蝸牛の歩み

「お話」を作ってみたくなりました。理由はそれだけです。やってみたら結構面白く、「やりたいこと」の一つになっています。

カップの中の子どもたち

2015-07-02 13:05:17 | 日記
 待ち合わせの時間までまだ少しあったので、喫茶店に入ろうと思った。Coffeと看板が出ている店にはシャッターが下りていた。近くを見渡すと、フレンチの店があったが、店の前には、coffeの看板が立ててあった。敷居が高くありませんよ、ということかなと思ってドアを開けた。
 テーブル席が二つと、長いカウンターの店だ。コーヒーしか飲まないんだから、カウンター席の一番端に座る。ブレンドを注文する。
 カップは伊万里焼を模したもののようだ。中国人の童子が二人描いてある。
 砂糖をスプーンにすり切りいっぱい入れ、UCCの「カフェプラス」をいれる。一口すすって、皿にカップをおいた。その時、何か違和感があった。何かおかしいのだが、それが何だか分からない。また、一口すすってカップをおいた。その時わかった。絵の中には二人の童子が描かれている。最初見たときには、右側の童子は毬を手に持っていて、左側の童子に投げつけそうなそぶりをしていた。今見ると、毬は童子の手を離れて二人の間に浮かんでいる。しばらく見ていたが何の変化もない。
 BGMがモーツァルトの「フルートとハープのための協奏曲」であることに気がついた。しばし目を閉じて、またカップを見ると、変化していない。どうやら、コーヒーを飲んでいる時だけ動くのでは、と仮説を立てて、一口すすってみた。
 正解。左側の童子はばったり倒れて、近くに毬が転がっている。なるほど。
 また一口。今度は、立場が変わっていた。左側の童子が立ちあがって手に毬を持っている。
 少しづつコーヒーをすすりつつわかったのは、二人の童子たちは、客がコーヒーを飲んでいる間に毬のぶつけ合いを繰り返しているという事だ。
 棚を見ると、フラゴナールの「ぶらんこ」の図柄のカップもある。うーん。今度はあのカップをリクエストしてみようかな。いや、決してキミたちが考えているようなことを考えているわけではなくて。