※前回の愛媛の記事はこちら(40節・相模原戦、1-2)
※前回の山口の記事はこちら(41節・甲府戦、0-1)
残留争いに明け暮れた両クラブも、来季の道筋が既に決定。
山口がJ2残留を確定させた一方で、愛媛はJ3降格が決定と、明暗がくっきり分かれた状態で最終節でぶつかり合う事となりました。
試合が始まり、いきなりの前半1分に愛媛が好機、前田の裏への蹴り出しを直接エリア内で収めた近藤がシュート。
ブロックされて左コーナーキックを得ると、キッカー川村クロス→ニアで西岡フリックでエリア内へ流れたボールを、再び近藤がシュートにいき。
これはミートせずこぼれるも、自身で拾い直してもう一度シュートしましたがGK吉満がキャッチ。
2分足らずで3本シュートを見せた近藤。(1本は未遂ですが)
その後山口がCKを得るも、そこから愛媛のカウンターが発動する(シュートには繋がらず)など、文字通りの「負けても失うものは無い」戦いを見せる愛媛。
しかし今季常時といってもいいほど、降格圏に居座り続ける事を強いられた愛媛。
この日も一度その意気込みがいなされると、後は山口のサッカーに耐えざるを得ないシーンが目立ち。
山口は持ち前のプレッシングで愛媛の攻撃機会を奪うと、10分以降はボールポゼッションを高めた主体的な攻撃で押し込んでいきます。
16分には橋本の左サイドでのボール奪取から中央に渡り、石川がエリア内右へスルーパスを送ると、走り込んだ高井がシュート。(愛媛・茂木がブロック)
それでもホーム最終戦という立場上、これ以上脆弱さを見せる訳にはいかない愛媛。
24分には山口のプレッシングを受けつつも何とかボールキープし、西岡のロングパスを受けた近藤がエリア内に進入してシュート。(ブロックに当たったのちGK吉満セーブ)
シュート数では山口を上回り、何とか威厳(?)を保ちつつ、飲水タイムを挟んで第2クォーターへ。
その立ち上がりも、28分と29分に立て続けに大ベテラン・山瀬がシュートを放つ(ともにブロックに阻まれる)など、愛媛のゴールへの執念が表れます。
しかし再び山口のサッカーが襲い掛かる、という具合に同じ流れとなり。
流れを手繰り寄せたのは佐藤謙介のフィードで、33分に自陣で反則を受けると、素早いリスタートでロングパスを供給する佐藤謙。
これが左サイドで高井に渡り、カットインでエリア内を突く攻撃。(シュートまではいけず)
直後の34分にも、佐藤謙の裏へのミドルパスに大槻が走り込む(GK岡本が抑える)シーンを作り、迎えた35分。
山口の最終ラインからの繋ぎに対し、これまでとは打って変わって果敢にプレスにいった愛媛。
中盤で高井から奪いかけたものの、こぼれ球に対しすかさず佐藤謙がスルーパスを送ると、完全フリーで受けた橋本がドリブルで持ち込んでGKと一対一に。
落ち着いてシュートをゴールへと突き刺した橋本、特別指定としての最後の試合でプロ初ゴールを挙げました。
逆にこれまで中々プレッシングを掛けられずボールを握られていた愛媛、このタイミングで前に出ていった結果は、裏を完全に取られて失点という最悪なものとなってしまい。
その後もショートパスを繋いだのちの、佐藤謙のキラーパスというパターンで好機を重ねていく山口。
41分にはGK吉満から繋ぎ、愛媛のプレッシングを受けつつも、今度はもう片方のボランチである田中渉が裏へロングパス。
左サイドで受けた橋本から、エリア内左へのスルーパスに走り込んだ池上からマイナスのクロスが入り、中央で受けた高井がシュート。
しかし愛媛・高木のブロックで追加点はならず。
何とかやり返したい愛媛は、45分に左サイドで高木がスルーパスを送り、走り込んで受けた近藤がエリア内へと持ち込んでシュート。
しかしGK吉満にセーブされ、劣勢を跳ね返すゴールは生まれず、そのまま前半を終えます。
シュート数では愛媛が上回るも、同じ下位同士の対決とは思えない程、そのサッカーの差がハッキリとしていた試合内容。
同じ3-4-2-1のミラーマッチながら、ビルドアップではミシャ式への変形を織り交ぜつつ、ボランチの展開力が冴え渡り。
守備では果敢なプレッシングで、最後尾から組み立てようとする相手の出鼻を挫くなど、遅まきながら山口の理想のサッカーが色濃く描かれたものでした。
正直リーグ終盤にして監督交代が行われた時には、「ひょっとして降格か……」とも思ってしまったものですが、受け継いだ名塚義弘監督が実に良くチームを建て直し。
前監督(渡邊晋氏)のサッカーを潰さずに巧く昇華させ……と、理想的な引継ぎを果たしたチームの姿がこの日のニンジニアスタジアムにあった、とは言い過ぎでしょうか。
これならば来シーズンへの続投がはや発表されるのも納得でありますが、シーズンオフが挟まれてもこれを維持出来るかどうか。今季の松本みたいな例もありますし
ビハインドの愛媛がハーフタイムに動き、右ウイングバックを交代。(岩井→忽那)
主導権の握り合いを経て、最初に好機を掴んだのは愛媛(後半3分、エリア内に持ち込むも高木が楠本に倒される・反則無し)と前半同様の入りとなり。
7分にはGK岡本のフィードを受けた川村が右へ展開、忽那のドリブルを挟んでリターンを受けた川村がエリア手前からシュートを放ちますが、ゴール右へと外れ。
既に広島からレンタルで来て3年目の川村、今季はすっかり主力として奮闘。
後にレンタルバックが決定する運びとなりますが、この降格圏での戦いがJ1で通用する精神力を身に付けさせる事となるでしょうか。
愛媛の反撃を予感させたものの、一度それが剥がされると……と、以降前半のリプレイを疑いたくなる流れに。
8分に山口がカウンターで好機を作り、シュートには繋がらずも、これがペースも文字通りひっくり返る起爆剤となります。
11分には最終ラインでのパスワークを経て、戻しをGK吉満が左サイドへロングパス、これに橋本が抜け出して受けるという前半の再現シーンに。(シュートまではいけず)
16分には敵陣で田中渉がボール奪取し、佐藤謙とのパス交換を経て池上へパスを通し、池上がドリブルからシュートを放つもGK岡本がキャッチ。
約10分間攻撃を受けっぱなしとなっていた愛媛は、高木が山口・石川に反則を受けてフリーキックを得たタイミングで、吉田→唐山へと交代。
同時に山口も大槻→梅木へ交代と、同じタイミングで1トップ同士交代というベンチワークがぶつかり。
その後FKからの放り込みで愛媛が押し込むシーンが続くも、22分に敵陣深めで梅木がボール奪取した山口が決定機。
高井がエリア内へとカットインしてマイナスのクロスを送り、中央に走り込む佐藤謙が絶好のシュートチャンスを迎え。
しかし佐藤謙が合わせたボールは右へ逸れ、タッチを割るシュートとはいえないキックとなってしまいました。
23分に飲水タイムが挟まれ、危機を逃れた格好となった愛媛は、明ける際に高木・前田→内田・森谷へと2枚替え。
何とかホームで希望を与える1点をもぎ取りにいったものの、以降も山口ペースは変わらず。
スルーパスをエリア内へ送り続けるシーンを経て、30分には中央で縦パス→ポストプレイの連係での前進から梅木がミドルシュート(GK岡本キャッチ)と、相変わらず攻め立てる山口。(29分に高井→島屋に交代)
ペースをひっくり返したい愛媛は31分。
右サイドでのパスでの前進を経て、受けた忽那がカットインの姿勢から中央へ縦パスを送ると、森谷がスルーした先で受けたのは近藤。
良い意味で裏切りとなったこのプレーで近藤が抜け出し、GK吉満の前進を見てエリア手前からゴール右へシュート。
ゴールネットを揺らし、同点に追い付いた愛媛。
尚も西岡→榎本へと交代し、逆転を狙いにいく体制に。
4-2-3-1へとシフトし、近藤が右サイドハーフ・川村がトップ下・榎本が左SHという2列目の攻勢となります。
35分には唐山が山口・佐藤謙に反則を受けてのFK、内田の放り込みがクリアされた所を山瀬がシュート、ブロックされるも尚も繋ぎ。
内田がミドルシュート、ブロックされたボールをさらに繋いだのち榎本がシュート(ブロック)と連撃を浴びせるも勝ち越しはならず。
一方の山口も、40分に佐藤謙・田中渉→佐藤健太郎・岸田へと2枚替え。
この日のサッカーを支えていたドイスボランチも、流石に疲労は隠せず交代の運びとなりました。(池上がボランチに回り、岸田がシャドーに入る)
ここからは山口がフィニッシュで上回りを見せ、42分にはCKからのこぼれを橋本がミドルシュート。(ゴール上へ外れる)
45分には眞鍋の右からのクロスに梅木が合わせヘディングシュート(枠外)、アディショナルタイムには再度橋本がミドルシュート(GK岡本キャッチ)とシュートを打ち続けるもモノに出来ず。
勝ち越し点はどちらが奪うか、というATでしたが、ここから双方とも攻撃が雑になり。
ロングボールの蹴り合いで時計が進んでいく事に。
得点したいという前掛かりな気持ち故の粗雑ぶりでしょうが、愛媛はそんなシーンから相模原戦での敗戦を招いてしまっただけに、傍らから観ていて何とも言えない気分となり。
するとAT終盤に山口の攻撃ターンへと移る、あの試合の悪夢再び……という流れが生まれましたが、島屋のクロスを受けた岸田が収められずといったシーンもあり命拾い。
結局1-1のまま試合終了となり、双方勝ち点1を分け合う結果に。
愛媛はこの勝ち点1で20位に順位を上げたものの大勢に影響は無く、来季はJ3への戦いへと赴く事となります。
「原点回帰」を謳った今季でしたが、結局衰運を止められる事は無く。
来季は憚らずも今治と同カテゴリとなるだけに、比較されるのは避けられない状況の中、どんな戦いを見せるでしょうか。