蝸牛の歩み

「お話」を作ってみたくなりました。理由はそれだけです。やってみたら結構面白く、「やりたいこと」の一つになっています。

カエルの鳴き声 鳥の声

2015-07-06 09:19:56 | 日記
 帰り道でカエルの鳴き声を聞いた。水田の稲も順調に成長している。そういえば今朝は鳥の鳴き声で目が覚めた。どうも、私はそういう事には疎くて、なんという鳥なのか分からない。朝にふさわしい鳴き声であったことはわかる。
「鳥の鳴き声」のサイトでも検索してみようか。
 マンションの部屋に帰って二重ドアを開け、しっかりとロックする。スーツを脱いで背中からボンベを下す。ずいぶんと軽量になった。2kgで36時間もつ。スーツ全体に温度管理機能が付いているから外界の影響はほぼ受けない。
 週四日は在宅勤務なので出勤する必要はないのだが、一日だけはどうしても出勤しなければならない。だから、このスーツとボンベは必要になる。
 それにしてもカエルが絶滅するとは思わなかった。小型の鳥もすべて姿を消した。
 カエルの鳴き声は、水田に人が近づくとセンサーが感知して自動的にスピーカーから流れるようになっている。
 雀や燕はすべて3Dホログラムである。鳴き声はマンションの窓に設置されているスピーカーと連動している。
 『沈黙の春』は、来なかった。カエルのうるさいほどの鳴き声も、眼を覚ましてくれる鳥の声も聞こえる。ただ、その実態が消滅して、声だけが残っているという事だ。
 禿山の斜面にコンクリートを塗り、緑色のペンキを塗りたくった光景は昔のことで、現在では「成長する人工の木」が主流となっており、水田の稲も、早苗から黄色い稲穂までを再現できている。
 食糧はすでに人工太陽灯のもとで工場で生産されている。魚も陸上の水槽で生産されているが、やはりコストがかかるので、私のような庶民にはなかなか手が出ない。
 クジラもすでに絶滅した。日本人の捕鯨のせいではない。捕鯨を目の敵にした団体がずっと目をそらしてきた大国の二酸化炭素排出のおかげで海に溶け込む二酸化炭素の量が激増し、海洋の生態系が激変した結果である。
 大国が年々予算を増額しているのが、火星のテラ・フォーミングである。つまり、火星の地球化。その裏にあるのは地球の火星化である。
 地球の使い棄て。
 引き返せるときに引き返すべきだった。もう遅い。