夕暮れのフクロウ

―――すべての理論は灰色で、生命は緑なす樹。ヘーゲル概念論の研究のために―――(赤尾秀一の研究ブログ)

ヘーゲル『哲学入門』第二章 義務と道徳 第六十一節[他者への誠実]

2022年09月29日 | ヘーゲル『哲学入門』
 
ヘーゲル『哲学入門』第二章 義務と道徳 第六十一節[他者への誠実]
 
§61
 
Unter den besonderen Pflichten(※1) gegen die Anderen ist die Wahrhaftigkeit im Reden und Handeln die erste. Sie besteht in der Gleichheit dessen, was ist und dessen man sich bewusst ist(※2), mit demjenigen, was man gegen Andere äußert und zeigt. — Die Unwahrhaftigkeit  ist die Ungleichheit und der Widerspruch des Bewusstseins und dessen, wie man für Andere da ist, somit sei­nes Inneren und seiner Wirklichkeit und damit die Nichtigkeit an sich selbst.

第六十一節[他者への誠実]

他者に対するさまざまなな義務の中では、言葉と行為における 誠実 さが第一の義務である。
誠実さとは、実際にあるところものが、自分の意識していることと一致していること、それと人が他者にむかって表現したり言ったりすることとが一致していることにある。 ⎯⎯⎯⎯⎯ 不誠実 とは、人が意識していることと、それを他者に対して示していることとが一致しておらず、矛盾していることである。人の内面とその現実が一致しておらず矛盾しているために、不誠実はそれゆえにそれ自体において虚しいものである。
 
 
※1
「普遍 → 特殊 → 個別」 は量的には「すべての → いくつかの → ひとつの」と言いうるから、ここでの「 den besonderen Pflichten 特殊な義務」は「さまざまな義務」と訳した。

※2
dessen man sich bewusst ist
「人が自ら意識していること」

ヘーゲル哲学の根本にして最大の功績は、人間の意識の自己内分裂(そえゆえに「自分」という)を、意識の二重化の必然性とその意義を論証したことである。その結果として、人間のみが善と悪を知るようになり、また「虚偽」を行うようになった。動物は嘘をつかない。キリスト教の人間性悪説の根拠もここにある。

また、このことは人間のみが言語をもつこととも関係している。言葉と行為が一致しているか否か、他者との関係において誠実と不誠実が人間の倫理の問題として出てくる。
 
 
 
 
 
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