夕暮れのフクロウ

―――すべての理論は灰色で、生命は緑なす樹。ヘーゲル概念論の研究のために―――(赤尾秀一の研究ブログ)

§278d[至高性(主権)をつくる観念論、Der Idealismus, die Souveränität ausmacht]

2018年06月04日 | 法の哲学

 

§278d

 

[至高性(主権)をつくる観念論、Der Idealismus, die Souveränität ausmacht]

Aber der Despotismus bezeichnet überhaupt den Zustand der Gesetzlosigkeit, wo der besondere Wille als solcher, es sei nun eines Monarchen oder eines Volks (Ochlokratie), als Gesetz oder vielmehr statt des Gesetzes gilt, dahingegen die Souveränität gerade im gesetzlichen, konstitutionellen Zustande das Moment der Idealität der besonderen Sphären und Geschäfte ausmacht, daß nämlich eine solche Sphäre nicht ein Unabhängiges, in ihren Zwecken und Wirkungsweisen Selbständiges und sich nur in sich Vertiefendes, sondern in diesen Zwecken und Wirkungsweisen vom Zwecke des Ganzen
(den man im allgemeinen mit einem unbestimmten Ausdrucke das Wohl des Staats genannt hat) bestimmt und abhängig sei.

しかし専制政治とは一般的に無法状態を意味するものであり、そこでは、特殊な意志が ⎯  それが君主の意思か、あるいは民衆の意思(衆愚政治)であるかを問わず ⎯ 法律として、あるいはむしろ法律に代わるものとして通用する。
これに対して、主権die Souveränität は、まさに法的な、立憲的な状態において、特殊な領域と職能の観念性の要素を構成する。すなわち、いいかえれば、このような領域は、独立したものではなく、その目的と活動の仕方において自立したものでもなければ、自分自身に沈潜するものでもなくて、全体の目標(一般的に、それを私たちは「国家の福祉」という不確かな表現で呼んでいるが)についてのこれらの諸目的と活動の仕方に依存し、決定づけられるものである。


特殊な領域と職能の観念性の要素 das Moment der Idealität der besonderen Sphären und Geschäfte とは、三権分立を事例に考えるとわかりやすいと思う。

司法と行政と立法は、それぞれが特殊な領域と職能とを構成するが、これらの要素das Momentは、それぞれ独立したものではなく、相互に依存し規制しあっている。悟性的な意識で行われたフランス革命の後期には、三権がそれぞれ独立を主張し相互に対立を招いて、die Souveränitätの生命性der Idealitätを破壊し国家の崩壊を招いた。

ヘーゲルはこの観念性der Idealität という事態については、有機体における各器官や国家の各機関など、事物を構成する要素das Momentのそれぞれの相互依存性を考えている。国家にあっては、それがdie Souveränität(権威、威光、主権、明治憲法でいう、国家統治の大権)である。

 

 
 
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6月3日(日)のつぶやき

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