<両軍スタメン>
全カテゴリが一斉開幕の今季。
J1とJ2でクラブ数の調整が為され、3つのリーグ全てが20クラブになった結果、ある意味当然の終着に。
今季から昇格プレーオフが取り入れられるという具合に、リーグの価値は発足当時(2014年)とは比べ物にならないぐらい上がっている感のあるJ3。
それでも降格クラブへの救済金制度が無くなるなど、一度落ちたら脱出できない「沼化」への恐怖は依然として高く。
さて、その沼から4年間抜け出せないでいる岐阜の開幕戦。
上位カテゴリの選手を搔き集めたにも関わらず、昇格争いにも加われずにいた一昔前とは打って変わった今季の編成。
柏木・田中順也の引退(→即フロント入り)に象徴されるように、既に峠を越した名選手というのはほぼ居なくなり。
30歳越えの選手はこの日スタメンの庄司・荒木のみに留まり、若返りによるフレッシュ効果が期待されてのシーズンインとなりました。
岐阜のキックオフで前半が始まったその刹那、いきなりハイボールの競り合いで山田が頭部から出血する事態が発生。
後方からのロングパスに合わせにいった山内に対し、抱え込み含みでのチェックにいった山田ですが、反対に山内の腕が顔に入ってしまうという因果応報的な負傷であり。
その場での治療を経てピッチ外に出たものの、前半5分に何とか復帰します。
早速のトラブルに見舞われた福島ですが、落ち着きを取り戻すと積極的なサッカーでペースを握ります。
今季は寺田周平氏が新監督になった事で、4-1-2-3へと布陣をシフト。
それも、現代のトレンドである「守備時に4-4-2へと可変」を行わず、3トップのままプレッシングを掛けるという体勢であり。
この福島の前線に対し、岐阜の最終ラインでのビルドアップの体勢は相性が悪く映り。
それは右サイドバックの石田がボランチのような位置取りをするという、所謂「偽SB」的な立ち回り。
4-3-3のまま、FWが最終ラインにプレッシャーを掛ける福島。
それだけにサイドに展開されると、インサイドハーフがサイドに寄ったり、SBが詰めにいかなければ止めにくいという懸念が常に付きまとう布陣でもあり。
よってシンプルなサイド攻撃が最も効果的と言え、可変システムを採るメリットは(あくまでこの試合では)見出せず。
一方の福島の攻撃は、MF3人が中心となるショートパス攻勢。
アンカー加藤を軸に、針谷・小関に加えて森がその輪の中に入りローテーションをしながら繋いでいき。
そうして敵味方ともに中央密集させたうえで、空いたサイドをSBが突くという至極判り易い攻撃。
特にIHの針谷・小関を中々掴まえられず、守備でも岐阜は後手に回りがちとなり。
好守ともに苦境感が表れた結果、山田復帰以降は福島が攻撃権を独占する展開となります。
そして13分、岐阜は石田がGKへのバックパスをミスした結果、ゴールラインを割り福島の左コーナーキックに。
キッカー針谷のクロスがニアサイドを突くと、駆け込んだ堂鼻がヘディングシュートをゴールに叩き込みます。
CKでのゾーン守備を崩すお手本のようなフィニッシュで、流れに従い先制点を挙げた福島。
早期に追う立場となった岐阜。
しかし16分シンプルに左サイドから前進し、北を経由し中央→右へと展開。
そして河波がカットインから綺麗に巻くミドルシュートを放つも、左ゴールポストを直撃し同点ならず。
福島の弱点攻略かと思った直後、ロングパスの跳ね返りを拾った森のドリブルから福島の攻撃。
彼からのパスを受けた塩浜が引き続きドリブルし、右ポケットからシュート。(GK茂木がセーブ)
19分にも左ワイドからの前進を経て、森がポケットを突いてシュート(GK茂木キャッチ)という具合に、その勢いは衰えません。
どちらがポケットを多く突くかという流れになって来ると、迎えた21分。
岐阜は再び左サイドから攻める姿勢で、荒木がアタッキングサードで横パスを送ると、藤岡がディフェンスに遭うも中央に寄っていた石田が拾い継続。
すかさず右ポケットへスルーパスを送った石田、そこに河波が走り込んでダイレクトでグラウンダーのクロスを入れると、藤岡が合わせシュート。
GK吉丸がセーブするも、跳ね返りを藤岡が自ら詰めてゴールネットを揺らします。
やはりポケットを突けば何かが起こる、という事を証明する同点弾となり。
このゴールで勢いを付けたい岐阜ですが、直後に激しくプレッシャーにいった藤岡が鈴をスライディングで削って反則・警告と、どうやら付け過ぎてしまったようで。
その後福島が右サイドから攻勢を掛けるも、やはりショートパスを主体にした前進。
その際も森が逆サイドから加わってくるなど、攻めの姿勢は一貫しており。
岐阜は右サイドのみならず、左サイドもSBの文が「偽SB」のような動きを取り始め。
ただし石田が自陣で中央に絞るのに対し、文はワイドに位置する後方から、斜めにオーバーラップしてくるのが特徴でありその動きは対称的。
それでも両名がボールに絡む事はあまり無く、まだ発展途上という感じに映りました。
30分台には、再び福島が攻撃権を支配する時間帯に。
先程の分厚い右サイド攻撃が効いたか、中央からの突破あり、サイドチェンジありと多彩な攻めで岐阜を翻弄しに掛かります。
34分には敵陣右サイドで柴田がボールカットし、素早く中央へ運んだ末に矢島がシュート。
ブロックされて左スローインになると、大関・森のボールキープを経てクロスが上がり、ニアで塩浜がヘディングシュート(ゴール上へ外れる)とあの手この手でゴールを襲い。
しかしその多彩さでゴールを奪えなかった影響か、終盤は一転して矢島狙いのロングボールを多用する姿勢へシフト。
また中盤でのパスワークも中央を素早く前進する事が多くなり、一言で言えば攻め急ぎの感が強まった印象。
そのため攻守交替する事が増え、岐阜にも何度かチャンスが訪れますがこちらも決め手に欠き。
そのままアディショナルタイムに突入し、最後の攻撃は福島で、加藤のロングパスをエリア内中央で塩浜が収める絶好機に。
切り返しを経て放ったシュートは文がブロックし、こぼれ球を柴田が追撃するもシュートはふかしてしまい決められず。
結局1-1のまま前半を終え、絵的に好循環の福島も、それを逃し続けた影響が懸念されるブレイクとなりました。
そして迎えた後半、キックオフの福島は後方から矢島へロングパスと、終盤の姿勢を変えなかったようであり。(その後矢島の収めから繋いで右の柴田へ展開、塩浜からクロスが入る)
それでも勢いは依然として得たままの福島、直後(後半1分)には大関の縦パスを受けた矢島、エリア内へ進入してさらに短いスルーパス。
これに塩浜が走り込むも、文の対応で蓋をされて撃てず。
4分には再び矢島のスルーパス(ダイレクト)で抜け出した塩浜、今度はエリア内からシュートを放ちましたがブロックに阻まれ。
直後に岐阜もやり返し、こちらは最後方の甲斐から左へとミドルパス、受けたのは北。
ここからパスを受けた荒木がワイドからカットイン、そしてハーフレーンからミドルシュートを放ち。
これを山田が頭でブロックして防ぎますが、これにより傷口を痛めたという仕草をするなど、前後半ともに立ち上がりに負傷交代の危機に襲われた山田。(結局無事に最後までプレー)
福島はやはり前半より一層攻め急ぎの思考が強まったようで、中央をパスワークで抜けようとする攻めが目立ち。
そのヒントは上記の岐阜の攻撃で、北の動きにあり。
前線の守備の際は、降りてパスを受けにいく針谷をチェックする体勢へとシフトした北。
それにより(針谷が右IHなため)常時やや左寄りという意識となった結果、先程ワイドでパスを受ける事にも繋がっていたようでした。
あくまで守備時で福島のパスワークを阻むのが目的とはいえ、攻守一体であるサッカー故の現象が窺えました。(とはいえ、前年の生地のイメージがあるので違和感はあまり無く)
この岐阜の対策により、素早く繋がなければならない状況に陥っていた福島。
徐々に流れは逆転し、岐阜の攻撃機会が膨らんでいく試合展開。
福島は11分に森が、12分には針谷がミドルシュートを放つも、いずれも崩しきれていないものでゴールは奪えません。(前者はGK茂木が正面でキャッチ、後者はブロック)
そして16分、岐阜は右サイドで石田が鈴に反則を受けたというタイミングで、ベンチが動き。
河波・山内→粟飯原・田口へ2枚替えを敢行すると、得たFKでは早速入った粟飯原がキッカーとなり。
ここからの攻めは実らずも、直後の17分でした。
敵陣で文がパスカットし、持ち運びからのスルーパスを荒木に通すと、ワイドからカットインでポケットを突き。
そして果敢にシュートを放つと、外から巻いてサイドネットに突き刺し鮮やかにゴールゲット。
前半同様ポケットを突いての得点で、逆転に成功した岐阜。
これで追う立場となった福島、その後も岐阜の厳しくなったチェックを掻い潜るのに一苦労するパスワーク。
22分に2枚替えを敢行(矢島・塩浜→樋口・清水)したものの、流れを変えるどころか岐阜の攻勢を受けてしまいます。
追加点を狙う岐阜は、右サイドハーフに入った粟飯原を起点とした攻め。
23分石田のドリブル→パスを受けた粟飯原、クロスでは無くサイドチェンジを選択し、左奥で受けた荒木。
戻しを経て文がエリア内へ縦パス、受けたのは上がっていた北で、ボールキープからシュート。
これはGK吉丸にキャッチされて終了も、その後26分でした。
最終ラインから受けた粟飯原が右サイドをドリブル、追い越す石田を囮としてカットインから左へパスしてサイドを移し。
そして荒木の戻しと先程と同じパターンを経て、入れられた北のクロスがファーでフリーとなっていた石田の下へ。
折り返しの末に田口がゴールネットを揺らし、待望の追加点を獲得します。
2点差とされた福島、キックオフの前に針谷→上畑へと交代。
目の色を変えて攻め上がるも、フィニッシュには辿り着けずと厳しい状況を変えられません。
大関が左ポケット奥でカットインする場面を作る(29分)も、庄司が蓋をして防ぎ冷静にいなす岐阜。
すると再びの33分、右サイドでボールを持った粟飯原が今度は素直に石田へスルーパス。
そしてダイレクトでクロスが上がると、藤岡のヘディングシュートが炸裂。
ゴールに突き刺さり、これで4点目とダメを押します。
これで大勢が付いた感のこの試合。
35分には両チーム交代を敢行し、岐阜は北・藤岡→西谷・新垣。
一方の福島は加藤・大関→宮崎・粟野に代えるとともに、配置も大幅に弄り。
清水が左サイド・粟野が右サイドとなったのに加え、上畑と宮崎がドイスボランチ気味に並び。
よって森・樋口の2トップ(4-4-2)or1トップ+森がトップ下(4-2-3-1)、という布陣にシフトします。
その後37分、今度は福島・堂鼻がバックパスをミスしてしまいCK献上と、完全に立場が入れ替わったという絵図を描き。
それでもカウンターの意識を強めた岐阜に対し、攻め込む福島という展開が出来上がるも、フィニッシュが遠い状況は変えられません。
43分に岐阜は最後の交代、文→遠藤へと代えて5バックシステム(3-4-2-1)へとシフト。
しかしここからまたも岐阜が攻勢に入り、その要因は西谷の推進力で、薄い福島ディフェンスを突きまくり。
何度も左ポケットに進入し、田口にラストパスを送ったり(45分・カットされる)自らシュートしたり(AT・堂鼻がブロック)と、突如として目立ちます。
結局5点目は奪えずも、最後はCKから遠藤がヘディングシュート(枠外)と、攻撃の流れを貫いて試合終了の時を迎えた岐阜。
過去4年の失敗を糧とし今度こそ……という入りとなり得たでしょうか。
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