岩下尚史氏という著者名だけでピンと来なくても、お顔を見れば「ああ、あの人ね」とわかるかも。
TVでの扱いはいかにもいろものといった感じが多かったようですが、略歴によれば、新橋演舞場株式会社に長く所属され、社史を編纂されたのだとか。
その経歴を存分に活かして書かれたのが、この『芸者論』。単行本時のサブタイトルは「神々に扮することを忘れた日本人」、文庫化に際して「花柳界の記憶」と変わっています。
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芸者論
― 花柳界の記憶
著者:岩下尚史
発行:文藝春秋
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存在は知っていても、決して身近ではない「芸者」という職業の流れを追った1冊。
著者がその職業を通して出会った名妓たちへの尊敬と、変わりゆく花柳界への愛惜の想いが、この本を書かせたのだろうと素直に思うことができます。
その職業の源泉を神をもてなす巫女と位置付けて始まるこの本で、時代とともに変遷を繰り返してきた花柳界の歴史を辿ることは、とりもなおさず日本の歴史と文化を新たな側面から見ることであり、新鮮な思いで読み進めることになりました。
そんな構えたこと以外にも、単純に時代劇の中での彼女たちの描かれ方の多様さ、「芸は売っても身は売らぬ」は、気持ちの問題ではなく、職業制度の問題であったかと腑に落ちたり、そして、その表れが長襦袢を着るか着ないかであったりすることに、何やらかわいらしさもかなしさも感じ、その内容もさることながら、自分のその都度の想いにすこし驚いたり。
驚くといえば、芸者、遊女といった、小説その他の中ではとかく物悲しい存在として描かれることの多い職業を扱っていながら、この本の印象のなんとからりとしていることか。
「論」としている内容であるからとはいえ、著者自身の美意識のゆるぎなさが感じられます。
文体もしかり。
選ばれたことばや独得のリズム感や流れを持つ文体は、今となっては若干古めかしい印象も与えますから、もしかしたら、読みにくいと思われる方もおいでになりそうですが、それが著者にとっては自然であり、なおかつ、吟味したものであろうことが、私にとってはとても魅力的でした。
タモリ倶楽部で見たことあるよ、博識だ~と思ったよ。
実は凄い人だったのね。
しなっとしたかんじにみえるけど、なかなかシャープな印象でした。
るいちゃん、読む?読む?