<両軍スタメン>
J1リーグも残り2試合で、1枠のみの残留争いは縺れを見せ。
その1つの降格クラブになるのは誰だって嫌なもので、終盤に来てせっせと勝ち点を稼いでいる横浜FCと湘南。
しかし運命は非情なもので、このタイミングで双方激突する事となりました。
両クラブに共通するのはエースが夏の移籍期間に、海外へと旅立った事。
横浜FCは、未だにその小川航基がトップスコアラー(6得点)という具合に、得点力不足は深刻を極め。
この最終盤でようやく上向きを見せており、過去8戦で12得点(全体で30得点)を挙げるなど、ロングカウンター戦術も板に付いてきたのが幸いでしょうか。
一方の湘南も、9得点を挙げた町野が居なくなり厳しい状況に。
しかしこちらは、開幕節でハットトリックを達成した大橋が救いの神となり、町野移籍後に9得点を挙げて瞬く間に追い抜き。
「誰かが移籍しても代役が台頭する」好循環はチーム成績にも表れ、6戦4勝(1分1敗)という昇り調子で、この直接対決を迎えました。
試合開始直後から、負けたら終わり感を激しく醸し出すデュエルの連続。
横浜FCは負ければ降格決定の可能性が大、湘南は負ければ最下位転落の可能性が大と、切羽詰まった状況では必然ともいえました。
その気持ちの高まりぶりは明らかですが、それを萎えさせる事を言えば、双方の勝ち点差は2。
無理に勝ちを狙いにいって全てを失うよりは、それを保ってラスト1試合に賭けるという選択肢も持った方が良い、なんて事を考えてしまうのがひねくれた自分であり。(特に下位である横浜FCは)
こうした状態で思い出させるのが2019年のJ2残留争いで、終盤に迎えた鹿児島vs岐阜の直接対決。(当時の記事)
最下位・岐阜は20位・鹿児島との勝ち点差が3で、是が非でも勝利したいカードとなったものの、その対決を終えても残り4試合が残されており。
その内容は非常に際どい一戦となり、互いに何度か決定機逸を喫しながら、スコアレスのまま最終盤に。
しかし試合終了直前、最後の攻撃に出ようとした岐阜が自陣でボールを奪われると、そのまま返す刀でゴールを決められてしまい。
それと同時に試合終了のホイッスルと、何とも非情な幕切れとなった一戦。
結局岐阜は糸が切れたかのようにこれ以降全敗(しかも4戦で17失点)しJ3降格が確定してしまうのですが、それを観ていたが故にあまり直接対決に比重を置くのも考えものと思ったり。
しかし既にこうして対決の幕が開かれた以上、とやかく言っても始まらず。
試合の方は、そんな肉弾戦ともいえる様相をさらに彩るのが判定面。
特にスローインを巡って(主に湘南サイドが)ヒートアップする場面が多く、前半14分には異議で湘南・八津川義廣コーチが警告を受ける事態もあり。
当然ながらボールも落ち着かず、蹴り合い・跳ね返しの連続で右往左往となった立ち上がり。
それを落ち着けに掛かったのが湘南で、最終ラインからショートパスを繋ぐ姿勢を強めて果たさんとします。
対する横浜FCは、最初こそ前線で規制を掛ける姿勢が見られたものの、マルセロのアンカー田中へのチェックが非常にお粗末に映り。
彼の側で構えるも、ほぼ彼へのパスコースが切れていないという状態で、これではショートカウンターに多くは望めない。
そんな訳で、直ぐに得意手であるリトリート・ロングカウンター一辺倒へと意識を改めました。
18分、キムミンテの縦パスをマルセロがカットし、そのままドリブルに持ち込み待望のカウンターチャンス。
右へのスルーパスを経てカプリーニがクロスに持ち込んだ事で右コーナーキックを得ると、(キッカー・カプリーニの)クロスの跳ね返りを林幸がダイレクトでミドルシュート。
エリア内でブロックされるも、しっかり守ったのちに可能性ある攻撃を仕掛けるという、カウンターサッカーの神髄を発揮します。
なお攻撃が途切れたのちに、GKソンボムグンのフィードをマルセロが妨害、それに対しヒートアップを見せる湘南サイド。
前述の湘南の苛立ち具合を見て、それをさらに増幅させる立ち回りに徹して隙を作らんとしていた節がある前半の横浜FC。
一方中々相手の守備を崩せない湘南。
27分にはゴールキックでのロングフィード、左ワイドの杉岡を前にやってそこに放り込み、彼の落としから繋ぐ攻撃。(シュートには繋がらず)
続く28分には右サイドで作らんとする所に、センターバックの大岩が果敢に最前線までオーバーラップする等、変化を加えるものの際立った効果は生まれず。
停滞感が露わになると、続く30分台には横浜FCの一方的な流れに。
ケチの付きはじめは33分、横浜FCの右サイドアタックの最中に、ボールから離れた位置でカプリーニと田中が交錯した事が湘南の反則となり。
これで中盤右サイドからのフリーキック、キッカー山根の放り込みから押し込む横浜FC、せめぎ合いを経て岩武の浮き球パスが左ポケットのカプリーニに渡り。
そして入れられるクロス、中央で跳んだユーリを越えたその奥でマルセロが合わせにいきますが、惜しくも撃てずにこぼれ。
しかしさらに左CKから攻め、カプリーニのグラウンダーのクロスをニアサイドで合わせにいく小川。
しかしミート出来ず、フリックのように流れてしまい奥でも合わずと際どい局面を創出し続けます。
38分に横浜FCの攻撃の最中、井上を倒した田中が(アドバンテージを経て)警告を貰い。
40分には横浜FCのCKで、ポジションの取り合いの最中に池田を押し倒した吉野が警告と、カードトラブルも多くなり。
善戦する横浜FCですが、それでも欲しいのはシュート、そしてゴールなのは言うに及ばず。
前述のCKが防がれたのちの右スローインで、奥で受けたカプリーニがカットインからマイナスのクロス、ニアサイドのユーリに収まる絶好機に。
しかしシュートは素早く寄せた大野がブロックしてこぼれ。
45分には再び絶好のカウンターで、ドリブルするマルセロが今度は溜めを作ってからのスルーパスを選択し、受けたカプリーニが右ポケットへ。
そして山なりのクロスがファーサイドを突き、フリーの小川の足下に。
またも決定機が訪れた小川ですが、そのボレーシュートはまたもジャストミート出来ずと不発に終わってしまいます。
押され気味の湘南ですが、こうしたカウンターをなるべく避けるために、無理矢理な縦パスは(18分以降)見せずに立ち回っている風にも見え。
それはアディショナルタイムという最後の段階で、一転して平岡縦パス→大橋受けてスルーパス→杉岡クロスという早い攻撃を仕掛けた事で確信に変わりました。
これで左CKを得るも、ニアにクロス→大岩フリックが実らずとなった所で前半が終了します。
優勢の内容だった前半の横浜FC。
ハーフタイムを挟んでもその勢いは盛んという感じで、早速の後半2分にクリアボールを小川フリック→マルセロ前進からスルーパス→カプリーニと、前線3人が繋いで決定機。
右ポケットから放たれたカプリーニのシュートはGKソンボムグンがセーブと、このまま行けば勝利も夢では無いという絵図に。
しかし直後に落とし穴が待っており、その名はセットプレー。
直後にキムミンテのエリア内へのロングパスというアバウトな攻撃を仕掛ける湘南、クリアされるも左CKを得てここから工夫を仕掛け。(変化自体は前半のCKから仕掛けてはいた)
キッカー阿部はエリア手前へライナーでのクロスを送り、フリーの池田がボレーシュートというサインプレー。
これをエリア内でブロックし何とか防ぐ横浜FCでしたが、続く揺さぶりには耐えられませんでした。
連続の左CKとなると今度はショートコーナーから、クロスは上げずにパスワークを経て、池田が中央からミドルシュート。
GK永井が何とかセーブも、跳ね返りを反応良く大岩が詰めてゴールネットを揺らします。
敗北の危機を綺麗に打ち消す値千金のゴールで、その後長らくオフサイドのVARチェックが挟まれたものの結局認められ、リードを奪った湘南。
勝利の予感を膨らませていただけに、ショックも倍増といった横浜FC。
その後のキックオフからの攻めも、プレッシャーを受けて最後方からのフィードがブロックされ奪われかかるという具合に、心ここにあらずのような絵図に。
ビハインドとなった以上、自発的にボールを保持して攻めなければいけない状態。
前半はそれ自体が少ないながらも、四方田修平監督の理想よろしく「ミシャ式」の立ち位置を取って繋がんとしたシーンが見られ。
しかしそれに対し湘南が、アンカーの立ち位置となるユーリを囲むような守備陣形を取ったため運べずとなり、それが尾を引いていたかのような後半。
つまりはビルドアップの硬直化であり。
これまでのような勢いある攻撃は何処へやら、一向に好機を掴めない横浜FC。(15分に林幸・小川→近藤・伊藤へと2枚替え、山根が左ウイングバックに回る)
交代を挟んで良くなるどころか、直後の16分にはあろう事か、最終ラインでのパスがカットされてしまう事態に。
中央アタッキングサードという位置で奪った大橋、そのままミドルシュートを放ち、ゴール上へ外れたものの一転して主導権は湘南となった事を示すようなシーンとなり。
その後もGK永井のフィードが伸びずにカットされてから攻撃を受けたり(18分)と、失点で一気に崩落したかのような流れを描き。
21分には再びGK永井のフィードを跳ね返してからの攻め、阿部のスルーパスを左サイド奥で受けた平岡からクロス。
これを大橋が合わせヘディングシュート、完璧な流れと思われましたがゴール右へ際どく外れて追加点はならず。
前半から一転した内容の湘南でしたが、24分に自陣での左スローインの際、投げるのを躊躇っていた杉岡が(投げにいった瞬間に)遅延行為を取られて警告を受け。
以降はセットプレーに時間を掛けるなど、前半の横浜FCのような相手を苛立たせる立ち回りへと意識を振った事でその勢いは消沈します。
それを受けて攻勢に転じる横浜FCでしたが、こちらも勢いは既に無く。
守備意識を高めた湘南ディフェンスにより、サイドからの縦突破も期待出来ない状況(山根は今季元からあまり勝負しにいかないのですが)で、何とかデュエル勝負で上回っていくしかないという雰囲気に。
32分に岩武が敵陣でボール奪取、運んで行かんとした所を大橋に倒され反則。
この右サイドでのFKから、クロスの跳ね返りをカプリーニがミドルシュート、ブロックされてさらに左CKとセットプレーで押し込み。
ここからもクリアボールを拾ったのち長らく攻め続け、エリア内に残るンドカが落としたり、フリックしたりと奮闘。
そのンドカのフリックから吉野がヘディングシュートと矢を放つも、枠を捉えられず。
35分に湘南ベンチも動き、平岡・池田→茨田・奥埜へと2枚替え。
37分に横浜FCが2度目の交代、井上・山根→三田・坂本へと2枚替え。
駒が入れ替わりながらも、攻勢を続けて何とか追い付かんとする横浜FCという展開は変わらず。
しかし近藤のロングスローを多用する等、最早組織立った攻撃でどうにかする段階は過ぎ去り、何が何でも1点を入れなければ後が無いという状態。
他方、同じく勝ち点2差の柏は鳥栖と一進一退の点の取り合いで、この段階では2-2。
負けてしまえば極限まで厳しくなるのは明らかであり。
それ故に無理矢理にでも攻める横浜FCですが、40分の右CKでは、クロスに合わせにいったユーリが大橋に激しく当たってしまい反則・警告。
ターゲットはマルセロの他、ユーリ・ンドカと数多備わった状況で、ハイボールの競り合いで優位に立たんとするもパワープレイ気味なのは否めません。
そして42分にお互い交代。
湘南が安部→鈴木章斗、横浜FCが吉野→橋本健人へと交代して最終局面へ。
一度はンドカが前線に残ったままの体勢となった横浜FCですが、改められ3バックを保ち。
そして突入したAT。
逃げ切りを図る側の湘南も、大橋や大野が立て続けに足を攣らせるなど必死な凌ぎを見せ。
ロングボールを跳ね返し続け、時間を経過させていきます。
目安の時間(6分)が押し迫った段階で最後のカードを使い、大橋→福田。
横浜FCは、岩武ロングパス→マルセロフリック→伊藤受けてシュートと好機を作るも、これも堅い守備に跳ね返されて実らず。
刻一刻と時間は進み、そしてとうとう試合終了の時が。
無情なホイッスルが鳴り響き、残留決定を果たした湘南サイドを尻目に、崩れ落ちる選手達。
柏が引き分けで勝ち点1を得たため3差となり、仮に最終節で追い付いたとしても立ちはだかる得失点差12の壁。
つまりは今節で九分九厘降格が決定してしまう事となった横浜FC。
この試合の何が駄目だったか、シーズン中何処でどう間違えたかという議論は持ち上がるものの、既に開幕前から選手の大幅入れ替えが……という話にまで遡らなければならないのが何ともであり。(開幕前に書いた記事)
前回の降格時(2021年)も同様の編成だったので、同じ事を繰り返すのはフロントレベルで腰が据わっていないという一言に集約され。
果たしてこの永久機関ともいえる状態から、抜け出せる日が来るかどうか。
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