変化のボーカルです。それにトニーのバックボーカルが絶妙に絡む。
タイトルのDはDivorce(離婚)のDだと思います。
FACEも久々に降りてきたメロディーラインって思ったのではないだろうか。
このアルバムが大人なのは、愛を連発する従来のアルバムとは違い、別れという痛みを感じるテーマにした曲でアルバムを結んでいるところです。
玄関に書類は置いておいたよ
弁護士は郵送しろといったけど
今でも君を想っているから
もう夫婦ではないけれど
君をずっと恋しく想い続ける
離れてしまっても
君はまだ僕の心の中に
永遠にずっと ずっと
たとえ傷つけられたとしても
永遠に恋しく想うはず
さすがBABYFACEというリリックとメロディーです。
55歳にしてこの楽曲はすごい。
ロマンスという言葉も古臭くなってる現代、04年お蔵入りした『A Love Story』のサブテーマに“Romance is back”という言葉もありました。
そして93年の『For The Cool In You』収録の「A Bit OLD-FASHIONED」はまさにBABYFACE。
僕の唯一の望みは
一生ひとりの女性に身も心も捧げること
君を愛し抜きたい
君こそ僕の人生
僕はちょっと古くさいんだ
そういう風にしか
生きられないんだ
90年代にシーンの先頭を走っていた二人が、ある種の痛みを乗り越えその傷を癒すべくこうして2014年に素晴らしいR&Bアルバムを制作してくれたことがうれしい。
BABYFACE、久々のソロ作も今年発表予定とのこと。こちらも楽しみ。
ベイビーフェイスは、永遠のロマンティストだって思う。
恋愛~結婚~離婚 | |
クリエーター情報なし | |
ユニバーサル ミュージック |
グレイテスト・ヒッツ | |
ベイビーフェイス,ジョー・トーマス,G.ケネディ,D.ブリストル,ダリル・シモンズ,ペッリ・レイド,クインシー・パトリック | |
Sony Music Direct |
美メロでなく切メロ、確かに切なさ抜群なのがBabyfaceですもんね、そしてスウィート。
Babyfaceのアルバムで一番好きなのはどれですか?
僕は何気に『Face 2 Face』が好きです(笑)。
Babyfaceが本当に新作を出すのなら、今から楽しみで仕方ありません!!
私はQueenさんとは一回り位歳が離れていますが、似た感性の人と出会えるのはうれしいです。
私もFaceのアルバムはすべて持っています。
『Face 2 Face』お好きなんですね。ネプチューンズ(ファレル)がProduceした「There she goes」は最初好きになれなかったのですが、後からジワジワ魅力がましてきてはまった曲でした。
このアルバム、ビジュアルから守りに入らず攻めてきたFaceにはしびれました。
私のFavアルバムは、93年の『For The Cool In You』です。SOUND的には、ちょっと物足りなさはあるのですが、メロディーラインとリリックがすごく良くて。
LA&BABYFACE時代の『Tender Lover』も出だしは超はまったんですが、飽きもはやかった。
1stの青臭さも好きです。
80年代、90年代のR&Bはまだ語れるのですが、最近のR&Bはめっきりついていけなくなったので、QueenさんのBlogで勉強させてもらいます。
相当いろいろなCD聞き込んでらっしゃいますね。
すばらしい!!