Hiroの雑記帳

日常興味を引いたことを気ままに書き込みます。

令和落首考 2020年後半

2020年12月28日 | 一般

恒例の朝日新聞「令和落首考 2020年後半」。読みやすいように全文を転載します。

「令和落首考 2020年後半 西木空人
 「踏み出した足引っ込める百と聞き」。第1波を体験したあとの7月初め、思えば私たちは可憐(かれん)でした。「三歳児自分の意思でマスク着け」

 秋、少なからぬ人びとの心情が様変わりしたようです。「医師会に耳を貸さない人出かな」「GoToと騒いで浸(つ)かる茹(ゆ)で蛙(がえる)」

 そしていま、感染急拡大、医療は崩壊目前。川柳子はすでに7月半ば「ただの風邪のはずがなかろうこの惨状」と鋭く予見していたのですが。

 「朝日川柳」掲載句を読み返しつつ、この半年を振り返ります。
      × × ×
 GoToは、いまや普通名詞化しました。1年前は存在しなかったこの言葉を私たちは日常、口にします。

 「コロナ禍で政府は、国民を動かそうとする多くの耳慣れない言葉を使ってきた」と指摘するのは認知科学専攻の鈴木宏昭・青山学院大教授です(「朝日新聞アピタル」から)。GoToトラベルは「直訳すると『旅行促進・推進事業』。多くの人から『こんな状況に何を!』と反論も出るであろうところを英語を使うことで、なんとなくあいまいに緩和する効果があった」。

 なるほど。たとえば「GoTo代 GoToしない人も出し」「遊ぶ人私の税金で助けてる」。同じ趣旨ながら、GoToの方がやわらかい。

 言葉の奸知(かんち)、いえ手品なんですね、政府演出の。
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 「土砂降りの中へ促すピクニック」。政府がGoToトラベル事業を始めたのは7月22日。

 「朝ドラを見とらんのかね菅ちゃんは」。掲載はNHKの「エール」が放送されていた10月中旬。この週は、インパール作戦が舞台でした。

 インパールはミャンマー国境に近いインドの都市。第2次大戦中の1944年、日本軍が侵攻しようとしたが、大敗北した。「史上最悪の作戦」とされ、戦没者7万人超ともいわれます。

 「失敗の本質」(1984年刊)は、あの戦争における日本軍の「戦い方」「敗(ま)け方」を研究者6人が考察した本です。インパール作戦については「人間関係を過度に重視する情緒主義や強烈な使命感を抱く個人の突出を許容するシステム」の存在が失敗の要因と看破しました。

 GoToは「首相案件」なのだとか。右の視点に、菅義偉政権の軌跡を重ねると不思議に符合します。「相容(い)れぬ人に目に物見せる癖」「オレ様は偉いんだぞと勘違い」

 同書の指摘をさらに引きます。やれば何とかなるという楽天主義▽情報の重要性を認識せず▽戦力の逐次投入▽ダメージ・コントロールの不備……。

 「考えていませんでした昨日まで」「遅かりし菅之助殿停止令」「メルケルは熱弁 こちら『ガースー』と」
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 「それぞれの文字の貼り紙店じまい」。選者が愛した地方都市の豆腐店も11月に店を閉めました。売り上げは7割まで戻ったが、家業を継ぎ手作りに誇りを持っていた72歳の弟が急死し、心を決めたそうです。兄(78)は言いました。「権力(政権)は権力(大企業)と組むんだね。中小は眼中にないんだ」「街が街でなくなった。自分の周りは非正規の人ばかりだよ」

 「GoToを横目で見ながら職探し」「列島のどこ吹く風が身に沁(し)みる」
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 8年近く君臨した安倍晋三前首相の2度目の退陣にも触れなければ。「引き出しのマスクと共に名は残り」。悪名、かしら。

 11月、サクラ国会答弁虚偽発覚。「国民を百十八回虚仮(こけ)にする」。結果不起訴。「花の下 腹を切らずに尻尾切る」。国会で釈明・謝罪するも「冠(かんむり)が取れても人は変わらない」。

 目を転じます。「二制度の約束土足で踏みつぶし」。香港無残。「ロシアではお茶も飲めない反体制」。毒殺未遂事件。「地球儀ややたらに増える独裁者」。「応援すテニスコートの一人デモ」。黒マスクの大坂なおみ選手。「バイデンに少し希望を持ってみる」
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 コロナ禍で世界中の暮らしは激変しました。けれど人間お互いの信頼は、ぜひとも保ちたい。自分自身に精いっぱい誠実でありたい。そう思います。

 今月4日は中村哲医師の死去1年でした。「滔々(とうとう)と用水流れ哲さん忌」
 (「朝日川柳」選者)」(2020/12/27付「朝日新聞」p6より)

 

 


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