夕暮れのフクロウ

―――すべての理論は灰色で、生命は緑なす樹。ヘーゲル概念論の研究のために―――(赤尾秀一の研究ブログ)

ジーコとオシム

2007年07月22日 | 哲学一般

ジーコとオシム            

         

昨年のワールド・カップでジーコ監督に率いられた日本サッカーが対オーストラリア戦で惨めな敗北を喫してから一年が経過した。

日本サッカー、対オーストラリア初戦敗退が示すもの

その後日本サッカーの監督は、ジーコからオシムに交代した。そうして現在新しい監督の下で、日本サッカーは新しい戦術を確立し始めているようである。

サッカーに限らず、野球でも、バレーボールでも、そして企業においても、さらには国家においても、すべて戦闘に従事する組織というものにおいては、その戦力は監督、指導者の力量に大きく規定される。チームの戦闘能力の6~7割は監督・指導者の力量によって決まるのではないだろうか。時には、勝つも負けるも監督しだい、指導者しだいという場合もあるだろう。

ジーコ監督からオシム監督に代わって、確かに日本チームのサッカーに戦術の型ができ始めたといえる。トルシエであれジーコであれ、戦術に「型」がなかった。最近のいくつかの日本チームの対外試合を見ても、素人目にもそれはわかる。監督としての資質、力量の優れているのは、その選手時代の力量はとにかく、いうまでもなくジーコではなくオシム監督のほうだろう。ジーコ監督はサッカー選手個々人の技量に頼って、チームとしての組織的な戦術と呼べるほどのものはとにかく確立できていなかった。またその必要についての問題意識自体がこの監督には希薄だった。その前のトルシエ監督にもそれほど明確に攻撃の型を追求しているようにも見えなかった。日本選手たちにそれを目的意識的に練習させてはいなかった。

だから、かっての対オーストラリア戦などでも、チームが勢いに乗って攻め続けているときはよいが、ひとたび選手たちの疲れがひどくなってきたり、攻め込まれて日本の陣形が崩れ始めたりすると、専攻の型を失って総崩れになった。

しかしオシム監督になって、専攻のための陣形が確立し始めているようにも見える。また、オシムのサッカーは基本に忠実であるようにも思える。日本選手たちもそれを守って、オシムの目指す日本型サッカーを確立し始めている。これまでの日本代表チームには明確には見られなかったものである。やはりオシム監督はこれまでに日本チームを任された外国人監督の中ではもっとも優れているのではないだろうか。オシム監督には、「オシム語録」などのいくつかの著書もあるという。まだそうした本を眼にしたことはないが、本来の監督であれば、サッカーに関する理論書、指導書を数冊でもものにしているだけの理論的な力量が当然の資格として何よりも求められるべきものである。

それでもなお、現在なお日本人チームに欠けていると思えるのは、サッカーの勝負の構造を論理的に分析し把握できる選手一人ひとりの能力ではないだろうか。体力と練習量だけでもある程度までは強くなることはできる。しかし、ワールドカップで優勝できるくらいになるためには、戦略と戦術を構想できる高度の論理的能力が、監督選手ともに必要である。アンダー20の若い選手には、その面に優れた能力を持った選手も見られはじめているようだけれども、まだ、現在のワールドカップ代表選手クラスの選手の多くは、本能的な才能と、ひたすらのがんばりだけの盲目的な練習に依存しても、理論によって自己の能力を開発して行くことのできるレベルの選手は少ないように思える。しかし、それでは本当に強いサッカーチームはできないと思う。オシム監督にはそれが分かっていても、日本の選手たちがオシム監督の要請に十分に応えきれず、オシム監督をイラつかせている。

日本チームが本当に強くなるためには、日本の学校教育から、とくに国語教育から変えてゆかなければだめだ。もっとサッカー選手たちにも哲学教育を訓練し、彼ら一人ひとりの論理的思考力を高度のものにしてゆかなければ、日本チームは世界最強の仲間入りは本当にはできない。オシム監督になって改善されてきてはいるとはいえ、だから日本サッカーはまだ子供の、理論なき戦術にとどまっている。そして、この日本チームの弱点は、いうまでもなく、今なお国民や国家の弱点でもある。

それにしても日本の一部のサッカー選手たちにやめてほしいと思うのは、試合の最中に彼らがエヘラエヘラ笑い顔を折々見せることである。間抜けたように気が抜けるし、本当に真剣に戦っているのか疑わせもするからだ。それは選手たちにも不本意なことだろう。

日本、PK戦を4―3で制し準決勝へ…アジアカップ(読売新聞) - goo ニュース

 

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