オータムリーフの部屋

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フランシスコ法王の人間味あふれるメッセージ

2014-04-07 | 政治

 ヨーロッパ以外からは約1300年ぶり、中南米出身者としては初のローマ法王(教皇)が1年前誕生した。フランシスコ1世として世界のカトリック教徒12億人のトップに立ったのは、アルゼンチン出身のホルヘ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿(76)だ。新法王は、世界各国で教育機関を運営する男子修道会のイエズス会に属している。イエズス会からの法王選出も初めてのことだ。
 ベルゴリオは05年のインタビューで、官僚組織であるローマ法王庁で暮らすのは避けたいと語っていた。「法王庁にいたら死んでしまう。私の人生はブエノスアイレスにある。私の教区の人々がいないと、彼らの悩みに答えないと、毎日何かが欠けていると思う」まさに聖人の語り口だ。前法王が無味乾燥な学者肌だっただけに、新法王の温かい言葉は人々の心を捉えた。新法王が任されたのはスキャンダルまみれの組織だった。欧米諸国では、カトリック神父による子供への性的虐待が次々と明るみになり、教会の信用は失墜した。法王庁の不正会計問題や、マネーロンダリング(資金洗浄)の疑惑にも対処する必要があった。
 フランシスコ1世の公式記録には倫理や金銭にまつわる汚点はないが、ダークな部分がないわけでもない。70〜80年代、アルゼンチンの軍事政権が市民弾圧を行った「汚い戦争」の時代、ベルゴリオはイエズス会アルゼンチン管区の区長を務めていた。共産主義のシンパと考えられて弾圧された人たちの中には、貧しい民衆を救済する左翼運動を行う聖職者が大勢含まれていた。なかでも秘密組織に逮捕されて監禁・拷問された2人のイエズス会士は後にベルゴリオに「密告された」と語った。一方、ベルゴリオの擁護者は、大勢が殺害されたのに、2人が助かったのは、彼らを救うためにベルゴリオが奔走したおかげだと主張する。

 
 就任以来、平和を語り、貧困撲滅を説く活動は世界中の耳目を集めている。教会における女性の役割、同性婚、性的虐待の問題についての見解は、前任者と同じく保守的で、妊娠中絶反対だが、避妊や離婚、神父の妻帯や同性婚などに理解を示す穏健な発言もしている。
 
 バチカン(ローマ法王庁)の外国大使の信認式では、現代社会の「拝金主義」を戒め、倫理に基づく金融市場改革を断行するよう、世界各国の指導者に呼びかけた。
「カネは人間に奉仕するべきであり、人間を支配してはならない。現代社会で暴力や貧困が増えている理由の一は、「カネの力を受け入れる」人々の態度がある。「カネの崇拝、経済の独裁」は倫理の拒絶であり、神の拒絶だ。市場の独立と金融投機の自由を絶対視する考えから貧富の格差拡大が生まれている。倫理にのっとり、すべての人々に利益をもたらす金融・経済改革を実施するよう政治指導者にもとめたい。」
 昨年11月の「使徒的勧告」という信者にあてた文書のなかでは、「どうして高齢のホームレスが野ざらしにされて死亡することがニュースにならず、株価が2ポイント下がっただけでニュースになるのか」「飢えている人がいる一方で食べ物が廃棄されているのを見過ごし続けられるのか」と問い、市場に任せればうまくいくという「トリクルダウン理論」は「事実によって裏付けられたことは一度もない」と批判した。
 法王の経済・社会認識は共産主義じみているという非難に対しては「マルクス主義は間違っている。しかし、私の人生で善良な人々であるマルクス主義者を多く知っているので、私は気を悪くしていない」と茶化した。
 バチカンはこれまでもグローバル経済の弊害や、金融資本主義の行き過ぎに警鐘を鳴らしてきた。前法王ベネディクト16世も世界に緊張をもたらす要因の一つとして「規制なき資本主義」を批判した。もしフランシスコを共産主義者というなら、ローマ法王庁と歴代の法王を共産主義者と呼ばなくてはならなくなる。ただ、歴代の法王に比べ、フランシスコがさらに一歩を踏み出しているのは事実である。
 
 イタリア・マフィアに殺害された犠牲者の追悼式典で、「血塗られたカネや権力は死後まで特っていくことはできない」「マフィアの人々は生活を変えよ。悪行をやめよ。このまま続ければ、地獄が待っている。まだ、地獄へ行かないようにする時間はある」と呼びかけた。報復される危険が高い中、歯に衣着せない発言は法王の人気を押し上げた。
 法王ファンのための週刊誌「私の法王」がイタリアで創刊され、創刊号は50万部の売れ行きという。ツィッターを初めて使った法王でもある。フオロワーは1000万人以上だという。
 
 この人気にあやかろうという外国首脳との会談も目白押しだ。3月27日にはアメリカ大統領オバマがバチカンを訪れ、平和と貧困、飢えと格差の問題を話し合った。現在、世界の最富裕層85人の資産総額は下層の35億人分(世界人口の半分)に相当するという。経済格差の問題は深刻だが、法王も大統領も批判だけで、金融資本主義の力の前にはなすすべがない。オバマ大統領がフランシスコ法王を「彼はキリストの教えを説く者として驚くべき人間性と、社会の弱者、貧乏人にたいして思いやりを持っている。彼は、人々を避けるのではなく、抱きしめる、という事を一番に考える人だ。」と評価したそうだ。
 フランシスコ法王の宗教者としてのメッセージは、世界中の人々の心に感動を与えている。儲けのためなら、武器も原発の輸出もいとわない恥ずかしい政治家が日本にはいる。貧しい人に高負担を強いる消費税に賛成する政党を支えるのは庶民の味方のはずの宗教団体だ。税金から出る政党交付金を受け取っていながら、何億と言う政治献金を個人の借り入れだと強弁し、スポンサーの利権のために働く政治家がいる。さらなる格差社会に舵を切りながら、国防に血道を上げる政権の支持率は異常に高い。
 生物の外来種が日本全土にはびこる現在、平和共存でつつましく命をつなぐ日本固有の在来種はますます生息する場所を失っていく。
 
 世論調査会社によると、イタリア国民の法王の支持率は87%。カトリック教会の信頼度も50%に上昇した。過去6年で最も高い数字だという。
 5月に聖地エルサレムなど中東地域、8月に韓国訪問を予定している。
 

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