人形の販売と修復をするお店「たまさか人形堂」を舞台にしたシリーズの第2弾。
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たまさか人形堂それから
著者:津原泰水
発行:文藝春秋
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続いてたんですねぇ。
それも失礼な話ですが、語られはしなくても、お店にはいろいろなお客さんがいろいろなお人形と想いを持って訪れ続けるのだろうなぁと思っていたので、1作目の『たまさか人形堂物語』で本は終わりでもかまわない気分だったのです。
お店を継ぐことになったのはなりゆきだったけれど、お店とその仲間を大事に思い始めた澪さんも、それぞれに重たいものを胸に秘めた職人の師村さんも富永くんも、いろいろありながら、でも、きっと元気でいるだろうと。
その漠然と想像していた「いろいろ」が描かれた第2弾には、5編が収められています。
『香山リカと申します』、『髪が伸びる』、『小田巻姫』、『ピロシキ日和』、『雲を越えて』。
ひとつめのお話では着せ替え人形界のベストセラーであるリカちゃん人形。その他、市松人形、阿波の人形浄瑠璃人形、外国のマリオネット、マネキンなどが登場します。
最後の『雲を越えて』は、当の人形たちがおしゃべりで進む物語。
大切に作られたもの、愛されてきたもの、長く残ったものには魂が宿るといいます。人形ならば人形同士なら話すのは当たり前だよね、と自然に思えてしまいます。
量産型のお人形から、作家ものの芸術としての人形、職人が技の粋をみせる人形と、ひとまとめには語れない人形は、それに思いを賭ける人との関係も一様ではありません。
『髪が伸びる』で登場するのは市松人形。市松人形でこのタイトルとくれば、さあ、ホラーだ!という取り合わせですが、そこはこのシリーズのお仕事ではなく、人形を愛でる人たちの思いと職人の心意気が響き合う、読後感が切なくも心地よい1作となっています。
その他に、富永くんのつくる、つい頭にかぶって写真を撮りたくなってしまうタコのぬいぐるみ「八っつあん」も登場。
1作目同様の人が人形へかける思いの他に、今回は作り手のほう、特に、富永くんの創作者としての葛藤が描かれます。
店主である澪さんは心配でなりませんが、物をつくる者とつくらない者の間の深い溝は深いのです。
物をつくるということ。
作品のテーマとしてはなかなか重いものです。
けれども、澪さんに浮いた話がもちあがったりすることもあり、作品の雰囲気はなごやか。
メインの人物たちが曲者なりにいい人たちで、悪役を振り分けられた人物も必要なだけ悪いというほどの良さ。
文章も会話が中心でさくさくと読み進めることができてしまいます。
1作めを読んだ時、ドラマになれば観ちゃうなぁと思ったのは、そのせいもあったかと、いまさらながら思い当りました。
それにしても、このたまさか堂のシリーズと『バレエ・メカニック』が同じ著者から生まれていることに驚きます。
幻想的なものもあれば、本格ミステリもありと、結構な幅広さ。
それぞれに書きたいことを突き詰めていった結果ではあるのでしょうけれど、基本的に器用なタイプの方なのでしょうね。
いや、書きたいことがたくさんある方なのか…。
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