ロード・ダンセイニ。
むかーしは「ダンセイニ卿」と背表紙に書かれていたものもあったように思います。
爵位を持っていらしたのですよね。男爵。

二壜の調味料
著者:ロード・ダンセイニ
訳者:小林 晋
発行:早川書房
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解説によると、江戸川乱歩が言った「奇妙な味」の作品たちというのは、これらロード・ダンセイニの作品だったのだとか。
「奇妙な味」とは言い得て妙。さすが大御所です。
短編は全部で26。
引退した老警部やベテラン給仕長に話を聞くといった設定が多いので、だらだらした部分がなく、出来事そのものがぎゅぎゅっと詰まった印象の作品がならびます。
設定は同様でも、誰が語るか、誰が聞くかで、雰囲気はだいぶ変わりますから、さほど飽きが来ることもありません。
作中の時代は「大戦の前」や「二つの大戦の後」というあたり。
作品自体にも若干時代はついている感じがするのも、今となっては味のうちでしょう。
たとえば、氷で作った凶器とか。
でも、案外、トリック自体は重要視されていないように思います。あっさり種明かしされちゃいますし。
魅力的なのは、トリックではなく、いろいろなもののねじれ具合です。
着地がそこ?
矛先はそっち?
動機はそれ?
主役は君か!
予想や期待とのずれが、何ともいえない読後感を呼びます。
たぶん、真相や展開をきちんと予想、いえ、ミステリならば推理ですね、それができて、おおかた的中していた場合のほうが、乱歩先生おっしゃるところの奇妙な味が増すのかも。
表題作『二瓶の調味料』は、不思議な縁で同居することになったセールスマンのスメザースと青年リンリーが、スコットランド・ヤードもお手上げの難事件に取り組んでいく様子を描いたものです。
事件と調味料。
さて?
このリンリー&スメザースのシリーズが9編で、ほかにも、ミニシリーズふうのものがいくつか。
中には、チェスが題材になっている作品もありました。
チェスマシンのお話で、ちょっとSFっぽい印象。
チェスに関連した短編を集めた『チェス小説アンソロジー モーフィー時計の午前零時』にもプロブレムが採られていたくらい、ロード・ダンセイニはチェス好きだったらしいですね。
この作品が採られてもよかった気がします。
あ、そういえば、リンリー青年もチェス好き。
こういう作品を読んでしまうと、幻想小説家のダンセイニのイメージを忘れてしまいそうです。
そもそも読んだ数が少ないですし。
これを機会に読んでみたいと思います。
[読了:2012-09-04]
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