ヘーゲル『哲学入門』 中級 第二段 自己意識 第三十三節[主人と従僕の関係の発生]
§33
Aber die Selbstständigkeit ist die Freiheit nicht sowohl außer und von dem sinnlichen, unmittelbaren Dasein, als vielmehr in demselben. Das eine Moment ist so notwendig, als das andere, aber sie sind nicht von demselben Werte.(※1)
第三十三節[主人と従僕の関係の発生]
しかし、自立するということは、外部にあって 肉体的な直接的にそこにあるものから自由であるということではなく、むしろ内面における自由である。一つの契機は他の契機と同じように必然的なものであるが、しかし、それらの価値については同じではない。
Indem die Ungleichheit eintritt, dass dem einen von zweien Selbstbewusstsein die Freiheit gegen das sinnliche Dasein, dem andern aber dieses gegen die Freiheit als das Wesentliche gilt, so tritt mit dem gegenseitigen Anerkanntwerdensollen in der bestimmten Wirklichkeit das Verhältnis von Herrschaft und Knechtschaft zwischen ihnen ein; oder überhaupt des Dienstes und Gehorsams, insofern durch das unmittelbare Verhältnis der Natur (※2) diese Verschiedenheit der Selbstständigkeit vorhanden ist.
二つの自己意識のうちの一方は、肉体的な存在よりも自由を本質的なものとみなし、もう一方はそれに対して、自由よりも肉体的な存在を本質的なものとみなすという 不平等の 生じることから、お互いが認められたいという特定の現実のなかにおいては、両者のあいだに主人と従僕の関係が生まれてくる。言いかえれば、自立することについて、生まれつきの直接的な関係を通してこの区別が存在するかぎりは、奉仕と服従 の関係が一般に生まれてくる。
※1
Das eine Moment ist so notwendig, als das andere
「一つの契機は他の契機と同じように必然的である」
私たちの自由には、「精神面の自由」と「肉体面の自由」があるということである。いずれの自由も人間にとって必然的なものであるが、いずれに価値を見出すかは同じではない。
※2
durch das unmittelbare Verhältnis der Natur
「生まれつきの直接的な関係を通して」
自然の世界においては、諸動物の間に典型的に見られるように、また人間の場合においてもそうだが、能力、素質、環境、遺伝などの側面において、剥き出しの不平等、区別が存在する。その結果として弱肉強食の関係が、主人と従僕の関係が生まれる。
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