蝸牛の歩み

「お話」を作ってみたくなりました。理由はそれだけです。やってみたら結構面白く、「やりたいこと」の一つになっています。

砂絵

2015-07-03 21:09:15 | 日記
その日、アメリカ国民は、天から砂が降ってくるのを見た。降ってくるというよりは、巨大な砂の柱が地面に突き刺さるようにして大地を覆っていくのを瞬間的に見たという事になる。見た後で彼らは膨大な量の砂に埋もれていった。
 白い砂の柱、青い砂の柱、赤い砂の柱の三種類がアメリカの大地を覆っていく顛末を茫然として見守っていたのは、国際宇宙ステーションに滞在していた宇宙飛行士たちだった。砂の源はほぼ400km地点を周回している彼らの100kmほど下方だった。そこには何もなかった。砂を撒き散らすための飛行物体も何もなかった。砂の柱は、ある地点から湧いてきたと言っていい状態で地上に突き刺さっていった。飛行士たちは、なすすべもなく、アメリカが、正確にいえばアメリカ合衆国が砂に埋もれていくのを見守るしかなかった。
 誰が何のためにこんなことをしているのか、そんなことを考える余裕はなかった。彼らが飛び立ったジョンソン宇宙センターも、ケネディ宇宙センターも全く応答はない。
 と、突然、砂は途切れた。降り注ぐ源となっていた空間はもとのような漆黒の闇に戻っていた。
 そして彼らは、アメリカという国があった場所に、かなりいびつな形でありながら、はっきりとわかるものを見た。それは砂で描かれた星条旗だった。