ゆっくりと世界が沈む水辺で

きしの字間漫遊記。読んでも読んでも、まだ読みたい。

松尾スズキ【老人賭博】

2013-09-30 | 文藝春秋

タイトルのために「ろうじんとばく」と入力して変換をしたら、「老人とバク」になりました。
私の辞書が何を学習しているのか疑問ですが、一回で「老人賭博」と出てしまうのもどうかと。

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 老人賭博

 著者:松尾スズキ
 発行:文藝春秋
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NHKの朝ドラ『あまちゃん』が終わってしまって淋しくなった、巷でいう「あまロス」の状態で目にした「松尾スズキ」の文字に惹かれて手にした1冊。
ひさしぶりに著者の小説を読みました。

まず登場するのは顔面の内側に腫瘍ができてしまうという奇病にかかってしまったマッサージ師の青年。
やがて、彼は客として通ってきていた作家兼俳優に弟子入りすることになります。
そして、ふたりは映画のロケに。
シャッター街を活性化させる老人と少女を描くというその作品には、主役の老人にはこれが映画の初主演というベテラン老優が起用されています。
その映画のために集まった、いずれも微妙な知名度の俳優たちは、さまざまな賭けをして退屈を紛らわしているうち、やがて主役の老優が長セリフでNGを出すかどうかの賭けに至ります。賭け金は100万円超。
さて、その結果は?という物語。

これは好みが分かれると思います。
たぶん、嫌いな人は大っ嫌いでしょうねぇ。
そもそも、人が失敗するのを待つような、もっといえばわざと陥れようとするようなそんな賭けはどうなのよと、ね、そう思うとすると、もう全部だめかも。
どちらかといえば、私も、そういう性質ではありますが、松尾スズキだからなぁという気分が勝ります。
それぞれの登場人物が背負うものも奇妙であったり、極端であったりと様々。
けれども、清廉で高潔、一点の曇りもない、強く正しい人たちや、バランスのとれた人をベースにした物語なら、他の方にお任せしておくのがよろしいでしょう。
基本、ぐだぐだでだめだめな感じで、でも、みっちりとした悪もなく、あるのは悪乗りと自虐的な笑いの感覚と、諦念と、ある種の真実と、物悲しさと優しさ。
この『老人賭博』が好きな作品であったか、正直に答えよと言われたら、それほどでも…と答えてしまいますが、松尾スズキを読んだという感覚は味わえます。
エッセイのほうがお薦めとは思いますけれど。ああ、でも、『クワイエットルームにようこそ』は読んでほしいかも。
ちなみに松尾スズキさんとセットで思いだすのが、中島らもさん。惜しい方でありました…。


いや、それにしても、我ながらスローペースです。
週に更新2回。週に3冊読めてないってことですからねぇ。ストックもほとんどなし。
こうしてるうちに、いろいろ易きに流れてしまうのだよなー。
まずい、まずいぞ。





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2 コメント

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えーきしさん! (かもめ)
2013-09-30 23:23:17
いったい今までどんなペースで読んでいたんですか?
>週に3冊読めてないってことですからねぇ

私は3冊読めたら読んだなって感じですよ。
まあ児童書とかラノベとかが入って4、5冊になることもありますが。

ちなみにストックは……最近は、下書き状態のものが2,3冊あるぐらいでほとんどありません。

まあでも、お忙しい時期なら、週に2回は更新!とかって目標でもいいじゃないですか。
私はしょっちゅう覗きに来ますがww
かもめさん (きし)
2013-10-01 22:00:41
>いったい今までどんなペースで読んでいたんですか?

…ですよねぇ。去年あたりまでの数年は尋常じゃなかったのですよ。
むしろ、今が人として真っ当な生活だと思います。ちゃんと働いてるし。なんて書くとあらぬ誤解を呼びそうですが w
目標週2回。いいですね!それで行きたいと思います~。これからもよろしくです^^

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