オータムリーフの部屋

残された人生で一番若い今日を生きる。

世界遺産、登録後・・・Forced To Workを巡って

2015-07-08 | 政治
日本が推薦した「明治日本の産業革命遺産」が、世界遺産に登録されることが5日の世界遺産会議で決定した。
発起人には、安倍首相の小学生時代の家庭教師である本田勝彦・JT顧問、安倍首相を支える経済人の会「さくら会」メンバーの木村恵司・三菱地所代表取締役会長、安倍首相とゴルフ仲間の日枝久・フジテレビジョン代表取締役会長、安倍首相を「全国で一番近い政治家」と語る地元山口の有力な支援者である福田浩一・山口銀行代表取締役頭取……と、ほとんど“安倍首相応援団”というべき面子が揃っている。そして、このプロジェクトが安倍首相の肝いりであることを物語っているのは、故・加藤六月元農水相の長女で、都市経済評論家の加藤康子氏の存在だ。加藤氏は今月2日、内閣参与となった女性だが、前述の「一般財団法人産業遺産国民会議」の専務理事で、「明治産業遺産」を世界遺産にと10年間にわたって根回しを行ってきた。康子氏と安倍首相は“幼なじみ”で、家族同然の深い関係にある。この辺の事情はテレビなどではほとんど報道されず、「韓国の裏切り」問題だけがクローズアップされている。
 
この「裏切り」というのは、4日の審議で、韓国側が日本の候補である「明治日本の産業革命遺産」で「朝鮮人の強制労働があった」とする主張をしようとしたため、審議がもち越しになったというもの。日韓外相会談では両国が登録に向けて協力することで合意しており、日本は韓国の候補である百済歴史遺産に賛成した、なのに、韓国が手のひら返しで裏切って難癖をつけてきた、とメディアが一斉に報道したのだ。韓国含め全会一致で「明治の産業遺産」の登録が決まってからも、「韓国が土壇場で裏切った」経緯の説明に終始した。
 
しかし「一度は協力を合意したのに、韓国が裏切って難癖をつけてきた」というのは、明らかに事実とは違う。そもそも、韓国は明治の産業遺産の世界遺産登録に一切反対はしていない。韓国は逆に賛成の意見陳述をする予定だったのだ。ところが、日本がその陳述の予定稿に「forced labor」(強制労働)という表現があることを問題にし、“演説の表現を変えろ”と韓国に迫ったのだ。改めて説明するまでもないが、1939年から1945年の間に70万もの朝鮮人が朝鮮半島から内地に送り込まれた。その多くは暴力を伴う明らかな強制連行で、調査に入った内務省が「拉致同然」という報告書を提出しているほどだった。そして、今回、世界遺産に登録された炭坑や製鉄所に送り込まれた朝鮮人は劣悪な環境に閉じ込められ、長時間労働を強いられ、多くの死亡者を出した。
 
日本政府はこれを日本国民に対して行ったのと同じ「徴用」だと言っているが、まったくちがう。日本人には国民徴用令で家族への扶助制度があったが、この徴用制度は1944年まで韓国人には適用されていない。そういう意味では、韓国が「強制労働」の事実があったとするのは当然の主張なのだ。韓国だけではない。5月には、ユネスコ傘下の国際記念物遺跡会議(イコモス)が、日本に対して否定的な歴史も盛り込むよう勧告している。また、日本は対象を1850年代から1910年までに限定。朝鮮人徴用とは「時代が違う」と主張しているが、これについても、ポルトガルのユネスコ大使から「遺産群は総体で一つであって、ある時代を切り取ることはできない。全参加国が満足できる結果を待っている」と批判されている。
 
実際、日韓外相会談では両国が意見陳述を行うこと、審議の場では日本が自主的に強制労働の事実を説明し、その後に韓国が発言することも合意されていた。それがなぜ、突如、「強制労働」という言葉を使うな、と言い始めたのか。実はここでも、安倍首相のゴリ押しがあったという。
「官邸が突然、外務省の担当者に韓国の陳述内容を確かめろ、と言ってきて、事前協議をすることになったようです。そして、韓国が「forced labor」を使っていることが分かると、官邸はそんな言葉の使用は絶対に許さないの一点張り。現地の岸田外相と佐藤ユネスコ大使は完全に板挟み状態になっていた」
 
最終的には議長国のドイツが調整に動いて、日本も韓国も意見陳述の際に「forced labor」を「forced to work」表現に言い換えることで妥結したが、この言葉の選択については、審議の行われているドイツから、日本の安倍首相に一字一句相談し決められたという。
 
しかし、国際社会が官邸のゴリ押しを認めるはずもなく、「labor」(=労働)を「work」(=働く)に言い換えたのみ、「forced」(=強制された)の部分を言い換えることは許されず、意味はほとんど変わらなかった。また、登録が決まった後、佐藤ユネスコ大使が「意思に反して連れて来られ、厳しい環境の下で働かされた多くの朝鮮半島出身者等がいた」というスピーチを行わざるをえなかった。
 
ところが、スピーチのなかで用いた「forced to work」という表現について、直後岸田外相は「強制労働を意味するものではない」と説明。義偉官房長官も6日午前の記者会見で、登録にあたり、日韓の間で焦点となった「徴用工」をめぐる表現について、「我が国代表団の発言は強制労働を意味するものではまったくない」と説明した。例の二枚舌作戦だ。
 
『ひるおび!』の八代弁護士はこんな風に説明して、安倍政権をアシストしていた。「検索で「forced labor」と入れると、奴隷のようなものが出てくるが、「forced to work」はブラック企業のようなもので、ニュアンスがまったくちがう」
 
そもそも世界遺産は、正の面、負の面あわせて世界の歴史に意味のあるものを保存しようという、人類共通の遺産だ。だから、アウシュビッツ強制収容所や、広島の原爆ドームも、また世界文化遺産に登録されている。
 
産業革命も、産業や経済が発展したという功績がある一方、搾取の構造や悲惨な労働を生んだという負の側面があることは、日本に限らず世界共通の認識だろう。そうした負の側面を認めることは、屈辱でも恥でもない。国威の発揚や自慢大会しか許容できないというのは、日本がとことん下品で知性のない国になってしまったということだろう。
「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録は実現したものの、安倍首相が国際社会の求める「負の歴史」の説明をきちんと果たすかどうかは極めて怪しい。 (リテラ野尻民夫)
 
そして、産経ニュースによると、外務省が「明治日本の産業革命遺産」の登録をめぐり、朝鮮半島出身者への「強制労働」がなかった経緯を英語で説明するなど、対外発信強化を検討していることが7日、分かった。両国の対立点は、世界遺産委員会の審議で日本側が英語で表明した「forced to work」の解釈。日本側が「働かされた」と翻訳する一方で、韓国側は「強制されて労役をした」と訳し、解釈の相違が起きている。政府は、強制労働させていたものではないことを説明するという。
 
韓国のCBSテレビは、「外務省内部では『against their will』や『forced to work』などの英語原文を見ると、誰が見ても『強制労働』に読み取れるため、(日本側が)これを否定するのには呆れるばかりだ」と伝えている。
 
   確かに呆れるばかりの恥知らずだ。第二の慰安婦問題に発展することは間違いないだろう。世界遺産の登録を潔く取り下げるべきだろう。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿