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地方議員の定数と報酬

2016-11-05 | 政治

地方議会議員の劣化が激しく、定数及び報酬に関し、大きな関心を集めている。

 名古屋市議会に関し、市長が議員定数75人を半数の38人に減らし、かつその年俸1600万円を800万円へと半減する案を打ち出したのに対し、議会側は激しく抵抗し、ついに市議会のリコール騒動に発展したが、201126日に行われた市長選挙、市議会リコール投票は、いずれも市長側の圧勝に終わった。他方、人口23千人という、名古屋市の百分の一の小都市である鹿児島県阿久根市でも、市長が市議会議員を16人から6人に削減し、年俸400万円を日当制に切り替えるべきであると主張して市議会と対立し、市長選では僅差で評判の悪い前市長が敗れたものの、市議会のリコール請求では賛成7321票対反対5914票でリコールが成立した。

 それでも、定数・報酬の是正は行われず、現在に至り、ますます政治家の劣化は進んでいる。号泣議員、富山議員の辞職ドミノなど、政務活動費の不正支出が暴露されたが、改革は進まない。

 議員定数の関しては、地方自治法91条は、その1項で「市町村の議会の議員の定数は、条例で定める。」としつつ、第2項で、「市町村の議会の議員の定数は、次の各号に掲げる市町村の区分に応じ、当該各号に定める数を超えない範囲内で定めなければならない。」として、「人口二千未満の町村 十二人」というところから、逐次人口規模別に定数の上限人数を定めている。

 報酬については、地方自治法は、その203条で次のように定めている。

1項 普通地方公共団体は、その議会の議員に対し、議員報酬を支給しなければならない。

3項 普通地方公共団体は、条例で、その議会の議員に対し、期末手当を支給することができる。

 

 有償制にも、日給制、会期制、月給制、歳費制(年俸制)が考えられるが、国会の場合に憲法が歳費制を要求している(憲法49)のと異なり、地方自治法は特段の要求をしていない。その結果福島県矢祭町のように、2008331日以降の議会(定数10人)から従来の月額208000円を廃止し、議会等に1回出席するごとに3万円の日当制としたところもある

 

 わが国の市会議員の法定上限数は、米国を基準とすれば異常に多い。戦前の市制、町村制時代に定められていた議員定数を基本的にそのまま引き継いだためである。GHQは「アメリカ合衆国の地方議会に較べ、面積・人口の点からみて日本の市町村議会の議員数が多過ぎる」と考えたが、定数増加を原則として認めないとする制度を採用するに留めた。

 

 直接民主政的制度の下においては、むしろ、地方政府の活動が、住民の監視下におかれる体制を整備することが大切である。米国では地方議会が夕方から夜にかけて開催される場合が多い。一部の都市では、日本と同じく昼間開催されているが、大方の自治体では、主権者たる住民が参加しやすい夜間の時間帯に開かれている。勤め帰りの人々や家庭の主婦と思われる人たちが熱心に傍聴しているという。

 わが国で、このような夜間や土日の議会開催が行われていない大きな理由は、地方議会に関しても国会と同様の会期制を採用している(101条~102条)ことにある。「一定期間に集中して審議する」などの理由で、ほとんどは平日の昼間に開会されており、住民が傍聴しにくい運営となっている。

また、米国の議会会議室は、議員が半円型の議席に座って、傍聴席の住民と向かい合う形式が圧倒的に多い。議員が有権者に背中を向けて着席する日本的形式の議席はアメリカの自治体では皆無に近いという。

 しかも、議会活動がローカルテレビやインターネット・テレビで中継されているところも珍しくない。

 

 議員報酬についても米国では小規模自治体においては、議員報酬が無いという制度を採用しているのが通例であるという。同様に、ドイツの各州の地方自治法でも、原則は名誉職、すなわち無給とされている。フランスやイギリスなど、わが国法制に影響を与えてきた西欧諸国でも、共通であるという。

 わが国においても、明治憲法下においては、明治21年の市制・町村制ともにその16条で「議員は名誉職とす」と定め、原則として無給であった。

明治22年の市制町村制、同23年の府県制及び郡政が近代的地方制度の最初である。戦前の制度の大きな特色は、国民を、参政権を有する『公民』と有しない『住民』に区分し、『公民』には無給で公共活動に奉仕する名誉職に就任することが義務づけられていた。しかし、この公民・名誉職制度はわが国に根付くことなく、敗戦を迎える。

戦後は、公民及び名誉職の廃止、女性を含む普通選挙の実施、全ての地方公共団体の首長の公選制、都道府県の完全自治体化、直接請求等の直接民主主義的制度が採用された。

 昭和22年に現行の地方自治法が制定された際、その203条が「普通地方公共団体は、その議会の議員に対し、報酬を支給しなければならない」と定めた。何故諸外国に全く例を見ない俸給支給の強制制度が導入されたのか、定かではない。

 議員報酬がどのような額であるべきか、という点に関しては、客観的な基準が存在していない。すなわち、一般の常勤公務員は職務専念義務を持ち、他の職業との兼職が禁じられているため、それに対する報酬は生活費の支弁という性格を持つのに対し、地方議会議員は、一般に他に職業を持つことが可能なので、生活費の考慮を払う必要が無い点で異なる。常勤一般職公務員に匹敵する額の議員報酬が常態化している現状は、異常という他はない。

地方自治体間の報酬の格差も大きい。

1000万円を軽く超える自治体もあれば、500万円を下回る自治体も多い。夕張市の市長の月給は259000円。手取りにすると20万円に満たないという。志が高い有能な若者が薄給で改革を進めているが、かたや財政豊かな自治体ではお手盛りで高給を楽しんでいるのだから、この世は不合理だ。

国民の収入格差は開くばかりだが、同じ議員職の格差も開く傾向にある。東京都御蔵島村の月給、約10万円から東京都議の月給約102万円と同じ東京都でも10倍の格差なのだから、凄い。

 

行政の監視という退屈な職務を遂行せず、議会で居眠りばかりしていても、議会をさぼって山登りに行っても一定の報酬が支給され、先生と呼ばれる。お手盛りで報酬を上げ、政務活動費と呼ばれる手当も使い放題、こんな素敵な職業はない。

地方議員の役割は予算案を議決したり、条例案を議決したり、市の施策について質問したり・・・・要するに行政のチェックだが、一番熱心にやるのは住民の要望を聞く、いわゆる口利きらしい。この住民の要望の処理方法を公開したところ、件数が激減した自治体がある。口利きの抑止力として、公開は今後進んでいくだろうが、そうなると、当たり前の要望しか受け入れられず、地域住民にとっても地方議員から恩恵を受ける機会は激減するだろう。

議員定数・報酬とも半減でいいと思うが、こんな素敵な職業を廃止するのももったいない。能力がなくても宴会に出て地方のドンのご機嫌を窺っていれば安泰で楽しい生活が送れる。こんな素敵な商売に運よくつけた人を引きずり下ろすのも気の毒である。逆に最低賃金を仕事をしない地方議員の水準まで引き上げる方が社会は繁栄し、みんなが幸せになれそうである。


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