日記を商うという不思議なお店を舞台にした物語。
幻想日記店
著者:
発行:講談社
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人に読ませることなど意識もせず、自分のためだけに思いを綴った日記が本物の日記。その思いの記録は、同じように日々悩む、惑う人が道を見つけるための助けにきっとなる。
必要とする人の手に必要な日記を渡すその店の名前は、そのまま「日記堂」。
店の主はもちろん浮世離れした美女で、否応なしに店で働くことになった青年は不思議な体験をしていくことになるという物語です。
タイトルにつられて手にしましたが、『幻想郵便局』、『幻想映画館』と続いたシリーズの第3弾だそうです。
シリーズとはいえ、途中から読んでも何ら差し支えはありません。他の本も読んでいれば、楽しい発見があったのかもしれませんけれど。
うっすらとした怖さを漂わせたプロローグに、なるほど「幻想」…と思わせておきながら、展開したのは意外なことに(私にとっては)、日記の謎をはらむ軽いミステリ風の出来事。
いかにも素性の怪しげな美女に、飄々としたおじちゃん(おじいちゃん?)、強面の郵便屋さんに怪盗と、奇妙な、その存在自体が謎と思わせる人物たちの登場もあって、雰囲気はコミカルで、すいすいすいと読めてしまいます。
人にも出来事にも翻弄される主人公の青年は気の毒ですが、彼も案外のほほんとして、気楽に読むにはちょうどいいところなのかもしれません。
とはいえ、物語は人の心の不思議、思いのこもった言葉の力を描こうとするもので、やがて、ちょっと驚くようなところへ向かっていきます。
「日記」のお話なんだから、なんの不思議もないといえばそうなのですが、それが出てくるとは思っていなかったなぁというところでしょうか。
それにしてもあっという間に読めてしまった本でした。
最近、読みたいものよりも、なんだか、読みやすいものに傾いている気がします。
今はがっつりしたものを読めるような気もしないので、たぶんちょうどいい塩梅の本を自然と選んでいるのだろうと思います。
やっぱり、気持ちに余裕がないのでしょうねぇ。
まあ、以前だって、そんながっつりしたものを読んでいたわけではありませんが。
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